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黄昏の銃姫  作者: クロイモリ
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2-11 皇女の野望

 地下に突入してからかなり時間が経っており、もう夜になっている。コープスたちの動きも活発化しているはずなので、今日は下手に動かず地下に泊まる。


 そうロクジンに提案され、メリアドールはそれを受け入れた。正直なところ、いろいろなことがあり過ぎて頭がぐちゃぐちゃになっていた。整理する時間も必要だった。




 三つ首龍が使っていたバーの二階は宿になっており、粗末な部屋だったが寝起きをするのに問題はなかった。ヒサメは食事を終えるなり部屋に入り、そのまま寝入ってしまった。肉体的、精神的疲労のせいだろう。


(私がこれからすべきことは……)


 メリアドールは気が高ぶって眠るに眠れなくなってしまった。だから一度部屋に入ったものの、起きてもう一度バー・スペースに出てくることになった。


 樽に溜められた新鮮な水を流し込み、深呼吸を一回。

 現状の確認を始めた。


(兄様か姉様、帝国上層部に連なる人間が私の命を狙っていた。それは間違いない。でも、どうしてこのタイミングで?)


 装身具を着けたことで起動するように仕掛けられた罠。で、あるなら、起爆のタイミングは恐らく神国との交渉のタイミングだろう、とメリアドールは理解していた。しかし、それでも疑問は晴れない。


 なぜなら、そうするメリットが見えなかったからだ。交渉が台無しになればどちらにとっても利益はない。爆発に巻き込まれて神国の人間が死ねば、それこそ戦争が再開されることになるだろう。


(戦争の再開こそが目的?)


 ゾッとするような発想だったが、現状それくらいしか考えられなかった。


 それしか考えられない。

 だがどうして、どんな理由で。

 思考がぐるぐると空転する。


「……どうしたの、リア。眠れないの?」


 だから、ロクジンが下りてくるのにも気づかなかった。ビクリと肩を震わせ、ぎこちない動きで振り返る。そして見知った相手だと知って、ほっと胸を撫で下ろした。


「どうしたんだ。本当に大丈夫か?」

「いえ、何でもありません。ちょっと、考え事をしていて」


 ロクジンも眠れなかったのだと言い、メリアドールの隣に座った。


(……彼には、私のことを話すべきかもしれない……)


 これまで危険を冒しながら、自分を助けてくれた少年のことを、メリアドールは横目でチラリと見た。いままでは無用なトラブルを避けるため、身元を隠してきた。しかし。


(私のせいで、危険な目に遭ってしまったなら……)


 知らせる義務がある。

 これまでの、彼の行いに報いるために。


「ロクジンさん」


 メリアドールは意を決した。


「あなたに、話さなければならないことがあります」




※※※




 メリアドールはこれまでのことを、自分の生まれから大使に任ぜられ、神国まで赴くことになった、そのあらましを説明した。


「……そうか」


 意外にも、ロクジンの反応はあっさりしていた。


「そうか、ってそれだけですか?」


 あまりにも反応がなさ過ぎて、メリアドールの方が面食らってしまう。


「その、私は……」

「今まで俺たちのことを騙していた、とかいうつもりか?」


 そう言ってロクジンはカラカラと笑った。


「気付いていたよ、そんなことは」


 そして今度はメリアドールが驚く番だった。


「し、知っていたんですか!?」

「本当に誰なのかは知らなかったけどさ。でも、キミの立ち振る舞いとかを見ればどんな人なのかは分かる」


 メリアドールは思い出す。

 確かに、これまでのふるまいはオスティアの住民らしからぬものだったかもしれないと。


「それもひっくるめて、俺はキミのことを信じられると思った。だからここまで着いて来たんだ。負い目を感じることなんて、何にもないよ。リア」


 そう言われて、彼女は緊張の糸がプツンと切れるのを感じた。ずっ、と深く椅子に腰かけ、はしたないとは思いながらもズルリと背もたれに体を預けた。


「……よかったぁ」

「嫌われるとでも思った?」

「ええ、割と」


 気が抜けて。

 しばらくして。

 メリアドールは体を起こした。


「……私はどうしても、帝国に帰らなければなりません」

「こんなことがあったのに、まだ帰る気なのか?」

「ええ。何が起こったのか知りたいですし……」


 ニッ、と微笑み。


「こんなことやられて、黙っていられませんから」

「ちょっとはこっちのやり方に慣れてきたかもね」


 二人は顔を見合わせて、笑った。


「と、なると今まで通りやることは《輸送屋》を雇うために金を稼ぐ、ってことかな?」

「ええ、でもそれだけじゃ足りません」


 様々な仕事を繰り返してきたが、オスティアでの稼ぎはそれほど良くはない。もともとここに暮らしている人々が貧困に苦しんでいるのだから、無理からぬことだ。


 少しだけでも、メリアドールはオスティアの現実を見てきた。

 ここから離れるために金を稼ぐ、それは確定事項だ。


 しかしこの世界の在り方を放ってはおけない。


「……もっと大きなことをしますよ」

「例えば、それは?」


 彼女は振り返り、むき出しになった魔導炉を見た。


「あれを……魔導炉を使います。ここで産業革命を起こす」

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