因子の開放
俺はステータスを何度も確認した後、眷属であるシェルに色々と教えてもらった。
まず一番気になる呪いの件について。
どうやら眷属たるシェルと交流しても問題はないそうだ。簡単に言うと自分自身と会話している様なものらしい。独り言に近いってことだった。
本当に一安心だ。
それから刺した件についてもわかった。
屠ったゴブリンズの命をシェルが吸収→主たるきどちゃんの生命維持分を直接注入した過程が、ブスリ事件の全容だった。
次に死にかけた痛みについて。
これはLVアップの副作用らしい。成長痛ってやつだ。1,2レベルなら大した痛みは伴わないが、5、10lv~と大幅にアップすると痛みも増幅するってことだ。
よく80LVまでたえられたな、俺。あ、神様の所にいったっけか、てへ。
あぁ、そうそう。大幅にLVが上がった原因もシェルだった。
先程説明した通りシェルは俺自身と変わらないので経験値がそっくり入る。その結果の80LVだ。
そりゃあれだけゴブリンズを倒せばそうなるよなぁ。
そして今俺は悩んでいる。腕を組み目を閉じて思考を巡らす。
目の前にいるシェルも小さな腕を組み目を閉じて同じく悩んでいる。
なぜ悩んでいるかというと、LVアップの際に増えた因子をどうするか、だ。
シェルはこれから生まれるであろう弟ないし妹の名前を考えて悩んでいるらしい。平和なこった。
とりあえず現状困っている物リストを出して因子による解消へとつなげてみたい。
きどちゃん困ってるリスト☆彡
1・呪い(解呪不可) うーん…保留。てか解けない呪いの対応策ってないだろ……
2・食料 生命維持は問題ないのだけど、なにも食事をとらないってのは辛いんだよね、精神的に。かといって畑とかつくっても種がないし…うーん、どうする、か。
3・安全な縄張り作り これ大事だよね、素敵な立地を手に入れても外敵が次から次へときたらやだし、結界系のなにかを施したい所。
4・住まい やっぱり家は欲しいよね。いつまでも貝殻の中って訳にもいかないし、この際立派な家を建てたいな!
5・魔法 うーん、使ってみたいけど今必要か?っておもっちゃうなぁ。シェル強いし。
よし、ここから絞っていくぞ!
取り急ぎ必要なものは、安全な縄張り・家・食料、この3つ。
これらは、錬金術系の因子を手に入れれば解決する。小説によくあるチートスキルだ!
因子開放の手順もシェルに教えてもらってるので、さっそく実行!
ステータスの因子・2を選んで、願うだけ。
──創造を司る因子を我が力に
うぉ。両手が輝きだした! 因子が開放するのか?
光が収束すると両手の異変に気付いた。
なんだこれは。
両手が白い。手首を境に両手が白い。
否、白を基調としてうっすら虹色に輝いてる。
思わずシェルに問いかけた。
「シェル、これって成功したのか? 」
『うん! だいせいこー! すごいすごい! ふたりいるよー! 』
「え」
え
二人? はい? 因子は1つだよね?あれ?ちょっとステータスみてみようかな。
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因子1 貝殻シェルター・周辺の魔素を取り込みHP・MPの回復を促す。召喚者のLVに応じ成長する。召喚者の魔力を注入すると開閉する。召喚者が外にでると防具として体に付着する。魔力を注入すると元に戻り、召喚者が中に入ると閉じる。
装備時各ステータス+800※魔力減少デバフ付与
因子2 対の真珠貝アコヤ・万物を吸収し、同等価の物を創造する。創造は召喚者の記憶と直結する。吸収・創造の際にMPは消費しない。
因子3 未確定
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おぉおおおお! 大当たり! 間違いなくウルトラチートでしょ、これ!?
暗雲立ち込めた異世界ライフに眩しい希望の光! チート万歳! きどちゃんごきげん!
おっと、興奮しすぎたね。落ち着こう。
まずは挨拶だよね。挨拶は大切だ。
ちょっとシュールだが自分の両手に喋りかけるよ。両手を広げて手のひらに向かって!
「あー、えーとはじめまして。きど ないと っていいます。喋る事を許可しますので挨拶してみてください。」
すると左手には女性の、右手には男性の顔が浮かんできた。
コワイ。
ホラーだって。想像してたのと違うって!
シェルみたいに小さい幼子が現れるっておもってたんだって!
『ハジメマシテマスター。ワタシハ対ノ真珠貝アコ。万物ヲ吸ウモノ』
『ハジメマシテマスター。ボクハ対ノ真珠貝コヤ。アコニ吸ワレシモノカラ創造スルモノ』
『『スベテハマスターノ、ノゾムママニ』』
「あぁ……よろし──」
って、挨拶交わしきれてないのに顔きえちゃったよ。シャイなんだね! それよりシェル、なんか落ち込んでるな。どうした?
『ないとー、ふたりなまえついてた……』
「残念だったなシェル。まぁ気にするな、おねえちゃんだろ?」
『あい! しぇるおねーちゃん! あい! 』
ちょろいなシェルは、悪くないよその切り替え!
とにかく準備はできた。最高のきどちゃんワールド(縄張り)を作るぞー!
この時、張り切る俺を他所にトラブルはうめき声をまきちらしながら、徐々に近づいてくるのであった。