賑やかな城下町 華やかなパレード
良所達が王都に到着してから3日後、国王ウィリスは全諸侯並びに領民へ正式に布令を発した。
内容はミルレード女王達エルフ達の無事帰還及びソフィアの婚約成立についてだ。
この布令を境に王国はお祭り騒ぎの様相をみせはじめた。
騒乱を鎮めた英雄姫
先代の意思を受け継ぎ成就させた美しく若い姫騎士
元々ソフィアの存在は王国のシンボルであり、領民達からの信頼も厚い。
その彼女が大功績をたてた事は、より一層お祭り騒ぎに拍車をかける。
「我らヴィクトールの英雄ソフィア殿下のご婚約記念だ! 女王ミルレード様の無事帰還も実にめでたい! 全商品特別価格で販売中だよ! さぁ、いらっしゃい! 」
「実にめでたきご婚約! さぁさぁうちも特別価格だ、よってらっしゃい。みてらっしゃい! お、奥さんこの果物はご婚約のお祝いだ、もっていってよ! 」
「当店黄昏の都亭、本日から料理、酒、全品半額販売だ!ミルレード女王の無事帰還とソフィア殿下ご婚約をみんなで祝おう! 」
ただでさえ賑々しい王都城下町が、通常の倍近い人々でごった返していた。しかもまだ増える傾向にある。
一日一日とひとの往来が増える王都。
理由の一つに布令を受けた王国諸侯が、続々と王都に集結しはじめた事があげられる。
普段任地を離れない辺境の領主達も、事が事だけに王都へ出向かなければならないからだ。
当然多数のお供を引き連れて。
それだけではない。
商機を感じ取った商人達が王国内からはもちろんの事、噂を聞きつけた他国からもおしよせているのだ。
その結果ヴィクトール王国の財政は潤い、活気があふれた。
◇
国王の布令が出てから一週間が経ち、俺達は今城下町を行進する一団の中にいる。
凱旋パレードだ。
近衛隊隊長レオナルド・アダムスを先頭に近衛騎馬隊が先導する。
それに続く豪華な装飾が施された屋根の無い数台の馬車の一台に俺達は居た。
先頭の馬車には当然ならが国王ウィリスが乗車しており、続いて王太子フレイ、そしてソフィアと俺達が乗っている馬車が走る。
当然ながら俺とシェルは同化していた。まぁ、シェルを大衆の面前でだすわけにはいかないからな。
そんなわけで光白貝の騎士状態になっています。
──それにしても
「なぁソフィア、王都ってこんなに人いるの? 」
そう、びっくりしたんだ。道の両端に無数の人、人、人。
通勤ラッシュでごった返す新宿駅を思い出した。
ソフィアは驚く俺に笑顔で答える。
「ふふっ。いつもはここまで人が居るはずないでしょ。お父様が布令を発したからこの様になっているの。私もこの人だかりには驚いているわ」
「あぁ、なるほどね」
微笑みながら俺は返事をした。
そんな俺達のやり取りを大衆が見逃すはずは無かった。
「キャー! みたみた? ソフィア殿下とフィアンセの騎士の笑顔! 」
「眩しすぎるだろ……」
「ソフィア殿下のお相手の騎士様……まるで女神様のような美しい顔立ち……」
「まさか、女性ってわけじゃないわよね!? 」
「そんな訳ないわよ~、ってあらやだ、本当に美しいわ……」
「美しい姫君に凛々しい婿殿、うんうん、お似合いじゃわい」
「そふぃあでんかとおむこさんのきしさまかっこいい! 」
老若男女問わずそれぞれ感想を口にする。って、俺女じゃねーから! 男だから! ちゃんとついてるから!
あ、俺達の馬車を挟むように、騎乗し左右前方で警護にあたってるグリードとクレイグが下向いて震えてる。3日おあずけくらったのもう忘れてるな?
懲りてないみたいだ、よし。
『グリード・クレイグ。お腹でも痛いのかな?それとも面白い事でもあったのかな? 』
俺の言葉を聞くや、一瞬で背筋を伸ばし、ビシっとする両名。うんうん、学習してるみたいだ。
その光景を見た大衆は勘違いをした。
勇名を馳せるグリード。聖剣の異名を持つクレイグ。
この両名をたった一言で正す美麗な騎士、そう見えてしまったのだ。
どこまでも美しく響くその声は大衆に、ことさらご婦人方の琴線に響いた。
──キャー! 光白の騎士様ぁ!
アイドルグループのライブを見に来た女性ファンのような甲高い声援が辺りを包んだ。
おぉ、これが噂のモテ期ってやつですか!?
浮かれた俺は笑顔を振りまきつつご婦人方に手を振った。それが間違いだった。
歓声は一層大きくなり、果てはパタパタと数名のご婦人方が倒れ始めたのだ。
「ナイト! 」
俺はソフィアの声に驚いて顔を振り向けた。
ソフィアはキッと睨むと俺の頬を両手でつかみ引っ張り始める。
『どうひたのソヒファ』
「領民を笑顔で屠る騎士がいるか! 反省しなさい」
『えええええ』
「反省してないみたいね。シェルちゃん、お願い」
──はい
『あ』
すっかり忘れていた。今の俺はシェルと同化していたのだ。つまり……
──ビリリイイイイイイイイイ
駆け抜ける電流は俺の意識を飛ばし、そして収束した。
その後、シェルが俺の代わりとして問題なく行事をこなしたそうな。
後日城下町にはとある歌が流行り始めた。
──勇名を馳せる強者を 制す光白の凛々しき騎士在り
光白の騎士を御す者 王国王城に住まう
その名は英雄姫 ソフィア・ヴィクトール──
◇
凱旋パレードが終わったその日の夜、王室主催の社交界が開かれた。
爵位制限は設けず、社交界に縁の無かった下級貴族達も大勢参加できる形だ。
王宮にある大広間は多数の貴族が参集し賑わいをみせる。
時をみて国王ウィリスが挨拶をし始めた。
「今宵の社交界に出席してもらった諸侯らに、まずは感謝申しあげる」
「皆も知っての通り、我が娘ソフィアが100年に渡る王国の悲願を成就し、更には相応しき婿を迎える事になった」
──おぉ
歓声が広間に響く。
「残念ながら婿殿は疲労の為休養しこの場にはおらぬが、娘ソフィアはおる故挨拶をさせたい」
「ソフィアよ、皆に挨拶を」
「はい」
「諸侯の皆様。本日皆様にご報告できる事をうれしく思います」
「まずは我がヴィクトール王国の悲願でありましたミルレード女王を含むエルフ達の全員が無事森へ帰還した事をご報告致します。その際にラドルア帝国との和議も結ばれ、戦乱は終息しました」
──おぉ! ヴィクトール王国万歳! ソフィア殿下万歳!
ソフィアの報告に喜び声をあげる諸侯達。100年の騒乱が終焉を迎えた事の大きさを物語っていた。
「これも一重に諸侯の皆様が支えてくださった賜物でございます。改めて感謝申し上げます」
ソフィアは感謝を述べると深く一礼した。
その言葉に諸侯重鎮達は一部を除いて感涙に浸る。一部とはベルーラ侯爵をはじめとするウィリアム家の一派だ。表向きは笑顔を張り付けているが内心は邪な策謀を抱えている。
ソフィアは一礼を終えると、今度は頬を赤らめながらおずおずと話し始める。
「そ、それから、私事ではありますが、この度御縁がございまして……婚約、結婚する運びとなりました」
恥ずかしそうにペコリと一礼するソフィアを見つつ、国王ウィリスが声を発した。
「この通り娘ソフィアが婚約、結婚する事となった。諸侯らにも娘の結婚を祝って頂きたい」
──なんと、それはめでたい!
──素晴らしい!
この報告をした後、大広間はお祝いムード一色になった。
「では娘の前途を祝して、乾杯──」
──乾杯!
一見社交界は順調に進んでいるかに見えた。
だが、密かに謀略の手は伸び始めていたのだ。




