立地の良い場所は競合するものだ
おはようございます、きどないと、です。
よいところないひとではありません、きどないとです。
人外襲来からうって変わって静かな朝を迎えることが出来たようです。
隙間からの日差しはまだ弱く早朝なのだろう。
よし、さっそく行動開始だ。
まずはこの貝? から脱出だな。えーとたしかこの貝に魔力を込めると開くんだったっけ。
あれ、魔力ってなんだ? 込めるってどーすんだ!?
まずいよまずいよ、出られないじゃん俺。
とりあえず内壁にふれてみるか。
おぉ、ヒンヤリするなぁ。ん、なにか体から吸い取られる感覚があるぞ?力が抜けてくような、ジェットコースターの下りでお尻が浮く感じだ。
──パカッ
開いた。うぉ、まぶし……くない!? 木々の隙間から射す光でうっすら夜が明けてくのがわかる。
とりあえず周辺の安全確認をしなきゃ。こないだの戦闘で死体があるはずって……あれ? 無い。最低20体程刺突したはずなのに、一体も死体が無い。
おかしいけどとにかく移動しなきゃ。またバケモノが襲ってくるかもしれない。まずは見通しが良い丘を探そう。
俺は貝の中にあつめた数本の槍から1本だけ手に取ると地面へ踏み出す。
すると貝が形状を変化させ、俺に付着しはじめた。
うぉ、貝が頭に張り付いて前が見えない。あ、見えました。
この貝サイズも変わるのかよ、それより中に残した槍どーなってんだ。まー異世界だし? 後で考えよう。
それにしても今どんな姿になってんだ俺。頭に貝の欠片が付着して鉄仮面見たいなフルフェイス状態ですよ。
衣服は血まみれのジャージだし、間違いなく人類の敵扱いされてもおかしくないですよ。
あぁ、そんな事考えてる余裕なんて今は無い。エンカウントする前に見晴らしの良い場所へいこう。
──
───
────
どれくらい時間がたったのかな? まだ日は高くないから2,3時間ってところか。
現在森の中を彷徨ってます、どうもきどちゃんです。
槍をかまえて周囲を警戒しつつ、黙々と森を進む。
変化無い景色に徐々に不安が募っていく。いきなり大森林のど真ん中とかないですよね? 神様?
それでも進むしかないと気持ちを奮い立たせてひたすら歩む。
日が傾き始めた時、やっと開けた場所をみつけた。木々の隙間から見えた円状に広がる草原。半円状に切り立った崖がある。まるで自然の城壁。しかも小さな滝があり川もある。素晴らしいじゃないか。
ここだ、ここを拠点にしよう。
ただ問題があるようです。
茂みに隠れながら観察を続ける俺。
ここはどうやら人外の住処のようだった。
崖に複数の穴があり、周辺には小人サイズの人外さん達がうごめいている。
あれもしかしてゴブリンってやつか?
(グェグェ、ギャギャッ)
どうやら間違いなさそうだ。
くっそ、ここまできて場所をかえなきゃいかんのか。
しかし戦うったってゴブリンさん達100匹はいるよなぁ。貝に閉じこもって成敗するにも持ち上げられて川に流されでもしたらアウトだし。
魔法が使えればなぁ……
って考え込んでる内に気付かれた!
まずい、十数匹は迫ってくる。あぁ、畜生。逃げるったって逃げ場はない。
こーなったら貝頼みしか無い。
俺は頭の貝に手を触れて必死に願った。
──頼む!貝様!俺を守る城と成り給え!
すると頭に付着していた貝は、地面に剥がれ落ちみるみる膨張していく。
──
───
なんだこれは
以前の狭かった空間とは違う、小屋程度の大きさをした物が現れた。壁と屋根が離れているその形状は、まるで開けっ放しの宝箱の様だ。
びっくりしたけどそれどころじゃない、とにかくこの小屋もどきに入って安全確保だ。
急いで壁をよじ登り、中へ入る俺。
中に入った途端、蓋が閉じるように屋根と壁が多少の隙間を残して閉じていく。
とりあえず助かった……
外ではいつぞやの再現がはじまっている。ギャギャグァグァドンドンの大合唱だ。
さて、どうしたものかと思案しながら小屋内部を見渡す。ロフトのような屋根裏構造があり、外部に出っ張っているのを確認できた。
以前は隙間の光便りだったのだが、天井中心部に淡い光が灯っているおかげで手探りせずに済む。さすが貝様!
小屋の壁には確保していた槍が20本近く立てかけられていて、武器として問題なさそうだった。
以前は棺桶状態から隙間越しに攻撃してたので色々と危険があったのだが、今回は小屋もどきだ。
やつらの体長は高い個体でも1m前後、こちらへの攻撃手段は皆無だ。
俺はさっそく槍を手に出っ張りロフトへ身を潜め、外を観察する。
いるわいるわ、つか気持ち悪い外見を直視してしまった。異世界に来てしまった事をより実感する俺。
とにかく、駆除だ!やらなきゃやられる!
俺は槍を下方のゴブリン達に向け、刺突しはじめるのであった。