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対人恐怖症な俺の異世界リハビリ生活  作者: 春眠桜
ヴィクトール王国への帰路
33/123

潮風舞う辺境の港町ソロー

潮の香が心地よく舞う辺境の地ソロー


人口は約1万人の港町だ。


帝国国境にもっとも近く、大小様々なトラブルに見舞われやすい町。


その為か、住民は下から上まで胆力が強く、豪快な気性の人々が多い。


事情を知らない人間がこの町に入れば、共通の思いを巡らせるであろう。


ここは海賊のリベルタリア、そして自分は迷い込んだ彼らの餌と。



どうもきどないとです。


日が落ちる前に港町ソローへ着いたみたいなのですが、なんですかね? この町


街中から常に【ヨーホーヨーホー】とか聞こえてきそうな雰囲気、と言いますか、実際そこらかしこで聞こえてくるんですよね。


酒樽を抱えて寝込む髭面の大男や、店前で手招きする娼婦であろう美人なおねえさん達。


日が陰っているのにもかかわらず、そこらかしこで海賊ごっこをしている子供の集団。


店、道端、港から聞こえる屈強な男たちの歌声。


あれ? ヴィクトール王国管轄の町でしたよね? 海賊の占有する領地ではないはずですよね?


そんな思いを他所に馬車は街中をガラガラ進んでいく。



「ソフィアさん、この町はヴィクトール王国管轄の町ですよね? 」


「あぁ、そうだが? 」


「こう言ってはあれなんですけど、海賊の根城みたいなのですが」


「あっはっは、そうかそうか。ナイト殿は初めて来たのであったな。この町に来る人間は皆同じ事を言うのでつい笑ってしまった。許してくれ」


「はぁ」


そりゃこの町の光景をみれば誰だってヤバイと思いますよ。


右手に見える港には、複数の巨大な船が止まっていて


掲げられてる旗は全て骸骨旗


それにここの住民の容姿が拍車をかける。


海賊じゃありませんよーって言う方がおかしい。


「驚くのはまだ早いぞナイト殿。ここの領主と対面するまで期待しててくれ」


なにそれ、フラグですか? 俺、海の神の生贄にでもされちゃうの? 怖いんですけど……


三日月状の港を沿う様に馬車は進む。


その先端にある切り立った崖を背に、城……いや、要塞に近い建物が姿を見せる。


まさかと思いますが、ここが領主の館、ですかね。


馬車は門の手前で止まり、ソフィアさんが一人で馬車を下りていく。


おいおい、大丈夫かよソフィアさん。屈強な大男が二人門番の様に立ちふさがってるし。


すると耳を劈く男の大声が響いた。



──我ら海の男は大海を駆け


──必ず手にするであろう



なんだなんだ、あれか? 謎かけか? 開け胡麻か?


するとソフィアさんが町中まで轟く様な激を飛ばした。



「7つの秘宝と酒場の酒を! 」



その瞬間、町から城塞から大歓声が轟いた


すごいよ、本当にすごい。歓声でビリビリ空気が震えるって普通無いでしょ。


「「英雄姫のご帰還だぁああああああああああああ! 」」


──ギギギギギギギ


門番の大男達はそう叫ぶと、巨大な門を開け始める。


3台の馬車は招かれるままに、城塞へと入っていった。




                   ◇




馬の世話をする御者3人を残し、俺達5人とエルフ達9名は案内役に従い城内へ入る。


「がっはっは、相変わらず楽しい町だぜ!なぁ、ナイトのにーちゃんもそう思うだろ? 」


ご機嫌なグリードさんが聞いてくる。


「いやいや、初めて来た人なら楽しいって思う前に終わった、と思いますよ普通」


「がっはっは、違いねぇ! 」


バンバンと俺の背中を叩きながら笑うグリードさん。たしかにグリードさんのキャラにピッタリの町だなぁと思う。豪快と陽気の塊みたいな町だ。ただし、慣れればの話だが。


応接室らしい大きな扉の前に着くと、案内役が声を荒げる。


「お頭ぁ! 英雄姫とご一行がお着きになりましたぜ! 」


間違いない、海賊だ。お頭言ってるし、領主といっても貴族じゃないだろ絶対。


「通せブッティーラ! 」


「へい! 」


室内からしゃがれた声がする。間違いなく酒焼けした声だ。


扉が開かれ、領主の姿が現れる。



真っ白な多量の髪と髭、まるで白髪の獅子だ。


齢を感じさせない覇気と眼光、それに鍛え抜かれた巨躯


そして左目にかかるお決まりの眼帯


はい、大海賊のお頭様です。


そんな風貌の領主は、ソフィアを見るに顔を緩ませ声を出しドコドコと近づいてきた。


「ソフィ! 」


え


なにこの好好爺さん、一瞬海賊って忘れてほのぼのしちゃったよ!


「ホールデン小父様! 」


ホールデンと呼ばれた領主は、ソフィアを子供の様に抱きかかえると、クルクル回り始めた。


「さすが我が親友の孫娘! ヴィクトールの誇りにして秘宝よ! 」


「お、小父様。ソフィはもう大人です、恥ずかしいのでおろしてください! 」


「ワッハッハ、連れない事を申すな! 儂は今うれしくてうれしくて、仕方の無い事なのじゃ! 」


なんだろう、すごく心が暖まる光景だ。ソフィアさんも嬉しそうにはにかんでるし。


「みろみろナイトのにーちゃん、あれがお嬢の素の顔だ。気を張っている時と違って、カワイイもんだろ? ガハハ! 」


グリードさんの言う通り、なんだかんだ気を張り続けてたんだろうな。その緊張が一気に緩んだ、そう思わせる笑顔だ。


「な、ぐ、ぐりーど!余計な事を言うな! 」


「おぉ、グリード! 久しいの! よくぞソフィを守り通した。今宵は腰が抜けるまで飲みあかそうぞ! 」


「久しぶりだなキャプテン・バルバロス! 今日こそは飲み倒してやるからな! 」


「抜かせ小僧! 100年はやいわ! お前の親父、【盾】がどうなったかお前も見てるだろう? ガッハッハ!」


「ガッハッハッハ! ありゃ傑作だったわ! 」


この人たち、常に酒が付きまとうんですね。それとオースロックさん、酒で潰されたのかな?二人共どんだけザルなんだよ。


「おぉ、【剣】もおるではないか! なにをかしこまっておる! 」


「お久しぶりです、バルバロス・ホールデン辺境伯」


え、クレイグさん? 辺境伯って言いました? 貴族? この大海賊のお頭が!?


ソフィアさんを下してから、ホールデン辺境伯はエルフの女王ミルレードへ近づき跪く。


「女王ミルレード様、100年の間ご不憫をかけました。今は亡き親友ヴィクトールに成り代わり謝罪申し上げます」


「お顔をお上げください。救出していただく為に尽力された事を感謝申し上げます」


「もったいないお言葉、全ては我が親友の孫娘ソフィアの功績にて。これからはどうか健やかにお過ごし有らん事を」


「ヴィクトールは旅立ちましたか……」


「はい……」


話を聞いてると、どうやらこのホールデンさんと先代国王は親友で、ミルレードさんも関係者みたいだ。

人に歴史在り、今回の救出が少なからずヴィクトール王国に影響がでそうな予感がする。


しんみりしている二人にソフィアさんが声を掛けた。


「小父様、立ち話もなんですから」


「おぉそうじゃった。皆席に着いてくれ、申し訳ない」


円卓に各自が着席する。それにしても大きな部屋だなぁ、まぁ辺境伯ってくらいだから相応の事かな。


「小父様、先程ソフィの功績と申されましたが、それは違います」


「どういう事だ? 先陣を勤め、ラドルアとの交渉に持って行ったのは其方ではないのか? 」


「あくまで切っ掛けに過ぎません、本来の功績者はこちらの御使い殿とナイト殿……です」


なぜか頬を赤らめて俺達を紹介してくるソフィアさん。嫌な予感がするのですが


「ほう、詳しく話を聞かせてもらおうか」


露骨に覇気を垂れ流し、プレッシャーをかけてくるホールデン辺境伯


なにこれ、まるで娘さんを下さいと言いに来た男に対し、ぶち殺すと言わんばかりのお父様みたいな空気じゃないですか。


言葉を違えれば一触即発


願い事が叶うのなら願いたい。


誰か俺と代ってください、お願いします。


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