しゅてーたす
うぅ……あぁ……
意識が覚醒して目を開き、真っ暗な空間にいることを理解する。
あれ、俺生きてるのか?
気絶したんだっけ……記憶が曖昧だな。ん、なんだこの臭い。血の匂い!? あぁ、思い出した。
俺たしか槍で突いて、何度も何度も……そうだった、命の奪い合いをしてたんだ……
その後急に体が痛みだして、それで気絶したんだった。てか、痛みが引いてる、お腹がすいてない。なにがあったんだ?
色々と混乱している俺は目に映る真っ暗な空間に違和感を感じた。
な、なんだこれは。
【ステータス】
え、ちょっとまって。視線の左下端、ナニコレ……いよいよ気がふれたのか?
あぁ、そういえば異世界だったな。そーいう事にしよう。うん、そうしよう。じゃないと精神が崩壊する。
異世界小説にありがちなのは「ステータスオープン! 」とか口にだして情報を開示するんだったっけ。よし、やってみよう。
「しゅてーたすおーぷん! 」
……
かんでしまった。引きこもりの弊害か、それとも対人恐怖症を患って長期間他人と喋らなかった事が原因か。
齢30を超えたおっさんが「しゅてーたす」って……
当然なのか何も起こらない。よし、わかった。きどちゃんの本気みせてやる、括目せよ!
「ステータスオープン! 」
決まった。腹の底から低音重視の素晴らしい響き。この美声(自画自賛)でなにも起こらないはずはない!
……
なにも起こりませんでした。起こりませんでした。起こりませんでした……
恥ずかしすぎて貝があったら入りたい、あ、俺貝みたいな空間に入ってたっけ、てへ。
許せない。30過ぎのおっさんを馬鹿にしやがって。逆切れするなって?いいじゃない、だって恥ずかしかったんだもの。きどちゃん顔真っ赤だもの!
意地でもステータスを開示してやる。
声でだめなら直接触るしかないよな。タッチパネルな感覚で。よし、いくぞ……
「ぽちっとな」
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良所 内人 種族 人間
称号 貝を望し者
LV5
HP 50/55
MP 30/30
STR 10
VIT 5
INT 3
DEX 5
LUK 1
──ユニークスキル──
壊れかけた魂(呪)LV1
生物に対し直接交流を計ろうとすると生命が削られる
削られた生命に対しLV相当の苦痛上昇効果
渇望LV1
神々の贈り物。望みを叶える因子を与える
LVによって因子の数が変わる
対価 因子の交差により知的生命体の接触が増える
因子1 貝殻・周辺の魔素を取り込みHP・MPの回復を促す。召喚者のLVに応じ成長する。召喚者の魔力を注入すると開閉する。召喚者が外にでると防具として体に付着する。魔力を注入すると元に戻り、召喚者が中に入ると閉じる。
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ほうほう、なるほどなるほど。LVは5、と。気絶する前の戦闘であがったのかな。称号?貝を望し者? ヨクワカラナイ
ユニークスキルってあれか?チートってヤツか! なになに?
壊れかけた魂? 呪い? あ、れ?
これってスキル? 他人やモンスターとやり取りすると死に直結って、え? え? え?
詰んでませんかね? コレ。まぁ重度の対人恐怖症なんで交流なんて無理なんですけどね☆
んで次はなんだ?
渇望? ふむふむ、ん? これチートじゃないですか!? 直接望が適うわけではないけれどキッカケをくれるわけで、おぉチートだ!
ん?
対価?
知的生命体の接触が増える……だ……と
つまり
何かを望む→LVを上げる→因子が増える→やったねきどちゃん願いがかなうよ! →知的生命体の接触が増える→壊れかけた魂(呪)が絶賛発動→きどちゃん無事死亡。
嘘だろ……
なにこの最悪な上げて落とすユニークスキルコンボは。冗談じゃない、どうにかしなきゃ。
とにかく他者との交流を全力で回避することが生存に欠かせないって事か。今は夜みたいだし、明るくなってから貝殻を出て探索をしよう。
落ち込むことはあったけどとにかく今日も無事でなによりでした、オヤスミナサイ