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騒乱編 第一章 ソロー大草原の会戦 肆

金髪部隊上空で花火らしきものが打ちあがった時


そう一瞬の出来事、理解するより早く状況が一変したんだ。


こんにちは、きどないとです。


今俺達は理解できない状況にあります。


ありえないですよね本当に。只々観察してただけなんですよ、トラブルに巻き込まれないように。せっかく観察小屋(木)を作って安全地帯から戦場を見てただけなのに、あんまりですよ本当に!


え? 理解できない状況ってなんだ? ですって?


俺達は今、その戦場に向かって転がっているんです。


観察小屋(木)ごと吹っ飛ばされて、凄まじい勢いのままゴロゴロと転がっているんですよ。


時折人間の断末魔が聞こえてくるのですが、俺の責任じゃないですからね!



──


───


────


時間が経過するにつれて転がる勢いが弱まりやがて停止した。


俺は抱きかかえていたシェルの安否を即座に確認する。


「シェル、大丈夫か!? 」


『あい! 』


相変わらず元気なシェルの声に安心した。


だが状況はまずい。


なにやら観察小屋(木)の周辺からうめき声と剣戟の音が響いてやがる。推測するに、戦場のど真ん中まできちゃったようだ。


勘弁してください


とにかくこの場から脱出しなければ。



                        ◇



「まさか部隊を薙ぎ払い、断崖上の森の木々をこの様に利用するとは。少々侮りが過ぎたか」


あきれた状況に愚痴をこぼすヘルダー。それはそうだろう。聖剣の一撃が己の部隊の半数を壊滅させ、自軍から見て左翼に展開させていた部隊が土砂と森の巨木に埋もれたのだ。


この状況を座して見守る事も無くソフィアは声を上げる。



「死神の半身が捥がれた今こそ好機、全軍突撃だ」


──勝利を我らに



混乱しているラルドア帝国軍に容赦なくソフィア部隊が突撃を開始する。


さすがのヘルダー直属部隊も恐慌状態に陥り、次々と躯をさらしていった。


「あと少しだ! あと少しで勝利は我らのものだ! 」


ソフィアは自ら剣をふるい自軍を鼓舞する。それに呼応するソフィア部隊の突撃は一層苛烈になり、勝敗は決したと思われた。




──なめるな小娘



憎悪を込めた呟きを口からこぼし死神は諦める事なく立ちはだかる。



勢いに乗り突撃するソフィア部隊の前衛が次々と屠られる。


大鎌を自在に操り、迫りくるソフィア部隊の首を刈続ける様はまさに死神だった。


「舞え死鎌、戦場に有る全ての死を喰らい続けろ」


ヘルダーが敵の首を落とす度、不気味な大鎌はどす黒い妖気を纏い肥大していく。


「足らぬ、たらぬぞ」


狂気の笑みを浮かべ、ヘルダーは死鎌を振るい続ける。


もはや首を狙う事なく敵兵の胴体を横なぎにし、仕舞には軍馬もろとも切り倒す様になった。


突撃してくるソフィア部隊を切り殺しならが死神はソフィアに向かい前進する。


ヘルダーの眼前に横たわる巨木を超えればソフィアにたどり着く所まできた。


「邪魔だ」


迂回する事なく巨木を切り裂こうと大鎌を振るったヘルダーだったが、おかしな手ごたえを感じ巨木を見つめるのであった。




                    ◇



「シェル、防げ! 」


『あい! 』



──ドガアアアアアアアアアア



あっぶねえええええ


小窓から外の様子を見ててよかった


目前まで進んできた鎌のおっさん、いきなり観察小屋(木)ごと俺らを真っ二つに切り裂いてきやがった。まったくふざけたおっさんだ。


一撃を防いだ後、シェルが困惑したような表情で話しかけてきた。


『ないと』


「うん? どうした」


『いまのぶき、おかしいの。』


「おかしい? 」


『うん。あれかみさまのぶき。にんげんたちにつくれない』


「え」


『でもつかってるのにんげん。おかしいの』


どういう事だ


なぜ神の武器を使っている?


「よくわからないけど、神様の武器を人間が持っているのが不味いって事か? 」


『あい! せかいがこわれるの』


それは不味い、不味すぎる。


「シェル、つまりアイツをぶっ飛ばして武器を回収しないと世界がやばいって事か」


『あい! 』


「わかった。アイツをぶっ飛ばそう。シェル、悪いけどまた力を貸してくれるか? そしたら俺が──」


『だめなの』


なんでだよ! こんな土壇場で力を借りれないってどういう事!


「え、え、シェル? なんで? 」


『かみさまのぶき、とってもあぶないの』


「でもアイツ倒さないといけないんじゃ」


『あい! 』


「なにか別の方法でもあるのか? 」


『ないとおめめつぶって』


言われるがままに目を瞑る俺


シェルはちっちゃい両手を俺の頬に付けると、一言つぶやく



『万難を排し、主の願いここに叶え』



同時に俺の意識が遠のいていくのであった





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