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騒乱編 第一章 ソロー大草原の会戦 参

両軍相討つ前線の一角に伝令の声が響き渡る。


「隊長! オースロック隊長! 」


「おうなんだ? 」


「ソフィア殿下直属部隊が敵将軍ヘルダー元帥と交戦状態に入りました! 」


「な、なにぃ!? 確かか! 」


「はっ、殿下部隊は中央突破成らず敵陣中央部にて足止めを受けております」


「了解した。伝令ご苦労! 」


「ハッ」


予想はしていたがよりによっていきなり死神とカチ合うとは……状況は極めて深刻だぜ嬢ちゃんよ。


クレイグが保険代わりを務める状況であってもだ。


敵先方、それも大部隊を押さえながら救援を出す──


コイツはしんどすぎるだろ。


「おてんば嬢ちゃん、無理すんなって言ったはずだぜぇ! 」


オースロックは思わず悪態をつきながらも冷静に思考を巡らし大声をあげる。


「グリード! いきてりゃ返事しろ! 」


すると血しぶきを巻き上げる前線の一角から、怒声の様な返事がかえってくる。


「ふざけんなクソ親父。テメーの息子が簡単にくたばる訳ねーだろが! このクソ忙しい時になんの用だ! 」


 敵部隊を蹴散らしながらオースロックに近づいてくる青年が現れた。全身を返り血で真っ赤に染め、その眼光は覇気に満ちている。

 その姿にニヤっと笑いながらオースロックは口を開いた。


「交戦時に悪態つけりゃ一人前だ! そんな一人前のお前に命令だ。」


「忙しいのに命令してんじゃねーぞクソ親父! 」


 ラルドア帝国軍の歩兵達を怒りに任せて次々と吹き飛ばしながら、会話をするオースロック・グリード親子。はたから見れば、まるで鬼人の親子喧嘩に兵隊たちが巻き込まれている様だった。


「いいか、よく聞けグリード。今からお前がここの指揮を取れ! 」


「あぁ!? テメー、仕事ほったらかして酒でも飲みに行くつもりかぁ!? 」


喧嘩腰のやり取りは彼ら親子にとって日常そのものだったが、いつになく真剣な表情をして告げるオースロックの姿に空気が変わる。


「嬢ちゃんがまずい事になりつつある」


「なんだと? 」


「死神の野郎が現れた」


「親父本当か!? 」


「理解したか放蕩息子、一刻を争う状況だここはまかせた──」


「親父あぶねぇえええ! 頭上だぁああああ」


──ドガァアアアアアン


オースロックが居た場所が地面ごと吹き飛ばされる。



間一髪であった。息子のグリードが反応していなければ避けられなかった一撃。


ヴィクトールの盾と呼ばれるオースロックが、後れを取りかねない一撃。


体制を即座に立て直しつつ敵と対峙するオースロック親子。


爆心地の土煙が晴れて敵の姿が現れる


黒色の鎧を纏い、鋭く長いランスを右手に握りしめ


黒竜に騎乗する姿は周囲の者に恐怖をまき散らす。



「久しいな盾よ」



「ちっ、不敗のジークかよ……」


「親父、コイツが……親父と7日7夜死闘を演じたって化け物か!? 」


「……そうだ。正確には死闘じゃなくて俺が粘っただけだがな」


まずい、不味すぎる。


不敗のジークが出張ってきたらお嬢の救援どころか前線が崩壊しちまう


くそっ、どうする


思案するオースロックにジークは感情の欠片もなく淡々と口を開いた。


「盾よ、悪いがソフィア殿下の元には行かせない。不毛な戦いを止め、即座に降伏せよ」


ジークを押さえながら救援に向かう事は不可能、ならば


「ぬかせトカゲ乗りが! お前を倒し、お嬢の元に行かせてもらうぜ。グリード、お前はトカゲを料理しろ」


「上等だ親父、くたばるんじゃねーぞ! 」



「──面白い。ならば押し通れ」



「「いくぞっ! 」」




                     ◇



『ないとー、くろいとかげがそらからふってきた! 』


「あぁ、ありゃ化け物の類だな」


戦場を観察していた俺たちをくぎ付けにした出来事、黒いドラゴンが騎兵共々高硬度から突撃したんだ。


まるで黒い雷だ


 普通の人間がどうにか出来るレベルじゃないってのはわかった。けど不思議と恐怖感が沸かないんだよね、感覚が麻痺してるのか?俺


以前俺が遭遇したドラゴンに比べれば、幼さすら感じるんだよね。あの黒竜。


あの時は本当に死を覚悟したからなー


嫌な思い出にふけっていると、シェルが別の方向を指さして話始める


『ないとー、きらきらよろいのきしさんまけそー! 』


「え、まじか? 」


シェルの指さす方向へ視線を向ける


敵陣中央で足止めを喰らっていた金髪部隊がジリジリと数を減らしていた。


だけど様子変だぞ? あんなに不利になってるなら退却するのが常識ですよね?


なんで退却しないんだ?


すると直視する金髪部隊の周辺に異変が起こる


花火の様な何かが部隊上空で炸裂したのだ


え?花火? 戦場で?


不思議に思いつつ、俺たちはまた観察をつづけた。



                    ◇



「ソフィア殿下、そろそろ限界です! 」


「よし、死神の頭上にありったけの火玉を打ち上げろ! 」



──ドーン、ドーン


ヘルダー元帥率いる直属部隊上空に赤い火花が炸裂する



「小娘め、戦場で火遊びとは笑わせてくれる。命乞いの余興か? 」


「死神よ、その油断が命取りだ! 」


「戯言を」



刹那


両軍左方向から轟音が轟く


衝撃波と共に大地が割れ、ラドルア帝国兵士を飲み込みながら


ヘルダー元帥及び直属部隊へ一直線に向かっていく



「聖剣か」


そう呟くと、ヘルダー元帥は今までの余裕な態度を一変させ、声高に直属部隊へ指示をだす。


「全部隊後退せよ。全速だ! 」


今まで交戦状態であったヘルダー直属部隊は一糸乱れぬ様相で、反転離脱を計る


だがあまりにも強大な一撃は直属部隊の半数以上を屠り、尚勢いを弱める事無く森へと抜けていく


そう


聖剣の斬撃は森へ向かって行ったのだ。


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