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騒乱編 第一章 ソロー大草原の会戦 弐

「始まったみたいだな」


『あい』


 俺とシェルは創造した観察小屋(木)から両陣営の動きを眺めている。それにしても多人数の、それも重装備をした兵士が戦う様は映画やドラマとは迫力が違う。


 なにが彼らを駆り立ててるのだろう?俺は少しばかり興味を引いた。だがあの中には入りたくない。うん、それは嫌だ。好き好んで争いに巻き込まれるのは御免だ。


 俺たちから見て左方向から来る軍隊がグングン速度を上げて敵陣中央部へ突入をする感じか。先頭を駆ける白銀の騎士は女性か?長い金髪を靡かせて妙に目立つ存在だ。


色々と思う所はあるけど、とにかく観察を続けよう。



                       ◇


「クレイグ! ガルーダ隊を左側面に展開! 」


「あいわかった」


「オースロック、悪いが敵先方を押さえてくれ。」


「了解姫さん、くれぐれも無理するなよ?王様に怒られちまうからな」


「わかっておる、本営部隊はこのまま突入! 薙ぎ払え! 」



──姫君の道は我らが切り開く!



ヴィクトール王国軍はソフィア王女率いる本営部隊を先頭に敵陣営へ突入する。


「うわぁああああああ」


「ひ、ひるむな。やつらを止めろおおお」


その様はまるで一振りの刃そのものであった。ケーキをナイフで切る如く敵陣営を分断しはじめる。

その後もソフィア部隊の勢いは止まらず、敵陣中央まで躍り出た。


──


───


────


(やけにあっさり抜けそうだな)


手ごたえの無さに疑問を浮かべるソフィア王女。


(気のせいか? いや何かがある)


敵陣中にて敵を切り伏せつつ思考を巡らすが、あっさりとその答えが明かされる。


「殿下! 前方に新手の敵部隊が! 」


「なに!? 」


敵を蹴散らしつつ、中央突破を図るソフィア部隊。その眼前に黒色の鎧を纏う敵部隊が立ちはだかる。


「ちっ、死神将軍のお出ましか。」


「ふん、ヴィクトールの小娘。久しいのう」


──ブオン


戯言のような挨拶に合わせて、禍々しい大鎌がソフィア王女の首めがけて襲いかかる。



「ご挨拶だな死神ヘルダーめ」



宝剣にて、その一撃を受けたソフィア女王だったが、勢いを殺しきれず愛馬もろとも後方へ飛ばされる。


「化け物の様なその膂力、衰えはしないものか」


「ぬかせ小娘が。我が直々にその首を刈に来たのだ、潔く大草原の糧となれ」



「やれるものならやってみろ! 」



暴風の様な数十合の切り合いが辺りを圧倒する。


少しでも近づけば巻き込まれ、微塵とかすだろう。


周辺の部隊はそれぞれ距離を取り、各個に切りあう。両軍共精鋭中の精鋭であるがゆえ、血みどろの白兵戦が展開される。



「ほう、少しは成長がみられるな小娘」


「ハァハァ、ちっ」


「だが、まだまだひよっこよ」


「だまれ! 」


「貴様の策などお見通しと言っとるのだ」


「な、なに!? 」


「貴様の盾に我が先方を押さえさせ、後方に憂いを作らず。そして左右どちらからか剣が率いる機動部隊を切り込ませ、中央突破したお主が反転、挟撃と言ったところだろう」


「それがどうした! 」


図星を付かれたソフィア王女は怒りの一撃をヘルダーに叩き込む。



──ガキーン、ギリギリギリギリ



剣を軽々受けたヘルダーは、苦も無く語り続ける。


「数多の戦場を駆け、幾千幾万の屍を乗り越え鍛えた我ぞ。昨日今日の小娘の策程度初動で見切るわ! 」


──グワン


「うわぁあああああ」


吹き飛ばされたソフィア女王は落馬し、全身を叩きつけられながら転がる。


「殿下ぁああああああああ! 皆の者、殿下をお守りしろぉおおおおお! 」


──おぉおおおおおおおお!


ソフィアを中心に円陣を組み始める本営部隊


だが


「躯をさらせ弱兵共」


「黒部隊、押し潰せ」


ヘルダーの号令を切っ掛けに大多数の黒色鎧部隊が動き出す。


元より攻勢に強いソフィア部隊だが、防衛はやや苦手な面がある。そこへ百戦錬磨のヘルダー直属部隊が攻勢にでるや、徐々に押され始めるのは必定だった。



「殿下、殿下! 」


「う……、はっ、ヘルダー、死神はどうした!? 」


「殿下、御無事ですか!? 」


「あぁ無事だ、それより状況は」


「先方部隊のみで円陣を組み、なんとか持ちこたえています、ですが」


「よい、状況はわかった。このまま乱戦に持ち込み時を稼ぐぞ! 」


「殿下、よろいしのでしょうか? 」


「なに、案ずるな。策を見破られ、誘い込まれ包囲はされているが、まだ勝機は十分ある」



──ヘルダーよ


──私の剣は


──必ず届くぞ


──ヴィクトール王国最高の聖剣が


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