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貝の残響

──◆よぉ。調子はどうだい? 良所 内人君。


──最悪だよ、良所 外人さん。


創造神イアルダバオートに吸収されたディアールは、現在内人の体内にある──かつてルシフェルにたくされた神像に居た。


──六枚の翼を持ち、性別のつかない整った顔。瞑る両目から赤と白の涙と思わしき宝石が頬に煌く。そしてその像は大きな一枚の葉に乗り、その下を大蛸の足が渦巻き支えていた──


この像は創造神コヤルガナムと妻アコリアナが重なりし物。つまりこの世界の聖域として機能していたのである。


──ぶっちゃけて言うけどさぁ。俺達の名前、正反対じゃねーの? 貴方はエレーファの神であり、この世界の内側の人でしょ? 対して俺はさ、まぁ貴方から生まれたのはわかってるつもりなんだけど、余所者って感じじゃん?


──◆あははっ。もうわかってるでしょう? 意識は繋がったんだ、名前の由来だってわかってるはずだ。冗談だよ、冗談。


──まぁいいや。それよりも、だ。貴方はすげーよ、本当に。信じられないくらい愛の塊なんだな。貴方の記憶をすべて共有した時、発狂しかけた。地球風に言うならどんだけドMなんだよ貴方は!


──◆いやいやそれほどでも


──ほめてねーし! むしろドン引きだし!


──◆いやいや~。俺から言わせてもらえば君も相当だよ? 蛸と戦ってる時の君は輝いていたよ~


──……話を変えよう。


──◆あらら、照れすぎでしょ!? まぁいいやね。俺がここにいるってことだけで全てはわかってるでしょう?


──まーな。さっさと一つになって偽神を対消滅させちまおう。泥棒さんも消えて、俺達も消える。のこった皆は大団円。


──◆の予定だったんだけどさ、ちょっとしたアクシデント? があってさ


──え。うそでしょ? ここまできて対消滅だめになりました~もうだめだぁ~お終いだぁ~うわぁ~的な落ちは勘弁な?


──◆一つに戻れば解るさ


──あぁ、そうだったな


二人は笑いながら手を繋ぐ。人にとっては他愛もない動作だが、彼等にとってはそこに到る時の長さが違う。故に──


『『さぁ我等、那由他の果てを越えて今一つに戻らん! 』』


内と外が融合し、世界が開く。


『父さん、母さん。只今戻りました』


──では息子よ


──その渇望を


──我等エレーファの創造神に捧げよ




                   ◇



『はっ、たわいもない。一つ崩れれば貴様等など取るに足らぬわ』


──◇ぐっ、よもやこれ程とは……


『諦めてはなりません! ルシフェル、皆! ディアールを信じて! 』


ディアールが吸収されてから戦況が一変。気が付けば誰も彼も疲弊していた。


それでも諦めない女神シェリーア。その心の中に最愛の人の言葉が残っているからだ。


『もはや劣勢は覆らぬ。女神よ潔く諦めよ、さすれば苦も無く消滅させてやる』


その時であった。


圧倒的な邪なる存在感を出していた創造神イアルダバオートの気配が消える。否、極小になったのだ。


「なっ、なんだこれは。力がでぬ……なにがおきたぁあああああああああ」



──◇どういうことだ!? シェリーアがやったのか!?


『わ、わたしではありません』


(俺だよシェリーア)


『!? ディアール!? 』


──◇!? ディアールのヤツがいるのか!? 


「なにをばかな! あやつは我が吸収したはずだ! 」


(シェリーア、さっきも言ったけど少しばかりお別れだ)


『!! 』


(そこでだ。全てが終わった後、ルシフェルをはじめとする皆には”父と母”二人と旅に出たと伝えて)


(それと、ソフィアをはじめとする俺の家族には”必ず戻るから安心して”と)


(たのんだよ愛しいシェリーア)



『んじゃ父さん、母さん、宜しくお願いしまっす! 』


さっきまでイアルダバオートに体を取られていたハズだった。それがいきなりナイトの声で喋り出し、何かを宣言した。


──不浄の神を


──届かぬ無の果てへ


両手に浮かび上がる男女の顔。次の瞬間外から来たイアルダバオートと共に内側へと消滅する。


『ディアーーーーーーーーーール』


大洞窟には女神シェリーアの声だけが木霊していた。




                  ◇



──馬鹿が、少々焦りはしたがこの程度で我は消滅などせぬ


──◆馬鹿はお前だ。この程度でオワリだとおもっていたのか?


──戯言を。今の我には貴様に干渉はできない。だが、それは貴様とて同じことだ


──◆それがお前の限界だ。消滅するお前に良いものをみせてやろう。


──なんだと?


──◆理の書四十二編。その四十二に書かれる究極の禁呪。故に書のみでは発動しない。


──なんだそれは……


──◆この黄昏のトワイライトロッドと理の書四十二番つまりエレーファが創造神、コヤルガナムと妻アコリアナが授けし俺のみ使用可能な超越大魔法──



──宇宙の生誕ユニリバース



ディアールが放った超越大魔法は当初イアルダバオートを道連れに放つ予定であった対消滅魔法である。


──馬鹿な……このままでは我だけではなくお前も消滅するぞ!


──◆当初はその予定だったんだよ。けどまぁ、俺の保護者がそれを良しとしなくてさ。つまり、消滅するのはお前だけだ。


ディアールが語った言葉通り、創造神イアルダバオートの魔力、及び神力のみが消滅していく。つまり創造神そのものを魔力源にして超越大魔法を放ったのだ。


それを可能にしたのは言うまでも無くコヤルガナムと妻アコリアナだ。


──あぁ……我が……消えて……


──◆さようなら隣のおじさん。



──それからの事──



宇宙の生誕を放った事により、新たな宇宙が生まれた。


つまりその宇宙の創造神が俺ということになるんだそうだ。


──◆父さん母さん、孫孫いってたけど本当の目的って俺を創造神にする事だったんでしょ?


──あら、当然じゃない。孫も大事だけど、息子の成長も大事よ?


──うむ。


というわけで、初めから道は敷かれていたみたいだ。



続いて親孝行の旅の話をしようと思う。


父さんと母さんの要望によってエレーファよりファンタジーな世界を創らされた。


そしてその世界で制限付きの大冒険をしたんだ。


いわゆる縛りプレイだ。詳しい話は機会があった時にでも話そう。


とにかく両親は満足していた。そしていきなり叫んだんだ。


『い、いかん! 孫が! 孫が生まれるぅう! 』


『貴方、急ぎましょう! ほら、ディアール! さっさと準備して! 間に合わなかったらお仕置きよ! 』


──◆ちょ、ちょっとまってよ父さん母さん。この世界をほっとけっていうの!? 


『よく考えてみろ! この宇宙はお前と同義だ。異変があれば嫌でもわかる。大切なのはその異変を計る物差しなのだ! 』


『些細な変化もみのがさない貴方なら大丈夫よ! それよりも孫に会いに行くわよ! いそいで! 』


と、まぁこんな感じでして。それから俺達は急いでエレーファへと戻りました。




                  ◇




──◆ただいまみんなぁ~! 元気にしてたぁ?


突然舞い戻った俺に対し、エレーファの神々は同じ言葉を口にした。


──元気にしてたじゃないだろ! この駄神が!


『ディアール! おかえりぃいいいいいいいい! もう離さないから! もう、もう! 』


──◆あぁ、シェリーア。ただいま。慌ただしくて申し訳ないのだけど、下界へ降りるよ?


『!? 私もいくわ! 』


──◆あ、いや。なんていうか、その。ソフィアとライラに身ごもった子供達が生まれたんだよね。それで父さんと母さんが孫の顔を見たいってうるさいからさ、


『!!!! いつのまに子供つくったのよ! 私をほっておいて子供!? 』


──◆え、あ、いやいや。気づいてたでしょ? 少なくとも偽神を消滅させた時点で周りをよく観察してたら


『貴方が消えた状態で観察ですって……? 私にそんな余裕があるとでもおもったのディアール……? 』


──◆……あ、そうだ! ルシフェル! 君に渡しておいたシェリーアへの愛の贈り物どうした!?


──◇は? なんだそれ


『え!? 愛の贈り物!? ルシフェル、さっさと寄こしなさいよ! 』


──◇まてまて、落ち着けシェリーア! そんなもの預かっておらぬぞ!


『はぁ? てことはディアールが嘘ついたっていうの? ちょっとディアール』


──◇いない、な。さしずめ逃走神ディアールといったところか。


『……逃がさない』


『逃がさないわよディアール! ソフィアお姉様直伝のお仕置きをお見舞いしてくれるわ! 』


──


───


────


そしてエレーファに住まう人々へ天啓が下りる。


人々は夢を見た。


同じ夢を。


良所内人を知る者達よ


森の家へ集まれと




                   ◇



良所邸がある森の家。そこに向かう道中、勝手しったる仲間達の姿があった。


聖剣は言う「久しぶりですね皆さん」


隣の友も口を開いた「俺とクレイグはこの通り健康そのものだぜぇ! 」


語る若者達にまじり、壮年の戦士が口を挟む「お前らはほんとかわらんよな。元帥、帝国の方はいかがでしたかな? こちらは少々てこずりましたが」


かつての元帥閣下は半分まで白髪になった髪をかき上げ笑う「あれから帝国王国共に少々動乱が起きたからな。まぁ其方達や我等がいれば王国も安泰、帝国もしかりだ」


彼等の上空には二匹の赤と黒の竜、そして不思議な絨毯が舞う。


「ほっほっほ、夢の天啓とはこじゃれたお伝えじゃわい! 」


「上皇陛下のおっしゃる通りですね。あ、こら。リュート、景色が良いからって暴れては危ないでしょ? 」


「ほっほっほ。王国の将来を背負う子じゃて、それぐらい元気なほうがよいて」


「すみません、ライラ、ちょっと二人をつれてこっちにこれないか? 」


「はいお姉様! ジュール、ジュリア。少し揺れますよ? 」


「だー、あーう! 」

「あーう! 」


ライラが赤い竜の背に合流し、三人の子供達が集う。


「あー! あいー! 」

「あいー! 」

「あーうーあいー! 」


「そう言えばお姉様知っていましたか? 」


「うん? ナイトが返ってくる夢の話か? 」


「いえいえ、実はですね、ベリアのお腹にも赤ちゃんがいるみたいなんですよ」


「えぇ!? いつのまに!? 相手は……あぁ黒竜がいたな! 」


二匹の竜は仲睦まじく尻尾を巻き付け合って平行して空を飛んでいる。ライラが移動しやすかった理由だ。


「あぁだからか。最近ジークと黒竜が喧嘩してたわけがわかったぞ」


「そうなんですよねー。でもまぁあの二人ならそのうち仲直りするでしょう。いざとなったらベリアちゃんがガツンとジークに言うだろうし」


ソフィアとライラの会話にフェルが叫ぶ!


「ヴォオオオオオオオオオン! (あたしも子供が欲しい! )」


「だめだフェルちゃん。フェルちゃんはフェンリル、即ち単為生殖だろ? 子供を産んでしまったらフェルちゃんが亡くなってしまう。そんな事は私は耐えられない! 」


「ヴォン? ヴォンヴォン! ヴォーーーーン!(ソフィア知ってた? 実はね、私繁殖できる体になったのよ! だから子供つくっても死なないの! 強い狼の雄をさがしてーー! )」


精霊神アイシアと重なった経験により、フェルの体は変化していたのだ。


「な、なんだって!? よし、わかった! ナイトにお願いしよう! 」


「ヴォーン! 」


──


───



彼らが森の家に着くとそこには


逃げるきどちゃんをどこで手にしたのか、ピコピコハンマーで一生懸命ナイトの頭を叩くシェルの姿があった。


『トートはめーなの! 』


「今の俺トートじゃねーし! 」


『とにかくめーなの! 』


「今の俺ナイトだし! 』


『わるいこなの! 』


「悪くねーし! 名前良所内人だけど、よいところないってわけじゃねーし!」


その様子を見た誰も彼もが笑顔になる。


そんな皆が居るこの世界。


当たり前だけど、当たり前じゃない幸せをかみしめながら


俺はこれからも生きて行こう、そう思った。




                            

完              

『対人恐怖症な俺の異世界リハビリ生活』をお読みくださり誠にありがとうございます。

作者の春眠桜でございます。


昨年2017年3月10日から連載させていただきました本作品、無事最終回を迎える事ができました。

これもひとえに読者の皆様のおかげです。読んでもらえている、それだけで励みになりました。

処女作かつ、文才の無い私であります。つたない文章にイライラされた方も多かったでしょう。それでもお読みくださった皆様には感謝の気持ちで一杯です。

本来ならば前書きやあとがきを利用して皆様とのコミュニケーションを沢山取りたかったのですが、あえて自重させていただきました。

その分こうして最終回を迎えた今、ここで発散させて頂いております!


春眠桜──この名前をみた限り女性の筆者かな? と思われた方々もいらっしゃると思いますが中身は『おっさん』です。スミマセン。

名前の由来なんですけど、わたくし四月生まれでして、春という季節が大好きなのであります。

春眠暁を覚えず──春の夜はまことに眠り心地がいいので、朝が来たことにも気付かず、つい寝過ごしてしまう。

大好きなんですよね、春の気候が。その春眠と生まれた月にまつわる花、つまり桜を足したものが名前の由来です。


ハルネノサクラ──しゅんみんざくらではありません。どうでも良い情報でしたね、すみません。


さいごに


小説と言う世界に初めて足を踏み入れてわかった事を書きたいと思います。


たかが小説。されど小説。


0から1を生み出す労苦は計り知れないものでした。


ですが、物語を完結させた達成感と、読者の皆様が居ると思う充実感は私に幸福を与えてくれました。

本当にありがとうございました。

それでは皆様、また新しい物語にて出会える日を願って。


                       2018年3月11日 春眠桜

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