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夢と現の境界線

──シェル、俺を信じてくれるのかい?


──えぇ。私は貴方を信じますディアール


──ありがとうシェル。それじゃ、いってくるよ


──ディアール! 絶対に、絶対に帰ってきてね! 約束よ!



                  ◇



──お前が女神か? 恨みは無いが、俺の野望の為その首をもらい受けるぞ


──お断りします。私は違えぬ約束をしたのです、ですから今ここで、貴方に殺されるわけにはいきません


──くっくっく。約束だと? 約束……俺の野望……うっ……体が……魔力が……


──愛しき人との約束を果たすのが私の存在理由。無明奈落の門よ、その姿を現しかの者を闇へと堕とせ


──グァアアアアアアア……女神よ、必ず俺は貴様の前に現れる……それが時の果てであったとしても……必ず、必ずその首を……



                   ◇



──偽りの神よ、貴方はこの世界に存在してはならないのです


──########、#######


──させませんっ! 来たれ、多次元送門!


──##########、クックック。


──◇ シェリーアっ! 貴様、許さぬぞおおおおおおおおおおおお


──


───


────


──◇ どうにかあの偽神を弾くことが出来たが……シェリーア……これは……神魂が分離しているのか



                  ◇



──貴方は……どなたですか? 私はフィリーア。この世界の女神です


『女神様ぁ、しぇるはお腹すいたなの! あい! 』


──この子はシェル。私と共に世界へ現出した……娘みたいなものです


『あい! 』


──◇ そうか……私はルシフェル。ここ天上の園の管理者だ


──ルシフェル様……宜しくお願いしますね。さぁシェル、ご挨拶を


『あい! えーと、羽のおじちゃん、宜しくなの! あい! 』


──◇ おじ……まぁよかろう



                  ◇



──◇ オーディニアス、何処へいった! アークは無事か!? インティアーナ、ダグザ、バルード、返事をしろぉおおおおおおおおお


──無駄だ天上神。いや、元天上神といったほうが良いか


──◇ だまれっ! 貴様、彼等をどこへやった!? 


──ふふっ。彼奴らはすでに下界へ堕とされた。いや、自ら喜んで天上を去って行ったよ


──◇ 嘘をつくな!


──さて、余興はこれまでだ。女神は今どこにいるのだ? 大人しく差し出せ


──◇ ……シェリーアはすでにいなくなった。遥か昔に……な


──なん……だと? 嘘をつけぇえええええええええ! あの女神は、あの卑怯者はこの手で首を狩らねば気が済まぬのだっ! 貴様、俺を騙せると思っているのか!?


──◇ 貴様などしらぬっ! 仲間を下界へ堕とし、今は無きシェリーアを侮蔑するとは……許せぬ


──◇ 我、世界に命ず。この者の存在を許す事無し。神の裁きを!



──終焉の羽音



──お前まさか……自爆する気……か


──◇ 貴様の様な愚か者には少々もったいないがな。シェリーアを侮蔑した罪、その身で味わえ!



                  ◇



──まさか……この俺が……まだあきらめるな……偽神を……女神を……滅ぼすまで……


──


───


────


──私は今まで何を……ルシフェル様……オーディニアス様……どなたかいらっしゃいませんか?


『みんないなくなっちゃったの……さみしいの……』


──シェル、大丈夫ですよ。私は知っているのです、必ず皆が帰ってくる事を。


──


───


────



『!! めがみさまぁ! おほしさまがながれて、おへやにおちてきたなの! 』


──!? わかりました。シェルは私の後ろに隠れていなさい


(誰かは思い出せないですが、遥か古の時に私は教えられました。たとえ一柱になろうとも天上の園で永らえろと。そして遥か未来に星が流れ、世界エレーファに届く時、全てが動き出し、戻ってくると言う事を) 


『地球より拾われた矮小な魂よ──』


(貝に成りたい)


──女神さまぁ、この人おかしいなの


──シェル、少し静かにしましょうね?


──ごめんなさいなの


『地球より拾われ──』


(貝に成りたい)


──やっぱりおかしいなの! たのしいの!


──シェル……だから静かに


『地球──』


(貝に成りたい)


──ぷっぷっぷっぷなの! おなかいたいなの! おかしいなの!


『地──』


(貝に成りたい、いや、貝に成れ! )


──だめなのぉ! おかしいの! おなかいたいの! このひと女神さまのいうこときかないなの!


──シェル、もっと彼の心に耳を傾けてみなさい。彼は決しておかしな人ではありません。矮小な魂を必死に守ろうとしているだけなのですよ


──あい……わかったなの! こころのこえをきいてみるなの!


(本当は他人と交流したい、でも無理なんだ。いくら神様でも無理なんだ。生まれてから数年で天涯孤独になって、一人でいる事が怖くて、無意識に無理して。弱音も吐けなくて、無理に笑顔を振りまいて、存在を認められたくて……でも心が、もう心が壊れて──)


──!? 女神さまぁ……この人さみしいなの。こわれそうなの……しぇる、たすけたいの!


──彼はこれから下界へ下るでしょう。彼を助けると言う事は私の元を離れるという事です。その覚悟はできますか?


──しぇるはいつも女神さまといっしょなの。どこにいてもつながってるなの。だからしんぱいはないなの


──ふふふっ。シェル、どうか彼を助けてやってね。私はいつでも貴方達を見守っています


『良き旅を──絶望より抗う矮小な魂に、せめて我らの祝福を──』


(貝)


──女神さまいってくるなの! あ、あれ? しぇるがかいになってくなのぉおおおおおおおお


──


───


────


「うゎぁあああああああああああああ」


不思議な夢を見た。いや、夢なのか? まるで昔の記憶を思い返した様な……いや、夢だ。


現にこうして俺は飛び起きている。今俺の目の前にはドーファ領の美しい海がたゆたっているのだ。


どうも、きどないとです。


今俺は留守番という名の秘薬探しをしています。


家族達はアルフとレティシアさんをともなって王都近郊へ出かけて行きました。


俺の側には一本の釣り竿が糸を垂らしている。そう、俺は釣りをしていて、寝てしまったのだ。


何故釣りをしながら寝てたかといいますと、滋養強壮に効果的な秘薬が海にあると言う事でアルフから詳しい話を聞いたのですよ。


したら、【クモール】と言う蛇? に似た生き物がいて、それを調理したものが秘薬ということでした。


「ナイト、アルフ達の事は私達に任せなさい。そのかわり、帰ってくるまでに【クモール】の確保をお願いね」


まぁそういう事でして、そいつを求めて……正確には嫁さん達が求めて俺に命令が下ったわけです。


てか蛇みたいな生き物ってなんだ? ウツボみたいなやつか? それともアナゴ? あ、うなぎか?


まぁ口頭で教えられただけなので、とりあえず片っ端から蛇に似た生物を確保するしかないのですが。


(というか、久しぶりに一人だな。でもなんか寂しいなぁ……地球ではずっと一人だったのに。やっぱ恐怖症は緩解したのか)


自分の変化を自覚しながら日に照らされる海を眺めていると、寂しい気持ちが湧いてくる。


昔は言葉にすらできなかったもんなぁ。だが今の俺は素直に伝える事ができるはずだ。


誰がいるわけでもないが、俺は立ち上がると、思いっきり息を吸い海へと叫んだ。


「シェル! ソフィア! ライラ! フェル! ベリア! 俺は、お父さんは寂しいぞぉ! 早く帰ってこーーーーーーーーーーーーい! 」


穏やかな海は俺の叫びを優しくかき消していく。やっぱり照れくさいよね、良い大人が寂しいって。


誰もいないはずなのに、照れくさくて釣り竿を持ち糸を海へ垂らし直す。その時だった。


後方上空から聞きなれた声達がいきなり響いてきたのだ。


「「ナイトーーーーーーーーーーーーーー! 帰ってきたぞーーーーーーーーーーー! 寂しかったのかーーーーーーーーーーーーー! 私達もだぞーーーーーーーーーーーーーーーー! 」」


『あい! 』


「ヴォン! 」


『ないと父上~アタシ頑張って飛んできたよ~』


──ガラン


俺の手から釣り竿が零れ落ち、大地に転がる。


予想より早く帰ってきた家族達を見つめる俺の顔は、夕日に負けないぐらい真っ赤だった。


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