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仲間達への感謝 

「おーい、帰ったぞー」


「ヴォン! 」


森の家の城壁から懐かしい声が響いた。庭に待機していた全員が声がした方向へ顔を向ける。


『ふぇるとないとかえってきた! あい! 』


「ナイト……ナイトぉ!!!! 」 「ナイト様っ! 」


庭に降り立った良所へその名を叫びながらソフィアとライラが駆け寄った。彼女達の瞳からとめどなく涙が流れる。


「ナイトぉ……ナイトぉ……」


「ナイト様……本当に心配したんですよ……ナイト様ぁ! 」


今まで我慢し続けて来た感情が爆発したのか、二人は良所の首に腕をまわして力一杯絞め始めた。もう二度と離さないように。


「ちょ、まてお前達! 落ち着け。いや、落ち着いてく……だ……さいお願いします。このままでは息がっ……苦しいっ……」


みるみる顔が青ざめていく良所を、ソフィア達以外の仲間達が指をさして笑い合う。


「お嬢! そのままナイトのにーちゃんの首しめてっとしんじまうぞ! だっはっはっはっは! 」


「まったく、あれ程の戦いをした後だというのに元気ですね。ふふっ」


和やかな雰囲気であるが、良所は泡を吹き始めいよいよ意識が飛びそうになりはじめた。その様子を見かねたオースロックはグリード達へ指示を飛ばした。


「おいグリード、クレイグ! 笑ってる場合じゃない、止めに入るぞ! お前らが言っていた神の食事が食えなくなってもいいのか!? 」


神の食事が食えなくなる。その言葉は二人を青ざめさせ、間髪入れず良所の元へ走らせた。


「グリード、何をするっ! 離せっ! 私をナイトから離すなぁ! 」


「クレイグ様っ! 何故ナイト様から私を離すのですっ!? ナイト様ぁ! 」


「落ち着けお嬢! それにライラのねーちゃんもだっ! よく見ろ、ナイトのにーちゃん泡ふいてるじゃねーか! 」


ぐったりと横たわり、泡を吹く良所。彼を心配してかフェルが顔をペロペロと舐めている光景が彼女達の目に入った。


「あぁああああああああああああっ! ナイトっ! ナイトがぁああああああああああ」


「ナイト様ぁああああしっかりしてくださいぃいいいいいい! 」


「二人共落ち着かんか! 」


──ゴンッ ゴンッ


慌てるソフィア達へ、ヘルダーが頭部に拳骨を振り下ろす。


「ぐふっ……」


「かはっ……」


不意をつかれた両名は気絶し、白目を剥いてぐったりとしはじめた。


「たわけが。グリードにクレイグ、我はナイト殿を運ぶ故、悪いがそ奴らを家まで運んでくれまいか? 」


「「了解……」」


(すげーなヘルダー元帥、女でも容赦ねーなっ)


(あれが人の上に立ち指揮を執る将軍というものですね)


ヘルダーが良所へ近づき抱えようとした時、我を取り戻した良所は苦笑いをしながら呟いた。


「あははっ。ソフィア達は相変わらず元気でよかった。それと鎌おじさん、色々と助かりました、感謝します」


良所の口調は相変わらずなのだが、以前の様に排他的な雰囲気が無い事にヘルダーは驚いた。


「ナイト殿無事で何より。それと以前とは雰囲気が大分違うようだが、まだ本調子ではないのか? 」


「雰囲気が違う、ですか? 長い間寝ていたからかな? まぁ大丈夫ですよ、あっはっは」


「そうか」


普段険しい顔をしているヘルダーが、優しい顔をしながら良所に返事をした。


「鎌おじさんの方が変わりましたよ。そんな優しい顔を見た事ありませんし」


「……たしかに変わったかもしれぬ」


「ヴォン! (さぁ家にいくわよ! )」


言葉を交わした後、フェルに急かされる様に二人は皆のいる家へと歩み出した。




                  ◇




森の家に戻った俺は、シェルへのご褒美やグリード達の要望に応える為、食事の用意をしはじめた。


今日の献立は【ハンバーグ】とはらぺこセットだ。


リビングに人数分の椅子と巨大なテーブルを創り出し、料理と飲み物を並べると寝室で気絶しているソフィア達を起こしに行った。


「まだ白目剥いてるな……アコヤ」


──賜リマシタ


痛みを取り除き、意識を回復させると、またも二人は俺に飛び掛かろうとして来た。


「!? アコヤッ、二人を縛れ! 」


俺の命令に右手から頑丈な縄が創られ、ソフィア達の体を縛っていく。本当にヤレヤレだ。


「ナイトっ! どうして私達を縛るのだ! 」


「ナイト様……はっ!? そういう趣味がナイト様にもあったのですね……」


おいおい、ライラよ。今聞き捨てならぬ事を言ったぞ? 俺に緊縛の趣味は無い。ナイト様【も】ってなんだ?


「ソフィア落ち着け。俺に泡を吹かせた事をもう忘れたのか? それとライラ、俺には緊縛の趣味は無い。どこの誰に縛られたんだ? 」


「ナイトごめんなさい」


「それはですね、えーと、その」


この誤魔化し様はソフィアにも関係あるな? さっきからソフィアの顔を横目でチラチラ見やがる。まぁいいや、とりあえずメシにしよう。そうしよう。


「とにかくだ。ご飯の用意が済んでるんだ、皆も待ってるから一緒に食べよう」


「わかった! 」


「わかりました! 」


──


───


────


こうして俺達は食事会を始めた。中には初めて見るお嬢さんが混じってるみたいだけど、細かい事は気にしない。


俺はちょっと照れくさい感情を抱いたまま、皆へ挨拶をはじめた。


「えー、とりあえず皆さん、お疲れ様でした。皆さんが戦っていた邪神は俺が倒しましたんで、まずは安心してください。家の周りや、平原にあった無数の気配は邪神消滅と共に消えたみたいです」


「それから……意識が飛んでいる間、皆が俺の為に奔走してくださった事、感謝します。本当にありがとうございました……」


頭を下げ、みんなに感謝を述べた時、自然と涙がこぼれた。俺の為に命を懸けて走り回ってくれた仲間達が居る、それが嬉しかったんだ。


「おいナイトのにーちゃんよ、そりゃ俺達の言葉だぜ? 」


グリードがいつもと違う真剣な表情で声をあげた。


「俺達はいつもにーちゃんに救われている。俺達が今こうして無事なのも、手を取り合える仲間になったのも、全部ナイトのにーちゃんのおかげだ」


グリードに続き、ディオールドが口を開いた。


「その通りじゃ。余らはナイト殿に救われ続けた。なればナイト殿が倒れた時、救うのは当たり前の事じゃて。余らは主従ではなく、心通わす友なのじゃ」


ディオールドがライラへ目を配ると、彼女は頷き声を張り上げる。


「一人は皆の為に! 」


その言葉に続き、ライラと俺以外が声を合わせて叫んだ。


──皆は一人の為に!


叫び終わった彼らは眩しい笑顔を俺に向ける。その光景をみた俺はフルフルと体が震え、言葉が出なくなった。そんな時、シェルが俺の肩に飛び乗ってニカッと笑うと、うれしそうに声を上げた。


『ともだちいっぱい! ないとうれしいね! あい! 』


「う‷ ん‷ ……」


もう涙を抑えきれなかった。うれしさと感謝ともう色々な感情が溢れ出して止められなかった。


俺がなんとか涙を止めて食事会を始めようとした時、ソフィアが申し訳なさそうに口を開いた。


「ナイト……感動している所悪いのだけど」


「……うん? 」


「私とライラの……縄を解いてもらえないだろうか? 」


「あっ」


顔を真っ赤にしたソフィアとライラ。今も彼女達は縄に縛られて椅子に座っていたのだ。



──だっはっはっはっは



その言葉は皆を笑顔にして、俺は急ぎ縄を解き始める。そして笑い泣きしながら宣言したんだ。


「これから食事会を始めます。みんな、これからも宜しくお願いします! 乾杯! 」


──乾杯!


こうして森の家の食事会は始まった。仲間達の笑い声を響かせながら。


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