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ディアールからの伝言 聖域の籠城戦 

──◇ 貴様を慕い愛する者達が集めし神々の因子、その全てが集まった事で貴様はここに召喚された。


(え? ちょっとまってください。色々と理解できない事があるのですが。とりあえず、ここはどこで貴方は誰ですか? )


──◇ ここは天上の園。それも私しか立ち入れない究極結界の中だ。つまり、女神を含む神々すら干渉できない場所である。


(天上の園の究極結界……どえらい所に召喚されたんだな俺)


──◇ 私の名は天上神ルシフェル。この天上を総括する神だ。


(えぇ……神の中の神って事ですか。そんなお偉いさんが俺の様な煩悩全開の者に用事があるとは思えないのですが……)


──◇ 貴様には貴様を救い、求める者達の想いに答える義務があるのではないか?


(俺を救った? いつ誰が? )


──◇ 目覚めたばかりでは何もわかるまい。よかろう。これより神受の儀を行う


天上神ルシフェルはそう言うと、右手を差し出した。


その手には五つの品々が浮かびクルクルと回る。


──◇ 古龍の涙・世界樹の葉・海王の足・紅色のグリーディアライト、そして希望の翼。散らばりし神々の欠片よ、今ここに帰らん! 


ルシフェルの言葉と同時に光がその手を包む。やがて光は鎮まり、一体の金色に輝く像が現出した。


六枚の翼を持ち、性別のつかない整った顔。瞑る両目から赤と白の涙と思わしき宝石が頬に煌く。


そしてその像は大きな一枚の葉に乗り、その下を大蛸の足が渦巻き支えていた。


(!? それは一体なんなのですか? )


──◇ 今は分からずとも良い


そう言うと、その像はルシフェルの手を離れ良所の体と重なる。


重なる瞬間、良所を救おうと奔走した者達の記憶が彼の脳裏を駆け巡った。


(あっ……あっ……)


奔走した者達のあらゆる感情が駆け巡り、最後に残った想いが良所の涙腺を崩壊させる。


必ず良所を救い出す。彼らは純粋にそう想い続けていたのだ。


──◇  もうわかったであろう。彼らが欲したものを、その想いに対する貴様の感情を


(……よくわかりました)


──◇ これにて神受の儀は終わり、最期の神判は下された。それとだ、これは私の友、因果神ディアールから貴様への伝言だ。


(因果神ディアール? 誰だ? )


──◇ この時をもって貴様はすでに人形ではなくなっている。元はそうだったが、今その身には真なる魂が宿っていると。


(どういうことだ? それから人形ってまるで空の──)


──◇ 身に覚えは無いか? 一人でいる事に怯えた事を。存在を認められたいと願った事を。


(何故それを知っている……)


──◇ 未熟な人形、それは他者の承認を求める空の器だ。


(……)


──◇ だが貴様はその器を破り真なる魂の欠片を手にした。深層にある渇望によって。少々歪な形ではあったがな。


──◇ 何故【貝】だったのだ?


(……スミマセンデシタ。あの時は自己を守る為に精一杯だったもので……)


──◇ 謝罪されるものではない。それも全てディアールの意思であったのだろう。貴様が世界エレーファへ召喚された後、その身を守る為に色々と準備していたに違いないのだから。


(俺の身を守る? ルシフェル様、真逆の意味で色々と思い当たる節があるのですが)


──◇ 貴様が言いたいのは当初身に宿した呪いの事であろう。


(そうです! 死の呪いってあんまりじゃないですか! )


──ユニークスキル──


壊れかけた魂(呪)LV1


生物に対し直接交流を計ろうとすると生命が削られる

削られた生命に対しLV相当の苦痛上昇効果


(これって過保護にも程がありますよ! 俺が他人と接触したら死って! あの時は重度の対人恐怖症でまぁいいかって思った事もたしかですが……)


──◇ ふふふっ、よく思い返してみろ。必ず絶命するとは記されてなかったはずだぞ?


(そういえば……)


──◇ それとだ。貴様は重度の対人恐怖を患っていたみたいだがな、すでに完治しているぞ。


(!? )


──◇ 自覚が無いみたいだな。ならば私が教えてやる。貴様はこの世界エレーファに来た当初、あのフェリーアにすらまともに対話できなかったと聞くぞ?


(……はい)


──◇ それが今はどうだ? 下界にて様々な人々と接し、困難を乗り越え、絆を深めている。


(……)


──◇ そもそも神でもない貴様が、天上の究極結界内にて私と対話している時点で対人恐怖なぞ考えられぬわ!


(……そうですよねぇ)


俺は天上神ルシフェルにそう言われ、改めて実感した。今の俺は対人恐怖に縛られていない事を。恐怖に震えていた心と体がいつのまにか震え無くなっていた事を。今は一人になりたいとは思わない事を。


──◇ ならば恐れる事は何もない筈だ。かつて矮小な人形だった者よ、貴様の望みを想い浮かべよ!


俺の望みか。


俺の為に奔走してくれた友がいる。愛する人がいる。


俺は大切な仲間を救いたい。そして幸福な未来へ共に歩みたい!


望みを想い願った時、俺の右手に一本の剣が現出した。


(これは……)


──◇ 剣の名はギルディアス。唯一無二の神聖剣だ


──◇ もうじき貴様は下界にて覚醒するであろう


──◇ 貴様は己の心を開放し、大切な者達の為にその剣を振るえ


──◇ その時、貴様達の未来は切り開かれるであろう


(わかりました)


──◇ さらばだ渇望の貝王、キドナイトよ! そして良き旅を!


(ルシフェル様、ありがとうございました。また会いましょう! )


良所の意識が下界へと移りはじめ、天上の園から彼の存在が消えた。



──◇ またお会うか……はやく帰ってこい。待っているぞディアール




                   ◇




森の家一階のリビングにてライラ達の報告を受けたディオールドが口を開いた。


「ふむ……あいわかった。それほどの規模と言う事は間違いなく邪神が関わっておる。本来ならばナイト殿を運び出し即時撤退を図るべきなのじゃが、そうすると帝国や王国へ甚大な被害がもたらされる可能性が高い」


ディオールドの言葉は皆の緊張感を高めた。それはつまり、この場に留まる事しか選択肢にないと言う事を意味していたからだ。


「これよりここ森の家にて籠城戦を開始する。籠城しつつ、敵亡者の軍団を撃滅させよ! 」


──おうっ!


ディオールドの激に皆覚悟を決める。だが誰一人悲壮感を抱いている者はいなかった。


様々な困難を乗り越え、信頼しあう仲間達がそこにいたからだ。


それからディオールドは、老体に似つかわしくない程の覇気を纏いながら指示を飛ばす。


「まず余が森の家を中心に聖属性の大結界を張り巡らす。そして──」


「ヘルダー、ジークフリード! 」


「「ははっ」」


「其方らは敵が最も多く殺到するであろう南側を黒竜と共に死守せよ! 」


「「承知っ! 」」


「グリード、クレイグ両名は東側の死守を頼むぞ! 」


「「了解! 」」


「北側の防衛には、オースロック! 王国の盾の力を存分に振るえ! 」


「ははっ! 」


「残る西側はソフィア殿下及び、シェルフェルコンビじゃ! 」


「了解したっ! 」


『あい! あい! あい! 』


「ヴォーン! 」


「そしてライラにベリア! 其方らは上空より遊軍として展開せよ! 戦況に応じ各所を補佐するのじゃ! 」


「ははっ! 」


『お爺ちゃんベリアにまかせるの! 』


指示をし終わったディオールドは全員に向け最後の激を飛ばす。


「よいか! 誰一人欠ける事無く、必ず守り抜いて見せるぞ! 出陣じゃぁあああああああああ! 」


──うぉおおおおおおおおおお!


こうして魔の森の籠城戦がはじまった。

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