大切にしたい思い
おはようございます、良所内人です。只今意識が覚醒しまして状況を確認しています。
どうやら2階のベットで寝ていたようだ。時刻は昼前くらいかな?
なにがあったんだっけか? うーん、あ、ドラゴンが襲ってきてそれから……
あぁそうだ、シェル! シェルはどうした!?
あせった俺は周りを見渡し、シェルがいない事がわかると慌てて一階へ駆け下りた。
まさか、と不安が募る。冷静に考えればいくら規格外の強さとは言え幼子に対しドラゴンを退治しろってのは常識外れも良い所だ。
──ダッダッダッダ
転がり落ちる勢いで一階に達した俺は開口一番叫ぶ。
「シェルー! 大丈夫かー!? 」
反応が無い
おいおいおい嘘だろ
まさか、まさか、ドラゴンに喰われたとかないだろ!?
自責の念が良所に押し寄せる。
俺があんな無茶な願いをしたばっかりに、あぁ、あぁ。
一階をくまなく探しても居なかった。絶望感が増していく俺はうつろな目で庭先に視線を向ける。
──
───
────
いた
庭に作った池の中心に、まるで私の場所よ!と言わんばかりにスヤスヤと寝ている。
キラキラと虹色に輝く真珠貝をベットにして。
あれ、おかしいな。目から涙が止まらない。地球にいた頃にも花粉症の季節以外ほぼ泣いたことのなかったのに。
それとなんだこの気持ちは。胸が暖かい。あったかくて、涙がでる。
あぁそうか
家族に対する真剣な思いって
こんな気持ちだったのか
あったかくて、うれしくて、それでいて涙がでてくる。あはは、おかしいし、ちょっとはずかしいな。
天涯孤独だった俺には経験できなかった初めての気持ちだ。
でも悪くない、悪くない。大切にしたい思いだ。
涙を拭いシェルへと駆け寄る
「おーいシェル、大丈夫か!? 」
『う~ん、ムニャムニャ』
どうやら大丈夫そうだ。よかった、本当によかった。無理に起こすのも悪いからそっとしておこう。
『はんばーぐぅ……ムニャムニャほうしゅ~ムニャムニャ』
あ
忘れてた。
そういえばハンバーグ三種の神器って言ったな俺。
よしよしよし。チーズ、テリヤキ、トマトソース、最高のハンバーグをお見舞いしてやるぜ!
寝ているシェルを起こさないよう、そっと一階リビングに移動した俺はさっそくハンバーグを用意した。
今回はお皿もアツアツ鉄板仕様の贅沢バージョン。それを3皿だしてっと。
接待で食べた高級ハンバーグをイメージして、至高のチーズ、テリヤキ、トマトのソースをかける。
ジュワァ~
アツアツの鉄板皿に具現化した3種類のハンバーグは、とびっきりの匂いを拡散させていく。
その匂いがシェルにも届いたのか、鼻をピクっとさせると勢いよく飛び起きる。
『はんばーーーーーーーぐっ! 』
起きたシェルはものすごい勢いで俺に突っ込んできた。
『おはよーないとー! ほーしゅー! はんばーぐ! あい! 』
「あはは、おはようシェル。本当に無事で良かった、良かった……」
『あい? 』
頭をなでながら、シェルが無事なのを実感しつつ目頭がまた熱くなるのを感じる。
『ないとー? なんでなくの? 』
「そりゃシェルが無事だったからだよ」
『シェルはつおいのー! とかげもぱくりなのー! 』
「そっかそっか、良かった」
ん?
パクり?
たべたの? とかげってドラゴンの事?
『ないとーふぉーくとすぷーん! シェルはんばーぐたべたい! あい! 』
あぁそうだな。今はハンバーグを食べて喜んでもらおう!
「わかった、ホラゆっくりたべるんだぞ」
『あい! 』
おいしそうにハンバーグを頬張るシェルを眺めつつ、コップをとりだしてオレンジジュースを注いであげる。
今夜は安心して寝れそうだ。




