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時をかけて祖母孝行  作者: あられうす
3/3

プロローグ後編:思わぬ形で思わぬ再開

翌日、自然と目が覚めた。

やけに体がすっきりしていて清々しい気分だ。

ばあちゃんに頑張れと背中を押されたような気分だった。

寝落ちしたときと全く同じ姿勢だったのでばあちゃんと会話したのは夢だったかもしれないが、それでもいい。



「さて・・・起きるか」


不思議と体が凝り固まったような感じはなく、心身ともに快調なようだ。

ささっと身支度を整え、朝食の用意をする。

俺は朝食を食べながらばあちゃんとの会話を思い出していた。



(・・・そういえば、ばあちゃん遺品整理がどうのこうのって言ってたな)


夢で取り留めのない会話をしている最中、ばあちゃんが自分の遺品整理を頼むと言っていたのを思い出す。

思い立ったが吉日、今日はばあちゃんの遺品整理をすることにした。

多分ではあるが何かしらあるのだろう。

実際ばあちゃんが生きていた頃はばあちゃんの私物を触る機会なんてなかったし、なんだろうな・・・。

そんなことを思いながら朝食を食べ終え片付けた後、ばあちゃんの部屋の整理に取り掛かった。



「しっかし、なんだね。ばあちゃんの私物の整理つってもどうすりゃいいのかね」


俺は何をどう片付けどうやって整理したらいいのか考えあぐねていた。

ばあちゃんの私物でいらなさそうなものがなさすぎるのだ。

普段ばあちゃんは装飾品で着飾ったりしないのでこれといった貴金属はない。

強いて言うなら爺ちゃんとの結婚指輪くらいか?

これは仏壇にでも添えとくとして・・・服か。

服も・・・うーん・・・。

ばあちゃんは普段和服着ているような人だし、これといって処分する服もないんだよなぁ。

まあ、衣装関係の入っている箪笥はこのままでいいだろう。

いずれでいいと思う。

ただでさえこの家に今いる人間は俺だけだしね。


さて、続いては・・・押し入れか。

バッと押し入れの襖を開く。

上段には寝具などの布団類が収められている。

まあ布団はいいか、このままで。

お次は下段。

押し入れの下段には何やら木箱が所狭しと収納されており、一先ず下段にある木箱をすべて出していく。


木箱を一つ一つ開いていくとその殆どが書類だった。

ああ、なるほど。

ばあちゃん地主だから土地とかマンション関係の書類なんだろうな。

これどうすっかなぁ・・・。

俺じゃマンション経営とか土地管理なんて芸当はできる自信がない。

不動屋さんに相談するしかねぇな。


それに株・・・○日空・・・JA○?の株か・・・うわ、どんだけ持ってんだよこれ。

株のことはさっぱりわからんけど株数の桁がおかしいことだけはわかる。


土地、マンション関係に結論を出し、株についても証券会社に聞く必要があるが、引き続き木箱内の整理を再開する。

そうして他の木箱を整理するうちに出てきたものは全部で5点。


①:株、土地、マンション関係の書類

②:アルバム

③:小さな鍵

④:昔のお金

⑤:遺書と通帳数冊に印鑑と角印。


だった。

書類はさて置き、まずはアルバム。

すごい、白黒写真だ。

お、これは家族写真か?ご丁寧に名前も書いてあるな。

軍服を着たおっさんに着物を着たおばちゃん・・・多分曾じいちゃんと曾ばあちゃんだろう。

で、その二人の前に写ってるのは・・・和子ばあちゃんと…美代子?

美代子って誰だ?ばあちゃんの妹か?

顔も似てることは似てるけど・・・ばあちゃん以上に気が強そうだ。

でも俺ってこの美代子って人知らねぇな・・・会ったこともないし・・・故人か?

大体ばあちゃんこの人のこと話してた覚えもないし・・・まあいいか。

それにしてもばあちゃんあんまり顔変わってないな。

目つきと髪型以外はそのまま幼くした感じだ。

写真のばあちゃんは優しそうな目つきをしている。

苦労したのかなぁ・・・俺の知ってるばあちゃんはもっと目つき鋭いし。


それにしてもなんだね・・・写真に写る皆が皆髪型がもっさりしている。

今みたいに髪型の種類が豊富ではなかった為だと思うが、それにしても芸がなさすぎる。

一言で言うとダサい。

多分これは現代人の観点なんだろうが、もっとないんだろうか・・・まあ多分戦時中だったからなのかなぁ。

曾じいちゃんなんて当たり障りのない短髪にするよか、いっそ坊主にしてライン入れたら相当イケメンになると思う。

曾ばあちゃんもそうだが、もっさりした髪の量を梳いたらもっと上品な奥様風にできると思う。

ばあちゃんとその妹は・・・せっかく幼いながらも目鼻立ちが整ってるのに髪型のせいで台無しになってる。


ほかの写真に目を移してみてもどれもこれももっさい髪型ばっかりで映っている。

なんというこう・・・美容師としての本能がウズウズする。

こうしたらもっとよくなるのに!とかそんな感じだ。

ああ、もったいね。

時代とは無情である。


それにしてもある日を境にぱたりと写真に写るのがばあちゃんだけとなっていることに気づいた。

曾じいちゃんと曾ばあちゃんはともかくとして妹さんまで写っていないのがちらほらある。

そしてそれくらいの時から今まで穏やかな目つきだったばあちゃんの目つきが鋭いものになっている不思議。

この写真と写真の間で何があったんだろうか・・・。


アルバムのページをめくるとそのページからはおそらくじいちゃんとの写真に変わり、赤ん坊と写真も写っているあたりでアルバムが終わる。

赤ん坊は多分父さんだろうな・・・。


アルバムはこのくらいにして次は・・・鍵か。

どこの鍵だろう?

いかにも古めかしい今時の鍵には見ない形をしている。

鍵の先がブリキのような形だ。

こんな鍵使うのってあったかな?

蔵の鍵にも似てるような気がしないでもないが・・・多分違うな。

どこの鍵だろうか。


次は・・・昔のお金か・・・にしてもすごい量だ。

押入れから引っ張り出す際、やけに重いしジャラジャラ音がするタワー型PC位の大きさの木箱から出てきたのがこれだ。

一万円札が聖徳太子・・・一円札?なんか七福神の誰かみたいなのとか見たことない紙幣が一杯ある。

柄の違う500円とか永楽通宝、和同開珎?小判もあるし。

ほぉ・・・、なんだこれ四角い小銭?路銀とか言って出てくるあれかな?

ばあちゃんに古銭収集なんて趣味あったっけ?


で、最後に・・・遺書か。

まあ、予想はしてなくもなかったが・・・。

ばあちゃんの遺書にざっと目を通してみるが、書かれている内容が非常に長い。

要約すると、ばあちゃんの持ってる土地やマンション等の資産は全部俺にやるからうまく使え。

ばあちゃんの私物やお金も好きにしろとのことだ。

そして最後に頑張って生きろと書いてあった。


ばあちゃんらしいというかなんというか・・・。

まあ、夢の中でばあちゃんが本当に言いたいことは聞けたと思うからよしとしよう。


まあ、この・・・桁のおかしい通帳に記帳されている額を見ると逆に使う気もなくなる。

できれば今後の人生は俺の力だけでやっていきたいと思う。

もし仮に使うとしたらそれは本当に困ったときにしよう。


さて、一応遺品整理してみたつもりではいるが・・・。

・・・ばあちゃん、捨てるものないよ?

ただ俺がやったのはばあちゃんの遺品「確認」をしただけとなった。

ばあちゃんの押し入れは宝箱だったかもしれないが、俺としては変な意味で魔窟のようにも思えた。

下手に手を出そうものならきっと堕落という呪いにかかる。


もう他にないだろうなと警戒しながら改めてばあちゃんの押し入れを確認する。

何もなければ木箱をもとのように収納して終わりだ。

・・・とおもったのだが、そうは問屋が卸さなかった。


押入れの中を覗き込んだ際、ふと気づいたのだが押入れの奥の床板の一部が凹んでいることに気づいた。

おそらくとっての役割を果たしているのだろうが、木箱を引っ張り出す時には気づかなかった。

なるほど、取っ手が凹んでいるために木箱が上に乗ると気づかないわけだ。

取っ手を握って動かしてみると丁度人一人分位が入れる面積の床板が外れた。


床板の下に手を差し伸べてみると空洞状になっており、押入れの中に潜り込まないと内部は確認できそうにない。

そこで俺は自身の周りに置かれている木箱を脇に寄せると押入れの中に潜り込んだ。

外した床板の中を確認すると石段で作られたような階段が家の地下へと続いていた。



「地下室?」


なんだろこれ?

何故ウチに地下に続く階段があるのかさっぱりわからなかった。

確かにウチは古い家だが、なんの用途でこんなものがあるんだろうか・・・。

しかもばあちゃんの部屋の押し入れに。

謎が謎を呼ぶ。


うーん・・・中を見ないとわからないけど、シェルターっぽいような・・・。

・・・ん?

シェルター?個人宅用防空壕的ななにかかな?

それならなんとか納得できる気がしないでもない。


とりあえず地下へ続く階段の先は真っ暗であったため、灯りを持って突入してみることにした。

スマホの灯りじゃ心許無いし・・・懐中電灯あったかな?

あ、そういえば昨年職場仲間とキャンプに行った際に買ったLEDランタンがあったはず。

俺は自室に戻り、ランタンを持って地下に潜り込んだ。


それにしても暗いな。

思いのほか階段が長く、家の2Fから1Fに降りるような距離じゃないように思う。

まあ、そうでないとシェルターの意味がないのかもしれない。

そうしておよそ3F~1Fへ降りるほどの段数を降りると、ちょっとした小部屋のような空間に出た。

小部屋にはアルミ製のような扉が1つ備え付けられていた。


扉のノブを捻ってみるが開く気配はなかった。

おそらく鍵がかかっているのだと思う。

鍵か、鍵・・・さっきばあちゃんの部屋で見つけた鍵かな?

それくらいしか思い当たる節がない。


俺は来た道を引き返し、再びばあちゃんの部屋へと戻ることにした。

鍵は先ほど入っていた木箱に戻したため、すぐに鍵をゲットした。

そして再び地下室へと引き返す。

というかこの鍵で開かなかったら思い当たる鍵がないぞ?

まあ、開かなかったら開かなかったでいいか。

と地下の階段を下りながらそんなふうに思っていたが、地下の扉に鍵を差し込み捻るとカチャっと音がした。


(お、開いた)


やっぱりこの鍵は地下室の鍵だったのか。

といっても自身もこの鍵が合うようなところが思い浮かばなかったのだから、そんなものなのかもしれない。

ドアノブを握り押してみるがドアは開かない。

あ、そうか。シェルターで押し扉だったら不都合があるのか。

万が一爆風の勢いでロックが契れたらドアが内側に吹っ飛んでしまう。

俺は地下室の入口である開扉を開けて地下室内へと入った。


ランタンの光を部屋全体に行き渡らせる。

地下室内はがらんどうとしており、床面には階段と同じような石が敷かれていた。

部屋の内部はひんやりとしていて、湿気はなさそうだ。

なんというか食料庫っぽいような気がしないでもないが・・・。


(ん、なんだあれ?)


ふと、視界の端に何かが置かれていることに気づいた。

ちょうど室内の壁側中央に祠と言っては大げさだが、神棚のようなものが壁棚に置かれていた。

神棚の前には丸い鏡のようなものが置かれていただけだった。

昔何かの本で見た銅鏡のようなデザインではあるものの、鏡面は普通の鏡のようだ。

ただ、長年そこに置かれていたためか鏡面部が霞んでいる。

神棚に飾ってあるくらいだから汚れているのはまずいんじゃないのかと思った。


神仏を信じているわけではないが、なんとなくばあちゃんの手前一言入れたほうがいいような気がする。

なので俺は神棚に「鏡綺麗にしときますね」と一言断りを入れて鏡を手にとった。

服の袖で鏡面部の汚れを綺麗に拭き取り、元の場所へと戻す。


(やっぱ鏡は映らないと鏡の役目果たさないもんな)


職場でもそうだが鏡は対象を移さないと意味をなさない。

美容師にとってハサミは仕事道具出るが鏡も同様に仕事道具だ。

あれがなければ完成とする髪型に近づくための確認が難しくなる。

そうして綺麗になった鏡を見て自己満足しているとLEDランタンの光が鏡に反射して壁のある一転を光らせた。

光の先を見てみると壁に溶け込んでいるかのように壁と同色のドアを見つけた。


(あれ、最初この部屋に入ったときランタンで部屋の中を照らしたけど、あんな扉あったっけ?)


不思議に思いながらも光が指し示した先に近づくとドアが取り付けられている。

この扉の先にまた先へと続く地下室があるかもなんて、なんとなく某RPGゲームのような展開になったら面白いなとは思っていたが、現実的ではない。

その扉もまたカギがかかっていたので持っていた鍵を使ってドアを開ける。

もちろん内開きだ。

ほーら、思ったとおりドアの先は上り階段となっていた。

神棚のある地下室は丁度、家下ど真ん中の辺りだ。

おそらくこのドアの先の階段を上ると降りてきた時の感じから台所の辺りに繋がっているのだと思う。


この歳になって柄にもなく冒険心をくすぐられたが、実際そんなもんだよなと苦笑する。

そんなことを思いながら行きと同じように階段を上ると天井に行き着いた。

多分台所の床板だろう。


(冒険終了~。お疲れ様でした。そのまま電源をお切りくださいってね)


床板に手を添え力を入れて持ち上げる。

あれ?という違和感。

この床板思いのほか・・・意外と重い?

ばあちゃんの部屋の隠し扉は意外とあっさり開いたものだが、こちらの扉(床板)は思いのほか開きにくい。

ある程度分厚い板でないと床が抜けたとき怪我をする。

そのための配慮なのだろうか?と思うもそれにしても重い。

固着しているんだろうか?と思いながらも更に力を込めた。

ギギッと床板の軋む音を耳にしてイけると判断し、「ソォイ!」と勢いよく床板を開け放った。



「うひゃぁ!?」



女性のような声がしたかと思うとドスンと重いものが落ちたかのような音がした。


・・・誰?


あれ、うちには俺以外誰もいないはずなんだけどな・・・。

咄嗟に俺は階段に身を潜める。

え、マジかよ・・・泥棒?

ちょ、勘弁して欲しいんだが・・・。

ポケットに手を当ててみるもスマホは入っていない。

スマホのライトじゃ心許ないと思い、部屋に置いてきたままだ。

武器は・・・右手に持ったLEDランタンのみ。

ダメだこれは武器にならない。

これは道具であって装備じゃない。


これはマズイ、非常にマズイ。

もし泥棒だったら素手で相手しなけりゃならんのか・・・?

何とかうまいことこの危機を脱出できないものだろうか・・・。


あ、しまった。

勢いよく床板を開け放ったために床板が開けっ放しのフルオープン状態になっている。

上から覗かれたらまずいことになりそうな予感がする。


先ほどの声(恐らく女性のもの)が「あいたたたた・・・」と言っている。

俺が床板を開け放ったから尻餅でもついたのだろうか。



「もぉ~・・・なんなの?いきなり床板が持ち上がるなんて・・・って、あれ?」


「え、床板が持ち上がるなんて・・・持ち上がるなんてこと・・・あるわけないよね?」


「・・・まさか・・・泥棒?どうしよう・・・美代子もいないし・・・どうしたら・・・」



なにやら尻餅を付いた女性泥棒が一人でブツブツ自答自問している声が聞こえるが・・・泥棒はあんただろう?

ゴソゴソと物音が聞こえる。

やはり覗き込む気満々ってことか。

やむなし・・・イチかバチかで覚悟決めるきゃないか。

俺は腹の力を込めて自身に喝を入れると目の前にいるであろう女性に向けて勢いよく顔を出した。



「「誰だ(ですか)!?」」



お互い目線がカチ合った。

目線がカチ合い、徐々に目の前の人物の全体像を伺う。

声のとおり女性だ。

四つん這いになって床下を覗こうとしたまま硬直している。

特徴はなんというか・・・特に髪型がもっさりしていて・・・何より服装が非常にもっさい。

服装・・・白くてエプロンみたいなのを着ている。

えっと・・・なんていったかな・・・割烹着だったかを着ている。

一言で言うなら・・・そう、昭和の匂いがする。

そして顔。

顔立ちが非常に整っている。

おそらく美人の部類だ。

ただ、髪型があまりにももっさりしているので残念な美人になっている。

でも・・・あれ、この顔・・・どっかで見たような?


そう、確か・・・さっきばあちゃんの部屋にあったアルバムで見たような気がする。

え、あれ?ちょ・・・え!?

服装もそうだが、このもっさりした髪型。

つい先ほどアルバムで見た若かりし頃のばあちゃんとあまりにも似ている。

似過ぎている。

俺は思わずポロっと口から言葉がこぼれてしまった。



「・・・ばあちゃん?」


「・・・はい?」



俺の言葉に思わず疑問形ではあるが返事をしてしまった人。

若かりし頃のばあちゃんがなぜか俺の目の前にいた。

素朴な疑問なんですが、ギャルゲとかのオープニングムービー始まるまでの話はプロローグに当たるんでしょうか。。。

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