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ニーナ・アリシュレイン

 突如姿を現した少女は日本語に慣れていないのだろうか、ぎこちない自己紹介をした。透き通る様な白い肌に淡く青みががった銀髪の長い髪をしているが、反面背丈は多々良さんと同じくらいの低さで小柄ではあるが……。


 どうにも彼女からはその容姿も相まってか、どこか人間離れした感じがある。いや、そもそもこんな女の子が一人で?


「ハラショー? つまり、ロシア語かしら」

 鈴羅さんが警戒した様子でぼそりと呟いていた。


「貴方はどうやってここまで来たのかしら? 武器らしい物も持っていない様だけど」

 強気の姿勢を崩さす、鈴羅は彼女に質問する。


「Ohー……ソウネ、ムツカシイ質問です」

「とても簡単な質問よ、難しくも何とも無いわ」


 俺と多々良さんは二人して顔を見合わせていた。というのも唐突に起きたできごとだった為、頭がついてきていないのだ。


「でも、1つだけ言えることアリマス」


「何かしら」

「ゲンゾウはよくやってくれました、キリカも」

 その、名前が出た途端に更に鈴羅さんの様子がみるみる変わっていく。


「おまえっ! 何故、私の父と母の名前を知っている」


 恐ろしい形相でニーナを睨み付ける鈴羅さん。


「エヒメは安全なバショ、避難してきてクダサイ。いったのワタシ」


「な、何が安全な場所よ……」

「そうだ、むちゃくちゃになってるじゃねぇか! どれだけが犠牲になったか、分かってんのかよ! あぁ!?」

 鈴羅さんより先につい言葉を挟んでしまった。怒りは素直には引いていかない。


いっそコイツを――。


「ソウ、だったら計画ドオリ」

 艶かしく笑う彼女からはそんな不穏な言葉が吐き出された。殺してやろうと素直に思ってしまった。


「どういうことですか、計画通りって」


 冷静さを失いかけそうになっている鈴羅と俺を制止させるべく、多々良さんが割って入り、ニーナと名乗る少女から答えが返って来るのを待っていた。


「Смерть」

 彼女はまた、聞きなれない言葉を発する。日本語で話さない辺り、かなり嫌味に聞こえてならない。


「そう……じゃあ、私達はまんまと罠に引っ掛かった訳ね」

「あ、あのー彼女はなんて言っていたんですか」

「そうだ、俺も気になるぞ鈴羅さん」


 二人して鈴羅さんに問う。


「Смертьの意味は死ってこと。つまる所、私達を殺しに来ましたって訳ね。問答無用で私達の敵ってこと」

 鈴羅さんがそう答えた後に彼女は嬉しそうに更に言葉を紡ぐ。


「хорошо、じゃあ~始めましょうか。血生臭い殺し合いを」

「あら、随分流暢に日本語を話せるのね」


「当たり前でしょ? 演技だものえ・ん・ぎ」

 そして、彼女の目は奴等と同じ様に紅く染まり始める。


「さぁさぁ、私を守りなさい。死して我らの為に生者を喰らう亡者達よ」


 まるで魔法を唱えるかの様に紡がれた言葉に呼応する形で奴等が集まり始める。そして、当の本人は襲われることもない。それだけでアイツはあちら側の存在であることを理解する。


 その現象に混じって俺達の後ろ側でも声がするのだ。


 振り返ると後ろには烏達の影響により絶命してしまった鈴羅の父と操縦士達が烏を体に突き刺したまま立ち上がっていた。


「そ、そんな! お父様」


 その姿を見てしまった鈴羅さんは変わり果てた父と操縦士達の姿に酷くショックを受けてしまっているように伺えた。

 その光景に目を奪われてしまい、警戒心が薄れていたことに気付く。


「前です! 峰島先輩!」


 鋭い声に釣られて咄嗟に前を見た瞬間、ドンッ! と、強い衝撃により少しよろめいてしまった。

「おわ!? ニーナなんとかさん、いってぇ! だろうが!」

 ぶつかってきた少女に慣れない手つきで拳銃を抜くが、奴等が直ぐ様に壁の様に立ち塞がる。


「くっそ、だめだ! 撃てねぇ!」

「それより! 後ろもです!!鈴羅さんの、お父さんと操縦士さんがいて」


 気弱く警戒を促す多々良さん……。しかし、この状況はまずい完全に囲まれている。


「後ろにいる亡者をコロセ!!そしたらたのしいタノシ! オニゴッコォ!」

 両手をパーっと広げてさも、楽しそうに最悪なことを言う少女にヘドが出そうになった。


「テメェ! ぜってぇ許さねぇ」


 壁が薄くなっているこの瞬間を俺は逃さずに発砲する!


 弾道は真っ直ぐ彼女に向かうが、彼女は咄嗟に奴等を引っ張りだし……。

 バシュ! と、言う鈍い音と共に意図も容易く弾丸を回避する。


「すみません、鈴羅先輩……殺りますよ」

 その後ろでは鈴羅と多々良さんが会話をしている。

「くっ……! 分かりました。では、私は操縦士二人を殺ります。緒ちゃんはお父様を……お願いします」

「はい」

 それと同時に二人は立ち向かう。俺もそれに便乗する形で後を追うが...

「……ッいけない! 全員回避!」


 多々良さんの張り詰めた声に反応して俺はしゃがみ込む。


 その瞬間に――


  凄まじい連謝音が鳴り響き、ランダムに撃ち込まれた弾丸はニーナの作った壁達にも、無作為に鉛玉が降り注ぎ揉みくちゃになっている。

 暫くした後に撃ち尽くした様子の鈴羅の父であった者へ、今度は多々良さんが反撃の狼煙を下ろす。


「はい、今までご苦労様。バイバイ」


 刀を美しく抜刀し、鈴羅の父であった者の首を瞬く間にしてザシュッ! と、言う生々しい音と共に刎ね落とす。対象を潰した多々良さんは速度を落とし、後続の鈴羅と交代する。


 そのままの勢いで、鈴羅さんも二本のククリで鮮やかに操縦士二人の二人の首を刎ねる。


「お父様、私は仲間と共に生き抜いて行きます」

 短く鈴羅はそう、告げる。


「そのまま走れぇ! 速度を落とすな」

 後ろから俺が二人を促しニーナとの距離を開いていく。


「別荘のガレージに2台ほどバイクがあるわ!!それを使って逃げるわよ」

 

 鈴羅さんの提案に俺と多々良さんは首を縦に振り、鈴羅さんにガレージへと案内して貰うこととなった。しかし、ことはそう簡単には行かなかった。恐らく、ここまでは奴も想定内だったのだろう。


「おい、うっそだろあれ!」


 ガレージを目前としている最中で前方には2メートルを越える大きな化け物が立ちはだかる。


 しかも、その横には……。


「フゥ~、アブナイあぶない。やぁっと追いついたぁ☆」

 ニーナ・アリシュレインが不気味に笑っていた。


「貴方、一体どうやって……」

「おいおい、マジかよ。ここまできたのによぉ~」

「私は亡者を操る者、周囲の亡者達は瞬く間に私の玩具オモチャ)になる。すなわち、亡者がいる限り私に死角はないのヨ!」


 そんな事を口走るニーナに対して鈴羅が質問をする。


「感染者は亡者と言うことかしら」

「えぇ、感染した者は亡者と呼ばれるわ」

 淡々と質問に答えるニーナ、それに対して更に鈴羅さんは問かける。


「では、貴方は何者? 亡者なのかしら?」


「正解と言えば正解だし不正解と言えば不正解、私はマザーによって産み出された亡者の感染源とも言える因子の誓生因子せいしょういんし)の適合者の一人よ。これは偉大なる力!」

「適合者? せいしょういんし? マザーとは何なのよ」


「もしここで貴方達が逃げ切り、私ともう一度出会えれば続きを教えてあげる。じっくりとイタブルのが私のシュミなの」

 試すように、ニッコリと笑う彼女はそれを合図に大きな亡者と共に此方に向かって来る。


「дуб(ドゥブ)は男を殺りなさい私は女二人を殺るから」

 彼女はそう言って勢力を2つに分ける。


「オークか、ラテン語では悪魔、又は架空の生物の名前、全くもって本当に現実味が無い世界に一瞬にしてなったわ」

「じゃあ、峰島にはそのオークを任せたわよ」

 鈴羅が軽くそう言うと多々良さんもヒョッコリと現れて


「もやしく? 死なない様にせいぜい頑張りなよぉ」

 と、挑発的に言ってきので俺もすかさずに元気に反論をする。


「おめぇらこそ殺られんなよ! コノヤロー!」

 いたずらっぽく言ってやる。そして、二手に別れて戦闘が繰り広げられる。


「さぁてと、ほんじゃあまぁサクッと死にさらせや! クソヤロウ!」

 気合い十分に拳銃を構えてオークと名付けられた亡者に牙を剥く!


「さぁ、2対1でも貴方は勝てるかしら?」

「言っておくけど私達は――」


 多々良さんと鈴羅の二人組は同時に、ニーナ・アリシュレインに対して力強く対抗する。


「容赦しないわ」


 息もピッタリで二人同時にそう告げる。


「フフッ! Начало боя(戦いの始まり)デスネ♪」


~ニーナ・アリシュレイン~ END To be continued

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