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信号弾

鍵っ子です。


実は海鮮が好きです。

 格好良く、別れを告げた癖に結局の所は締まりの悪い展開を作ってしまった。


「どうするもこうするも……」

「も、戻るしかないですね」

 俺自身が若干の狼狽をしていたのだが、彼女自身の覚悟はすぐにできていたようだった。

「それしかないな! 全速力で来た道を戻る!」

「分かりました!」

 カザガサとリュックに詰めた銃を引き抜き、直ぐ様背負い直すと既に多々良は先を走っていた。

「うぉ!? マジかよ」

 守るべき相手に先を越されては意味がない。そもそも、俺の方が弱いので囮くらいの役には立たないといけない。

 大きく息を吸い込み、思い切り右足で地面を蹴り上げて走り出す。


 ものの数秒で、多々良の隣に追いつく。

「わ! 峰島先輩、走るの速いんですね」

「お? まぁな! 意外と速かったりすんだよねー」

 と、言いながらも別れた地点からはさほど離れていなかったこともあり、目的地はすぐに迫る。

 近づく程に銃声は大きくなり、それと同時に俺の足は震えが出でいた。


 だが、そんな震えを見せる訳にはいかない!

「おおぉらあああああああ!」

 自身の恐怖も躊躇いも抑え込んで、見知った後ろ姿にめがけてとっしんする。



 と、同時に――

「なっ!?」

「おまっ!?」

 走り抜けた勢いを一気にブレーキさせた代償につんのめるが、そんなのはお構いなしだ!

「何発でもお見舞いしてやらァ!」

 攻め入る亡者の軍勢一体に照準を合わせて引き金を引く、狙うは頭部のみだ。


 バスンッ! と、衝撃が走ると同時に小気味よい音を立てて、薬莢がカツンカツンと跳ねては地面で踊る。 

 放たれた弾丸は対象目掛けてものの見事にクリーンヒットを叩き出す。


「す……すまーーん! 言いつけ守れなかった! だって、武器をリュックに詰めたままだったから!」

「かぁ~っ! ったく! わざわざ地獄に飛び込むかねーフツーさ!」

「全くもって、阿呆のやることね! でも来たのならしょうがないわ!」

「あ、あのぅ! 私も……私も戦えます!」

 半ば呆れたご様子だが、俺と多々良の選択はこれが答えだ。

「多々良嬢を守るのが最優先だって言っただろー! 葉瑠! 責任もって、全員で姫さんだけを守れ!」

「あぁ! 多々良っちの出番はねぇぜ! まかせろ」

 ニヤリと笑みを浮かべる母と目があった。

「野郎ども! 陣形を変更だ! バカ息子と多々良姫を守る方円に広がれ!」

 見事にシンクロした動きで俺と多々良さんを中心に囲い込む形で戦闘が再開される。

「葉瑠! お前はあたしらが庇い切れないお残しだけに集中しろ! 近接戦闘マシーンだけど姫はこっちへとりあえず、銃も弾薬もぜぇ~~~~~んぶ放り投げてくれ」

「分かったぜ! 外さない様にやってやる!」

「わ、わかりました!」

「さぁ……第二波のご到着よ」

「まだだ! まだまだ! ギリギリまで辛抱してぇ……」


 押し寄せる波の様な亡者の軍勢はなんの疑いもなく、一直線にこちらを目指す。距離はみるみる縮まり、奴らは臆することなど既に放棄している。


 距離にして約40……30……にじゅ――。


「今だ! 奴らの隙だらけの足に目掛けて一斉射撃!」

 鳴り響く重厚な爆裂音、飛散る血飛沫と共に本能だけにされた化け物が転倒しながらも尚、手を伸ばす。

「良いぞぉー! お前らぁ! 最高だああぁ!」

「でもコレ、今は何とかなるけど! 本格的に時間がなあいわ! 夜が来る!」

「んなこと! 言われなくても分かってんだよ! こちとら脳みそフル回転だ!」

 軍勢の数は軽く見積もっても三桁は超えている。地面に転がり散らかっている奴らと最初の戦闘合図からしても、俺達が去った数分で第一波が襲来し、ものの数分で第二波が襲来している。


 この情報だけで容易に想像ができる。


「あ、あぁ……もう、次が! もう来てる」

「クソっ! 正面の数が多い! 陣形を横に展開する!」

「横に展開って……それじゃあ、サイドはどう対処するの!?」

「前方に四人ずつで横陣を組み、交代をしてリロード時間を稼ぎながら後ろに下がる! そして、一応だが信号弾を放つ! 一回目のローテーションが済んだらお前が撃て! バカ息子」

「分かった!」


 了承をした後に、ごつい形をした銃を母親が放り投げる。何とか落とさずにキャッチをする。


「赤を三発、後に反応があれば黄色を一発撃てばいい! 装填は同じだ! コイツも渡す!」

 間髪入れずに四発の信号弾も投げ渡される。

「おわっ!?」

「さぁ、まずは赤を三発だけ打ち上げろ!」

「まか! せろ!」


 言われるがままに、三発の信号弾を連続で打ち上げる。途中で離脱したニーナに向けたメッセージではあるのだろうが……。


「くっそ! 気づいてるならば反応をしやがれよ! 割りとピンチも良いとこなんだからな!」

 母親の投げつける様な言葉に呼応する形で、緑の信号弾が打ち上がる。


「あっ……上がった! 上がったぞ! 母さん!」

「いよぉしっ! そのまま、続けて黄色を上げろ!」


 その言葉に返事をするよりも先に、弾を装填し準備する。


「いくぞぉー!」

「あぁ、そしたらこっちも一仕事くらいはしましょうかね〜! っとな!」


 頭上高くに片手を上げ、最後の信号弾を発射すると同時に俺の母親が不意に、多々良へ向けて視線を移す。


 その体感は、僅か三秒足らずの刹那――。


「悪いな、姫さん……今のアンタはお呼びじゃない、突然の不意打ちでワリィが……」

「なっ!?」

「えっ?」


 俺と多々良の短い言葉だけが、辛うじて反応をしている。


 が、間に合わない。


「死んでくれ」


 放たれた信号弾と向けられた弾丸はピッタリ同じタイミングで、撃ち出される。


 

 一発の弾丸は……真っ直ぐに多々良目掛けて牙を剥く。


~信号弾~ END To be continued

長らく、お待たせいたしました!! 

この度、DW以外にも実は新作連載を一つ始めちゃいましてどうしても書きたーーーーい! と、なった作品で、ジャンルはバチバチの恋愛物です!


長い目で、こちらも並行して宜しくお願い致します。

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