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新たなる存在:ニーナ編

鈴羅達を無事に引き剥がすことはできた。だか、あの時点で私が導き出した答えは間違いだったのかも知れない。


雨の様に降り注いでいた弾丸を何とか凌ぎはしたものの、私は窮地に追い込まれている。流石に全てを防ぐことは不可能な話だ。

左足の太ももを撃ち抜かれてしまった。


「流石のお前でも、四人を相手にするのは無理ってか!?」

「どうかしらネ、私の作戦かもしれないヨ?」

「上等だ! 亡者もいない! テメーは俺等の弾丸で既に負傷中、まだ隠し玉がある……ってか!?」


勝算はある、おそらく私の傍から離れている闇夜の助太刀が必須条件だ。


 重要なのは如何にして私が時間を稼げるか……。

 

 もう一つ私が勝利するのであれば、『夜』まで生きる……。


 どちらにせよ私自身が生きる為の時間稼ぎが必須であるのだが――


「あーそうそう、話していなかったのだけど~このまま聞かずに私を射殺しても構わないヨ」

「問答無用だ!」

「あーそう、釣れない奴らで何の面白みもないわネ」


 とにかく、引き延ばしで奴らが動く行為をさせない。できる限りの時間を奪い続ける。


「言い忘れていたけど、このスカイツリーには私のように誓生因子を見事に適合させた人物がマザーと共に引っ付いている」

「安心しろ! そいつ諸共生首さらしてもうすぐやってくる――」


 ブロロロロ!


 突如として、ヘリコプターが姿を晒し轟音と共に上空へと上がっていく。

「な!? 一体どこから!!どういうことだ!!何故スカイツリーから!?」


 豪風を撒き散らしながら、私たちの届かない場所を優雅に舞う。

「くそ野郎! 二名であのヘリを撃墜させろ! 俺とお前でニーナを狩る!」


 何かを話したのか、二名はヘリに向かって射撃を開始し、残りの半数は私のいる方向へ走ってくる。


「ナイス、ヘリね! 今回ばかりは助かったわ」


 奴らがじきにスカイツリーを目指してやってくることは確実、それだけではない。

 そうだ、すっかり忘れていたが、ダイブする際にわざと離れた位置に降下した加賀美さんは何をしているのだろうか……。


 そうそうヘリなど飛ばないし、敵の注意も散漫になっている。このタイミングで姿を出さなければ……。


「さぁ、隠れてるならすぐに援護に来て頂戴ネ!」


 そんな願いと共に数匹の亡者が眼を真っ赤にしてこちらに向かってくる。ほんっと『都合の良いとき』だけ上手いタイミングでやってくる。いい性格をしている奴だ。


「ダメだぁ! 止まれ! ニーナも厄介だが優先順位を変更しろ! 奴らのお出ましだ!」


「うううううううううううううわああああああああああああ! 助けてくださーーーーい!」


 叫びながら亡者の追跡を逃れようと必死な2人の『生存者』が走りながら助けを乞う。



「お、おいおいおいおいおい! うっそだろ、信じられない! 生存者いるだと!? 亡者に……あーーーーくそっ! どちらにせよ迷っている暇はない! 生存者を撃たないように亡者を狩れ!」


「なーーーんちゃって! 闇夜ちゃん~一気に畳みかけてくよ~ん?」

「うんうん。わかってる……よ! それよりあんまデカい声で演技を台無しにしないでよね?」


 前方で逃げ回っていた「フリ」をしていた二人は謎の精鋭部隊目掛けて一心に走っていく。

 当然、奴らは彼女たちの存在を知らない、一生懸命に私側の味方を守ってくれることだろう。


「大丈夫だ! 早くこっちに……ってどういうことだ? 夜でもないのに何でこいつら――」


 明らかに身体能力を向上させた亡者共が獲物をしっかりと捕らえている。


「後方部隊! すぐに対象を変更せよ! 正面の亡者共を蹴散らす! 生存者を優先的に保護し、速やかに安全を確保せよ」


 しばらくして、息を切らしながら加賀美さんと闇夜が無事に保護された。チラリと私の視界に闇夜の姿を捉えたが、フードを被って目立つ白髪を隠している様だ。

 

 と、同時に覚醒した亡者が凄まじい勢いでなだれ込む。


 「き、キリがねぇ……くっそがぁああああ!」


 これでようやく準備が整った。


 私は物陰から腕を伸ばし、彼女たちに合図する。

 走り狂う亡者は静止し、ただ一点を見つめたまま声を荒げる。


「しまっ――」


「は~い、おつかれちゃんでした」

「ごめんね~大人しくしててよ、ひょっとこのおにぃさん達、僕はね――」


 被っていたフードを外し、闇夜がニタニタと紅い眼を見せつけるように挑発する。


「貴様! ニーナの差し金か」


 一か所に固まる様に寄せ集められた四名は加賀美さんと闇夜が挟み込む形で動きを封じる。

 瞬く間にして状況は一変し、こちらの優勢となる。


「まぁ、お互い様って感じだよねぇ~ハイハイ。動かない動かない」

「大体さぁ、おかしいって思わなかったの? 傍から見れば子供と女子が大群引き連れて逃げ回るってさ……。ありえなくない?ねぇねぇ!? 今どんな気持ち?」


「は……ははは! 見事だ! 恐れ入ったよ、だがなぁ! 我々もバカではないのだ、お前たちが一筋縄では行かないことも! 単純な連中でないことも分かっていた!」


 そんなことを口走ると同時に、お面男の一人が徐に何かを胸に突き刺した……。


「な!? まずい? なんかやらかしたよ!」

「いや説明より先に――」


 得体のしれない物を体内に打ち込むと同時に爆風が彼を包み込み、周囲の者を全て吹き飛ばす。


 近くにいた連中は声も出す暇もなくすっ飛び、周囲は蒸気に包まれる。


「どういうことだ、何を自分の体内に投与した!? 答えなさい! お面部隊!」


 私の問いに答える者はおらず、ただただ白煙に包まれた空間が広がる。

「加賀美! 闇夜? 無事ならば返事をしなさい!」


 そんな私の問いかけは虚しく響き渡るだけだった。


 そして――



「ぐがぁぁあああああああああああ! オボボッボボボボボぼ!」


「あからさま過ぎて嫌気がさすわネ……」


 次第に白煙は風に流され、少しずつ視界が拓けていく……。

 巨体の周りには、加賀美さんや闇夜を含めた5名が地面に転がって気を失っている。


「殺れ、亡者共」


 闇夜のお陰で能力を発揮していたが、気絶していては意味はない。ただの亡者を三体ほどぶつけに向かわせたが、鈍い音を立てて無残に息絶えた。


「どういうことだ? マザー達と同じように何らかの方法で肉体を改変する術を開発し、新たな兵器を生み出した……の?」


 しかし、巨体が動く様子はない……。

 が、もはや人ではないということも容易に理解できる。


 薄っすらと映し出していた周囲は完全に晴れ――。


「あぁ……なるほどネ、ほんっと最悪だわ」


 ~新たなる存在:ニーナ編~ END To be continued


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