凶器は僕らに牙を剥く
~峰島達降下作戦前の出来事~
ついに、僕達は奴らが生まれた原因かつ頭のイカれた研究に没頭した連中の本拠地を見つけ出した。
今回の作戦は僕を中心にした正攻法の殴り込み作戦を行い、一気に大元まで抹殺するだけの単純戦闘となる。まぁ、簡単かと言われればそんな訳はなく、犠牲者は出ると踏んでいるがそれでも価値のある強行だ。
「いつだって準備万端だよ、派手に乗り込もうか!!」
「分かりました」
総勢20名の精鋭部隊は5つのグループに分かれ、スカイツリー攻略を目論む。
大勢の部下を引き連れて、僕はこの部隊の核とも言える第1部隊の所属を務めている。
「第5部隊はスカイツリーに誰も侵入させないようにしてくれ」
「了解だ!! 中でくたばんじゃねぇぞ!!」
「なめんじゃねぇ!! おめぇらこそ地面にへばりつくんじゃねぇぞ!!」
軽く拳を合わせて、互いの健闘を祈りながら残りの4部隊が内部へ侵入する。
「不気味な位に静かで、もぬけの殻……」
「じゃあ、ないね」
数十体の亡者が侵入するや否や、お出迎えだ。
「第3部隊!! 練習相手にはもってこいだ、存分に遊んでやれ」
「了解」
凄まじい速さで4名が亡者目掛けて走り抜けていく、それぞれ4名の手には真っ青な刀身が艶かしく輝きを放つ。
「力は使うな!! 我らの圧倒的な身体能力の前に奴らを血祭り(パーティー)に招待しましょうか」
「お任せあれ!!」
戦闘を走る1名が亡者の中心辺りに飛び込む。
ものの数秒で亡者の死体が完成する。それに続いて他のメンツも雑草を抜くかのようにサクサク処理をしていく。彼女たちの率いる部隊は、迷うことなく亡者の頭部を跳ね飛ばす。
「進め!! 道が開いたぞ!!」
いともたやすく亡者の群れは無残に地を這いつくばり二度と動かない。奴らを退けた先に地下へと続くであろう重厚な扉が姿を現す。
「おら、期待の新人クンの出番だよ」
「わかってます」
軽く息を整えて、自分の髪の毛を1本抜き取り力の限り振り抜く。
スパンッ!!
ズガガガガガーーーーーン!!!!!!!!!!!!!
銀色に輝く1本の線は重厚な扉をたやすく破壊する。どれだけ重厚で、例えダイヤの様に硬いとしてもそんな物は意味をなさない。
「さっすがぁーーー!!」
「早くいきます――」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
破壊した途端にバカでかい警報音が鳴り響く。予想していたできごとではあったが、最低限のセキュリティは女王様も備え付けていた様だ。
「ちぇ~、警備がざるだからないと思ったけどやっぱあったかー」
「言ってる場合じゃない!! 来るぞ!!」
「慢心の女王の割にはやるじゃない!!」
「自分だけの世界を造り、苟且の理想郷を造り上げて生者を窮地に陥れる」
ならば、そんなくだらない理想郷を潰さなければならない。歪にゆがんだ理想を押しつけると言うなら、僕たちはそれを根っこから引き千切ってやる。
「現実を叩きつけてやれ!! 奴が作った欠陥だらけの誓生因子を打ち砕いてやろう」
「僕らもそれに近い物は投与しているんだし、打ち砕くってなると僕らも死ぬよ?」
「バカ言ってんじゃねぇ!! 死ぬのはあっちだあっち!!」
指差す先には大小様々な亡者たちが僕らを待ち構えている。
「言っとくが、俺達は新人クンを除いて奴らの因子に対する抵抗力がない!! つまり噛まれた時点でリミッターを解除してより多くの亡者を巻き込んで死んでもらうからな!!」
全員がその言葉に頷き、真っ青な刀身を鞘から引き抜く。それを合図に僕は亡者達の前に仁王立ちを決め込む。
「やぁ!! みんな顔色がわるいよ?」
そんなジョークに付き合う輩もいない腐った連中に慈悲も容赦もない一閃を叩き込む。
有無も言わせない、残酷であっさりとした一振りだけで数十体の血と死体の山が作り上げられる。頭部と胴体がキレイに分かれて頭は中を舞い、くるくると楽しそうにお散歩する。
胴体は行き場を失い、皆が揃って愉快にダンスをこぞって嗜むのだがセンスに欠けるらしく、数秒で転倒しては無様に這いつくばってそのまま二度と起き上がらくなってしまう。なんて律儀だろうか。
「おいおいおい!! やりすぎんな!!頭にでもなられたら面倒だ!!遅れを取るな!!」
その様子をみてすぐに全員が亡者に攻め込んで行く。1人、2人、また1人とその場に死んで逝く亡者たち、次第にバラバラに歩みを進めていた亡者たちはペースダウンをし始め、動きが鈍りだす。
「新人!! もう一発かませ!!!」
「下がってくださいね!!!!」
キレイにまとまった亡者たちへ、プレゼントをあげなければいけないだろう。
キラキラと光りに反射して銀色に輝く細い武器を再び振りかざす――。
円を描き捉え囲むように、優雅に素早く手早く……紅色の飛沫と共にまとめて朽ちる。
最高のプレゼントだろう? 安らかに彷徨うことなく朽ちることができるのは――。
「残党を撃ち殺せ!!」
すかさず後方から鉛弾が喜々として飛んでいく。
鉛弾から幾つもの薬莢が吐き出され、気がつけば立ちふさがるものはいなくなり早くも土になろうとしている死体がゴロゴロ埋め尽くされている。
「被害は?」
「全員無傷です」
「では、予定通りこのまま無理やり突破します」
「第1部隊を筆頭にエレベーターに2部隊ずつで降下できるとこまで降りる」
「第1第2はすぐに乗り込む準備を、その後に他の2部隊も降りるように」
地下5階まで表示されている。ここまで降りたら更に地下へ降りることになるか……早く決着がつくか、どちらにせよ進む以外に道はない。
何事もなく、地下5階に到達を果たす。
「この先から暗くなるなぁ」
「罠の可能性も捨てない様にしましょう」
慎重に進んで行く――。
唐突にして薄暗い道にまばゆい光が放たれる。
「ウッ!! 全員防御態勢を――」
大量に注がれた光に目がくらみ、部隊の隊列がわずかに崩れた。
ピシュッ!!
鋭い物が僕の頬をかすめると同時に――
「アガッ!!!」
「ゴフッ!! ゴポッ」
1人は心臓、1人は喉元に大きなナイフが生えていた。
「くそがぁ!! 弾け!! 新人!!」
そんな2人を看取る暇もなく2撃目が放たれている。
言われるがままに、ナイフを切り落とす。
「てめぇーーーか!! 悪趣味なナイフを飛ばしやがって!!」
薄暗かった空間にぽっかりと用意されたように設けられた広い空間にポツンと人影があった。
「おーーーーーや!! おやぁ!!!こぉれはこれは、愛に満たされず獣の様に盛る輩でぇーーーすね」
「てめーの第一印象なんて聞いちゃいねぇんだよ!!」
「ハハッ!! これはこれはしっけいしっけい!!」
やけにパンチの効いた人物がゴホンッ!! と大げさに咳払いをする。
「お初にお目にかかりますぅ~でしょうねッ!! わたくしめぇえええの名は――」
凄まじい速さで、上空から俺達は落ちていく。高度はどんどん下がり数分後にはパラシュートが花開く。
「おわッ!?」
「どうしたぁ!? バカ息子!!」
「な、なんでもねぇよ!!」
目的地のスカイツリーが近くなっていく、と同時に辺りの景色もどんどん変わっていくのだが――。
「やっぱりだ!! スカイツリーの前に誰か居る!!」
「あぁん!! やっぱそうか」
無事、スカツリー付近に降り立った瞬間だった。
「貴様ら!! 何者だ!!そこから一歩でも動けば死は免れんぞ!!」
見るからに怪しい連中が銃を構えてこちらに歩み寄ってくる。重装備は勿論のこと、異彩を放っているのがひょっとこのお面を被っているということだ。
「まぁ、待て!! 話をしようじゃないか!!」
「黙れ!! 今すぐ両手を頭に上げろ!!」
母親の話にも聞く耳を持たない、味方か敵か?判別不能であると同時にやはり嵌められたのではないかと言う不安が一気に押し寄せてくる。
「よぉーし、そのまま跪け!! ん?お、おまえは!!!」
4名の銃口が一点に集る。
「マザー一味の増援か!! ニーナ・アリシュレインとはなぁ!?」
奴らはすんなりとその名を口にする。マザーの存在を知っている者は俺達だけではないらしい。
「あなた達は何者かしら? 私の名前をなぜ知っている」
「腐った連中に話すことはねぇなぁ!? くたばり散らせや!!」
「いかん!! 退くぞ――」
ズバババババババッ!!!!!
母親の声を遮るように銃が火を噴く!!
鉛が無残に俺達へ向けて容赦なく降り注ぐ、冗談ではない!! こんな、こんなところで死ねない!!
無我夢中で、周りを見ることなく一心不乱に誰もがその場を離れるために駆け抜ける。
無残な声が耳にこびりつく、叫びや嗚咽となって右も左も苦しみの音が支配する。
「だっ!!! はッ!! はッ!! なん――でこんな!!!」
死に物狂いで物陰に潜む、追手の気配もなし。周囲を確認する。
「母親に鈴羅、多々良さんも――いるな!! はぁはぁ……」
息を切らしながら必死に状況を整理する。母親の部隊メンバーはおおよそ半分に減少し射殺されてしまった。そして、銃口を向けられたニーナは――。
戦っていた。
「馬鹿野郎!!!! なんで立ち向かうんだよ!!!お前が戦う必要なんて……」
隣にいた母親がギュッと俺の肩を握る。
「いッ!!! いてぇ!!」
「叫ぶな冷静になれ、ニーナ自身が囮となり私達が逃げる。それによって、私達への狙いが雑になって生き延びれたんだ。このチャンスを活かせ」
「い、活かすって言っても……」
周りには亡者の姿もない、ニーナがいくら強いと言えど相手はマザーの根城を襲撃できるほどの実力者、仮に勝てたとしてもただでは済まされない。
「打開策を練らないとまずいな……下手すりゃここで全員が死んでしまうぞ」
「んなこと言われても!!」
「いいか? 私が言える方法は2つだ。ニーナを犠牲に逃走するか、彼女を救うかの二択だ」
唐突に二択の選択肢を迫られる。冷静になりつつある頭の中で1つの疑問も生まれた。
「そ、そうだ!! 加賀美さんの姿がないぞ!!彼女は?」
「彼女は元々ここより少し離れた位置に降りたはずだ、つまり奴らが知らない要素の1つだろうな」
現状、この会話を聞いているのは俺と母親だけだ。つまり、行動するならば母親と俺の連携が必須となる。姿を隠して潜んでいることを見越して加賀美さんの加勢を期待するか。
「おれは――」
もしくはこのまま逃げてしまおうか。
~凶器は僕らに牙を剥く~ END To be continued




