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水面下の攻防

 大分、更新する頻度がのろまの亀さんで申し訳ないです!! あ、後はあけましておめでとうございます!今後の更新頻度につきましては週一ペースでやっていこうと思いますので宜しくお願い致します。

 廃車となり二度とライトを輝かせることのない自動車、今となっては意味すら持たない標識や信号機を無意識の内に見つめながら俺は亡者達からの猛攻を受けない非日常の道を堂々と歩く。

 本来であれば車はエンジンを吹かして走行し、信号は止めどなく三色をチカチカと元気に変更させていた……それが、(日常)の筈なのだ。

 気がつけば、日々は命がけで目を疑う様なことばかりが何度も起こる。

 そして今この瞬間も……妙に違った意味で恐怖が押し寄せてくる。更に付け加えれば、敵の立場であるニーナが共に行動をしてくること自体が俺には納得がいかないし、自分の両親でさえ信用できない。

「Oh……さっきからずーーーっとこわーい顔をしてるネ」

「当たり前だろ!? 自分の立場を知っててよくもまぁ、平気な顔でそんなことが言えるよな。少しは空気読めよ」

「そうね、話しかけて悪かったわ。そうよね、話したくないわよね」

 海外被れの影響だろうか、鈍感な俺でもニーナがションボリとしているのは声のトーンや表情で汲み取ることができた。

「もっと違う出会い方をしていれば、こうはならなかったかもな」

 変に煽ることも命取りとなる。逆撫でし過ぎないように皮肉を言うならこれぐらいだろうか。

「え?……あ、あぁ、そうかも知れなかったネ」

 ニーナの反応に若干の違和感を覚えたが、突っ込むまでには至らなかった。正直、あまり話を弾ませる気にもならなかった。

 けれど、亡者に襲われずここまで来れているのは悔しいがニーナのおかげである。ニーナやマザーはどうしてここまで人間を殲滅することに執着しているのだろうか。

 そして、鈴羅や俺の両親はどうしてこんな訳の分からない組織の言いなりとなっているのだろうか。


 謎となっている部分が更に謎を生み出して、もはや考えることすらアホらしくなってくる。俺には踏み入ることができない大きな……何かが道を塞いだままで立ちはだかっている。

「悪いけどあまり話したくない」

「わかってる」

 そっぽを向いたままのニーナとはそのまま、喋ることはなかった。






 

 緊張感に包まれたまま目的地である松山空港に到着し、広い空港の敷地内では何十人もの人たちがゴツい装備と生命を刈り取ることだけに特化した銃が歩くたびにガシャガシャと音を立てている。

 本来の日本であればありえない光景が普通に映し出されている。

「よぉーし!! お前らはさっさと離陸準備をしろ!! 夫には負けん」

「ヨシッ! 防衛部隊の諸君はすぐにヘリに乗り込んでくれ! 妻に負けてしまう」

  無駄話は一切なく、目まぐるしく準備が進められている。


 そんな光景をボーッと眺めている内に、気がつけば多々良さんは飲み物を貰って来ると言い立ち去ってしまい、ニーナと鈴羅さんは俺の両親と共にその場をすぐに離れている。


 ただ、1人だけ俺の側でニタニタと不気味な笑みを浮かべながら何かを言いたげにしているヤツがいた。

  確か、コイツは生首野郎との熾烈な戦いの中で突如現れたはずだ。遠目からでは良く見れた物ではなかったが、ニーナ絡みのやべーやつなのは確かだ。


「ね~、おにーさん?」

 あからさまに何かを企んだネットリとした声で俺の腹をツンツンとつついてきた。

「わかったから、その腹をツンツンするのはやめろ」

「え? これだけの行動で!?おにーさんも化け物なのかなぁ?」

「訂正しよう、分からんが腹をツンツンするな!」

 体をプルプルと震わせて必死に笑いを堪えているご様子だ。

「んで、俺に何の様だ? ガキンチョ」

「おにーさんってさ、本当に筋金入りの鈍感だよね」


 は? 出会って早々に何を言い出すかと思えば、なんだコイツ。


「出会ってすぐの初めましてさんに、んなこと言われてたまるか」

「いや、それはおにーさんからしてみると初めましてかもだけどさ、ボク視点から見ると話は違うんじゃないかな~やっぱ」

「そんな話がしたいのか?」


 ウダウダと話すつもりはない。

「いや、違うよ。おにーさんにはね~早く過去の記憶を思い出して欲しいんだよ」

「言われなくても過去の記憶はある!! 思い出すもなにもないわ!」

「本当に?」

 ガキンチョに念押しされる必要は全くない。


「小学1年生の頃はなん組にいた?」

「1年2組だよ!」

「中学は?」

「はぁ、1年B組に2年C組、3年B組だ」

「ウワァ~、気持ち悪い程に無駄な記憶だけはあるんだね」

 しばき倒そうかと思ったが、ニーナの手下には下手に手出しができない。ここは先輩としてグッと堪えるしかない。

「じゃあさ――」


 1歩前に立ちはだかる様にしてガキンチョが俺の前に現れ、クルリと踵を返す。


「なんで車に轢かれた時のエピソードは消えてるのかなー」


 コイツ……一体何者だ。確かに親とそんな会話をした。そして、俺はそのできごとをしらない。

「適当抜かしてその場を凌ぐなんてことはできねーって教えてあげたから感謝して欲しいかなーやっぱ」

「なんで、俺の知らない記憶をお前が知ってるんだよ」

「知らなくてもさ、知りたくなくても入ってしまう情報ってあるんだよねーそうでしょ?おにーさん?」

  耳を塞ぎたいこと、嫌なこと、陰口なんて物は確かにいくら小さな声で話しているつもりでも、聞き取れてしまう。自分には必要ない筈のあれやこれに限って、人間は知らず知らずに記憶する。


 それが、どれだけ残酷な物であっても。


 今の自分だって、知らず知らずに色んな話に首を突っ込んでいる。

 今、信じることができる人は誰だ?裏切り者は――。

「あー、あのさぁー誰を信じるとか信じないとか裏切りものとかってさ」

「なっ!?」

 まさに考えていたことをガキンチョがさも当然の様に語る。


「おにーさん自身はさ? 生きてるんでしょ?」

「ま、まぁな」

「逆に聞くけどさ、おにーさんは誰に裏切りを受けたの?」


  誰に裏切りを受けた? 俺は誰に裏切られた?


「バカ言え!! ニーナは敵だしお前も敵だ!!」

「はー……なら、質問を変えるね。いつ、ニーナ様が君を裏切った? 鈴羅様は君を裏切ったのかい、見捨てたりしたか?」

「なっ!? そもそも敵側に寝返ってる時点で――」

「本来であれば、おにーさんはニーナ様に容易く惨殺されるよ」


 アイツはわざわざ俺を生かしていると言うのか? それに鈴羅の名前も把握しているらしい。


「お前は、俺に何を伝えたいんだ?」

「本来の敵という認識をおにーさんは間違えてるって話だし、誰もおにーさんを裏切っていない」

「……」

「真実を知るには事故を起こしたあの時以前の記憶が必要なんだよ。小学生の入学式以前の記憶が、ね」

「そんな昔のことを覚えてるわけない!」

 いつまでもそんな昔の記憶を持っているはずがない!!


「おにーさんってさ、トラウマって言葉を知ってるよね」

「あ!? 何の関係があるんだよ!」


「いや、だってさ忘れたいと思っても忘れないでしょ?フツーさ、入学式の日に車に轢かれたことなんて」


 小学生に上がる入学式の日に俺は轢かれたということか。


  なら、確かに簡単には忘れないかも知れないが現状は覚えていない、記憶に無いとしか言えない。

「おにーさんは本来の敵を知っている可能性があるんだよ。ニーナ様や鈴羅様が普通に考えて人類を滅ぼすなんて阿呆な滅亡計画を賛同すると思ってるの?」

「じゃあ、お前らは何がしたいんだよ!!」

「思い出してよ!! 鈴羅様と如月様の別れは偽りに見えたのか!? 両親を失った鈴羅様は?全部演技?」

言っていることは確かに正しいのかもしれない。俺の記憶に狂ってしまった世界を生み出した人物を知っている? そもそも、ニーナと鈴羅は俺の敵でないということ。


 俺の周りには元々敵がいない? どういうことだ。


「ガキンチョが言ってたことが正しいなら、これまでの仲間の犠牲は何だって言うんだよ!! たくさんの人が目の前で死んだ!!」

「一応言っておくけどさ、こちらはこちらで必ずやらなければいけないことがあるんだよ。ただし、おにーさんだけはなんとしてもマザーに会わせなければならない」

「本当の敵はマザーってことか……」

  俺をマザーに会わせなければならない理由、少なくとも俺の周りにいる人たちは何かをしようとしている。捉え方次第ではそうとも見えるだろうが……。


「ニーナや鈴羅は何をしようとしている?」

 辺りをチラチラと見回す素振りをして、ガキンチョは落胆の表情を見せる。

「チッ、悪いけどおにーさんから僕に伝えることができるのは今はこれだけかな~やっぱ」

「お、おい!!」


 大きな何かを掴む前に、ガキンチョは素早くその場を離れてしまった。


 と、同時に――。


「峰島様、離陸の準備が完了致しましたのでご案内致します」

 振り返ると母親と同じ様な装備をした方が真っ直ぐに俺を見ていた。しかし、一つだけ気になる点があった。


「分かりました、案内をお願い致します」

 軽く会釈をして案内されるがままに機内へと乗り込む。

 

 案内をしてくれた部隊の人は一度も片方の目を開けることなく立ち去って行った。


「なんか、機内なのにゴツイ扉があるのはなんでだろー」

 

 嫌な予感ばかりがよぎる。しかし、下手に動き回ることもできない。腹をくくるしかない。


 勢い良く、扉を開け――。

「失礼致します!!」

 扉の中は別の世界が広がっていた。豪華などデカイソファに黒光りしたテーブル、高そうな飲み物――。


「私の客室にようこそ、ネ」

 声の主は真っ白なブカブカのシャツを着ており、はだけた隙間から白い素肌が見え隠れしている。

「なっ!?」

「驚くことはないわ、私がいるのは当然なのだからネ」

 何故、ニーナと同じ部屋を案内したぁ!? ガキンチョの話があったこともあり、元々良くわかんない奴が更に訳分からんヤツになっていた。

  ニーナの傍らには、護衛の様な役割だろうか? 俺をここまで案内した人と同じ様に片目だけを開いている人物が佇んでいる。

「ご苦労様、これでも飲んでくださいな」

 優しい笑顔で飲み物を渡したニーナに応える形で片目の人物は水を飲み干した。


 そして、俺の顔を見つめてニーナがニタリと笑う。


 バタンッ!!

 

 数分後、鈍い音を立てて片目の人物がぶっ倒れる。そのままピクリとも動かない。


「おま――」

 

 声を出すと同時にニーナの手で口を押さえられ、目の前に文字の書かれた紙が突き出された。

 

 【私は常に監視されている。耳につけられたピアスには盗聴器がついています。監視役には眠ってもらいました。】

 

 と、丁寧に書かれている。


「お、おう?」

 再び、白い紙に文字を書き始めたニーナの姿をただ呆然と見つめる。

 

 【約1時間30分のフライトしかありません。私達の計画している作戦の資料を渡します。】


「長いフライトになりますし、じっくりと話を聞かせてもらうから、覚悟してネ」

「話すことはなにもねぇ!!」

 当たり障りない会話を交えながら、ニーナは作戦資料を俺に渡す。いい具合にソファの横に置いてあったリュックに詰め込む。

「あなたがこれ以上、我々の素性を知ればどうなるか分かってるでしょう?」

「まだ、死ぬわけには行かねぇんだ!! 下手には動かない」

「アナタの稚拙な脳みそにしては賢い判断ね」

 

 【私と鈴羅の二人はマザーに忠誠を装い、貴方目線では完全に敵として認識して貰う為に私と鈴羅が計画した作戦に過ぎません。】

 

 だとしたら、何故鈴羅は如月や両親までも犠牲にしたのだろうか。それだけではない、実際に何人もが死んだ。

「素直に認めたことですし、お話は終了ね。後は縛り上げて大人しくさせましょうか」

「ふざけんな!! 口封じにここで始末するつもりなんだろ!?」

「本当に貴方を殺すなら、私は一瞬で撥ね飛ばすわ」

「くそ野郎が!!」

 そして、ニーナは慣れた手つきで俺を縛る。

 

 【マザーは特異点となった、多々良さんを望んでいます。そして、私達は貴方を必要としています。】


 俺をニーナと鈴羅さんが求めている? 何故だ。


 【幼い頃の貴方の記憶にマザーを殺す貴重な情報があります。貴方を死なせないために、私と鈴羅は多大な犠牲を払いました。特に鈴羅は恋をした人や両親を犠牲にしてまで、マザーに忠誠を装い続けています。】


「なんで――ッ!!!!」

 しまった、思わず声に出してしまっていた。そこまでして、俺を遠回しにニーナや鈴羅は守っていたというのか。いつ思い出すかも分からない俺を……。

「なぁーにかしら? もっと縛りが欲しいのね?」

 気がつけば、ニーナの瞳から涙がキラリと零れ落ちていた。

「こ、今度は、何をしようってんだよ!!!!」

 すかさず、大きな白い紙を新しく取り出す。

「貴方と私で取引をしましょうか」

 ニーナは徐にテーブルのリモコンに手を伸ばし、音楽を流す。


 【すぐに信じて頂けることではないと思います。ただし、貴方の身は全力で死守します。なにがなんでも】


「取引? 何でそんなもんをしないといけないんだよ」


 【東京に着いたら、安全な地下生活がしばらくは続きます。いつまで続くかは不明です。ただ――】

 

  紙に書かれた文字は残酷だった。


 【私達は、マザーの元へ多々良緒さんを連れて行かなければなりません。】


「取引をすれば更にスリルが味わえるし、貴方も諦めてしまうかもと思いまして」

「なら、それ相応の取引をしようじゃねぇか」


 【多々良さんを救うには特異点がマザーの元へ行くのを阻止しなければなりません。貴方の幸運を生かして、地下を上手く抜け出して阻止できれば違う運命があるかもしれません】


「では、10分だけ考える時間をあげる」


 【多々良さんは亡者にはなりませんが、亡者よりも恐ろしい存在です。言わば、マザーの力そのものになり得てしまいます】


 当面の流れはだいたい掴めた。地下に一度送り込まれ、そこから脱出して多々良さんがマザーとやらに会う前に俺が救い出す。

 チャンスがあるなら、ものにしてやる!! やってやろうじゃねぇか、人間を道具やおもちゃにしている奴には負けてたまるか。


「残り5分よ」


 冷めた口調のニーナが告げる。緊迫の1時30分は残り、約60分となった。


~水面下の攻防~ END To be continued

めちゃくちゃどうでもいい話かもですが、飛行機の上がる瞬間にくる感覚とかがくちゃくちゃ苦手です。

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