晴香の心
コンコンコン
遠くでドアをノックする音が聞こえた。
いつの間にか、壁にもたれて眠ってしまったらしい。少し背中が痛い気がするがしょうがないだろう。
いつまでたっても返事がないのでノックをしてきた人物はついに声をかけてきた。
「晴香様っ、起きていらっしゃいますかっ?入ってもよろしいでしょうか?」
ナラの声だった。
その時、晴香は昨日の出来事を思いだした。ナラを傷つけてしまったこともすべて。
まず、晴香は自分の姿を確かめた。ナラの前に男の姿で現れるわけにはいかないからだ。
特に何も変わったところはなかった。いつもの山城女学院に行くときと同じだった。
安心して、ふっと息を吐いたと同時にナラにどんな顔をして会えばいいのか考えていた。
昨日の自分は本当にひどかったと思う。
いくら自分のことでいっぱいいっぱいだったとしても、優しくしてくれるナラに甘えて、小さい子のような自分勝手な言動だった。
そんなことを考えているうちにドアの前まで来てしまった。
まだ、考えがまとまらないがドアノブに手をかけ扉を開いた。
次の瞬間、不安そうな顔をしたナラの姿が目に飛び込んできた。
晴香の姿が見えた途端、ナラの顔がぱぁっと輝いた。
「晴香様っ!!」
ナラの笑顔を見ながら、なんでこんなにも私に優しくしてくれるんだろうと、心の奥底で戸惑う自分がいた。
次は、ナラの心です。