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その3
そこには少女の身体から魂だけが抜け落ちてそのまま時間が停止したかのような、永遠に腐らない傷一つない完璧な屍体のような、そんな世にも美しいドールたちが観賞用に計算された配置で丁寧に並べられていた。それらが人形であることを知らない者ならばそっと目を開けて歩き出したとしても違和感は感じなかっただろう。
舘谷鬼一郎は仰向けに床に倒れ、震える手で上半身を支えながら、目を飛び出さんばかりに見開いていた。ドールたちはその正面から、死にゆく者を静かに看取るように妖しく鬼一郎を見下ろしている。
静寂の中、規則的に呼吸音だけを響かせながら鬼一郎は凍りついた表情で一点を凝視していた。彼の腹部から流れ出た液体が徐々に床を真っ赤に染めていく。
ずば抜けて美しい一体が、動けないドールたちを代表するかのように冷たい笑い声を漏らした。鬼一郎の視線に怯む様子もなくそっと彼に歩み寄る。
鬼一郎の絶叫とそれにかき消された少女の嘲笑が、惨劇を彩る劇中歌の如く館中に響き渡った。