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98話

 新学期早々の騒動も、時間が進めば沈静化していく。ましてや拓郎達は3年生。当然すでに各自の将来を見据えた行動に移っていなければいけない大事な時期。なればいつまでも新入生の暴走に付き合っていられるはずもない。それに加えて、去年と比べると明確に上がった科学魔法の力を考慮して進路の変更を行った生徒も多数いる。とても忙しいのだ。


「そんな状況でも、拓郎は変わんねーな」「そりゃそうだろ、俺の場合は進む道がどんなに科学魔法が上達しようが変わり様がない」


 授業の合間の休憩時間に将来の進路と言う話題で話しかけてきた雄一に対し、拓郎はそう返す。事実拓郎の進もうと決めている回復魔法使いの道は上達すればするほど希少な人間になっていくという事以外は変わらない。むしろ需要が高すぎて供給が追い付いていないため、今の拓郎が今すぐ就職を希望すれば、100%就職できる。


「一方でそっちは大きく変わっただろ? 希望大学も、その先も」「まあな。クレア先生やジェシカ先生のおかげで科学魔法のレベルが凄まじく上がったからな。2年の今頃と比べると進路の大幅変更は当然の事だろう」


 拓郎に話を振られた通り、雄一の方は2年の時に提出した進路希望を大幅に変更していた。科学魔法レベルが大きく上がった以上、2年の時の進路希望では力を生かせない、レベルに見合った将来を迎えられない事が確定しているためだ。適正な大学に進むため、教師と何度も相談し合って適正な大学を選びなおしている。


「正直、将来がここまで明るくなるとは嬉しい意味での大誤算だったぜ。そしてまだレベルを上げる事が出来るチャンスは残っている。行けるところまで行くために訓練は今後も真面目に取り組む。それがチャンスをくれたクレア先生、ジェシカ先生に対する最低限の礼儀だな」


 と話をしていると、担任の先生が教室に入ってきた。しかし、クラスメイト達はざわめく。なぜなら、次の授業の担当は担任の先生ではないからだ。つまり。何かがあったことを意味している。


「あー、気持ちは分かるが落ち着けー。物騒な話じゃない、だからとりあえず静かになー」


 いろいろ周囲が慌ただしいゆえに、普段とは違ったことが起きるとどうしても反応するようになってしまった拓郎のクラスメイト達であったが、物騒な話ではないという担任の言葉を聞いてとりあえず収まる。静かになったところで担任の先生が口を開く。


「まず進路希望の方だが、数名まだ提出できていない生徒がいる。状況は分かるがとりあえず最初の奴は気楽に出してくれていい。今のお前たちの魔法レベルを考慮すれば、よっぽど無茶なことを選ばない限りは調整が効く。だからまずは提出して相談を重ねようっていう話だ」


 確かに物騒な話ではない──なので生徒達も落ち着いて話を聞く事が出来ていた。提出していない生徒も、気負う必要はないという事を知れたためか少し安堵した様子を見せる。


「それと、今後の魔法訓練について先に説明を行う事がある。来週からだが、他校の生徒が訓練に参加することが決まった。その理由はお前たちなら察せるだろ? その代わり周囲が少しは静かになるはずだ。と言っても訓練内容が大きく変わったりする訳じゃない。変更点は俺たち教師が担当するから問題ない。まあ、こっちはものすごく大変なんだが」


 教師の言葉に笑い声が起きる。笑い声がしばし続き、落ち着いたころを見計らって教師が話を続ける。


「まあ、これはしょうがない落としどころってやつだ。直接指導を受けているお前たちもそうだろうが、こっちの教師陣もクレア先生を始めとした魔人、魔女の先生たちには学ぶことが非常に多くてな。お前たちもこっち側も、1年前とは全く違うというのは言うまでもないだろ? その為、お前たちだけじゃなくこっちの教師陣にまで色々なやっかみが飛んできているんだ……科学魔法レベルが上がらないとは言っても、魔法を使うために必要な技術は鍛えられる。それがもろに表面化してきてな」


 拓郎達生徒達がレベルの上昇と共に魔法の使用技術も向上している分陰に隠れていたが、教師陣の魔法運用における技術の向上も目覚ましいものがあったのだ。たとえレベル1の魔法しか使えないと言っても、レベルが3以上に達している新入生の魔法を防ぐ事が出来るとなれば、今までの常識など過去のものとなる。


 このことが明確に表面化したのは、春休み中の事。科学魔法における指導法を含めた様々な教師としてのスキルアップを目指す合宿のようなものがあった。これは国が指導しているものであり、数年ごとに参加することが教師の義務となっている。全体的なレベルアップを図るため、そして指導がおかしな方向に向かっていないかのチェックのためと言う理由だ。


 で、ここで拓郎の学園方出席した3名の教師が科学魔法関連に限ってではあるが、ほかの学校、学園から来た教師たちを圧倒してしまったのだ。特に拓郎が行っている複数人を相手取った訓練を見続けていたことが大きい。見る事もまた訓練、見ていたからこそ──レベルが上の他校の教師陣の魔法に落ち着いて対処できた。


 それに加えて、クレア達から教わった魔法の練り上げ方。そして密度を上げることによって洗練された魔法は容易くレベル3や4の科学魔法レベルを持つ教師たちの障壁を貫いた。このことはまさに場を震撼させた。レベル1や2の科学魔法レベルしか持たない人間の魔法が、明確な格上の魔法使いが生み出す障壁を、まるで紙を破くかのように突き破ったのだから。


「これは一体、どういうことです!?」「科学魔法のレベルを偽っていた──訳ではないですよね。ここに入る前に科学魔法レベルのチェックは必ず行われていますし」「間違いなく、今までの常識の外にある事柄です。何故、このような事が起きるのでしょうか!?」


 と詰め寄られれば話すほかない。科学魔法レベルを上げただけではいけないこと、そして基礎をしっかりと磨き魔力を練り上げる事で魔法はより強くなることなど。これを知ったことで、より騒ぎが大きくなった。


「今までの科学魔法の勉強方法、訓練方法が間違っていたという事になりますよ、これは!」「世界に通用する魔法使いを輩出していきたいなら、この教育方法に切り替えるべきでは!?」「し、しかし、それをどうやって教えますか? 魔法の練り上げ方なんて、どうやればいいか想像もつきませんよ。自分が分からないことを生徒にどうやって伝えれば……」


 これが、先の拓郎の担任の発言につながる。自分たちが教えられないのなら、教えられるところに生徒を送る外ない。全てを知る事が出来なくても、切っ掛けをつかむだけで人は大きく変わる事が出来る。こういった話になってしまい、校長先生も話を受け入れざるを得なくなった。まあ、その分補助金もできるので学園運営が赤字になるという事はないが。


「なので、訓練時間に見知らぬ顔の同世代の人間がいても不審者で通報なんてことはしないでくれよ? きちんとこちらでチェックした生徒しか訓練場には入れないからな。ただまあ、あれこれ聞こうとしてくる奴はどうしても出てくるだろう。だがすべて教師に聞いてくださいって言ってくれていいからな? お前たちの訓練時間を不当に削らさせるような事はあってはいけない」


 教師の言葉に、いくつもあー、あり得るという事が上がる。容易く想像できる光景であったこともあり、生徒達もすぐに理解した。


「と、こういう連絡のために少し時間をもらって話をしに来た。もっとも他のクラスでも同じ伝達事項が行われているだろうけどな。じゃあ、俺は引っ込むからここからはいつも通りの授業だ。魔法だけでなく普通の勉強も大事なことだからな? さぼらないように」


 そう言い残して担任の先生は教室から出ていき、本来この時間にいるべき先生が入ってくる。


「少し短くはなりますが、今から授業を始めます。まあ、皆さんは特に大変な時期を大変なタイミングで迎えていますが──一方でとてつもないチャンスを掴んでいる事もまた事実。あと1年の過ごし方が将来を大きく左右する、なんてことは皆さんのp方が分かっているはずです。頑張ってくださいね」


 と言う前振りの後に本来の授業が始まった。



 そして夜。


「──と言う連絡があった」「うん、でもたっくん達は今まで通りでいいからね。面倒ごとはすべて向こうが受け持つから」「私達もいつも通りです。大変なのは教師の皆さんでしょうが、こればかりは仕方ありませんね」


 拓郎はクレアとジェシカに教師から聞いた話を報告し、クレアとジェシカはそう拓郎に返した。もちろんクレアを始めとした魔人、魔女の皆も話を聞いており、負担はそちらに掛けないようにするという言質も取っている。


「しかし、ますます話が大きくなってきた気がする。数年後には校長先生の髪の毛の大半が白くなっているかもしれないな」


 拓郎がそうこぼすと、ジェシカがそれを否定した。


「むしろやる気が出てきたと笑う人ですよ、あの方は。それにジャックから魔法を習っていますからね、老化を抑える魔法なら、そろそろ使えるようになったころ合いじゃないでしょうか」


 その言葉に拓郎は、校長先生はそんなことをしていたのかと驚く。かなりの激務のはずなのだが、そのうえで魔法を習っていたと……


「ジャックにとっても、一緒にコーヒーを飲みながら話ができる気楽な友人みたいな感じらしいし、少しでも長生きしてほしいんでしょ」


 とクレア。そんな友人関係が生まれていたのかと拓郎は驚きながらも理解した。そして一週間はあっという間に過ぎ去り、ついに他校の生徒が参加する訓練の日がやってくることとなる。

モンハン休暇を過ごしてきました、ストーリーはクリアし、装備もそれなりに作りました。

もっともここからが本番なんですけどね。

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