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81話

 翔峰学園生徒との一件があってから数日後の土曜日、拓郎、クレア、ジェシカはデートに出かけた。それは翔峰学園との戦いが終わったその日の夜、デートを今度の土曜日にしましょう! クレアが宣言しジェシカも賛成したからだ。


「しばらく訓練に没頭してきたし、このあたりで少し休憩を取るタイミングなのよ。たっくんの体をしばし休めてあげて、体を作り直す時間をあげないとね。その時間を活かして、デートしましょって話。ここしばらくは訓練と戦いばっかりの日々だったし」


 クレアがこう言い出せば、それを止めるすべを拓郎は持っていない。なので仲良く3人で外出する事になる。拓郎の両親はしっかり2人をエスコートしてきなさいという言葉と共に拓郎に臨時の小遣いまで出してきた。両親も拓郎の努力は十二分に認めているし、息抜きをするときは目いっぱいするべきであるという考えを持っている。


 それに、恋愛というものが面倒だという人が増えている昨今、変則的すぎるとはいえ女性と仲良くやっている我が子を応援したいという側面もある。結婚を強制したりはしないが──息子が結婚して幸せになり、そして孫の顔を見たいという心情は確かにある。だからこそクレアとジェシカのどちらかと結ばれて欲しいという願いもまた同時に存在しているが。


 そんな両親に見送られ、とりあえず街を歩く3人。すでにもう拓郎、クレア、ジェシカの3人が街を歩く姿は名物のような物になっている為ちょっかいをかけてくる地元の人はいない。まあ、物理的な意味で分からされてしまえば無理もないという話であるが……3人はある装飾品店前にて足を止める。


「少し入っていかない? 3人御揃いのシルバーリングとかがあれば買うのも悪くないかなと思うのよ」「姉さん、それは良いですね。是非見ていきましょう」


 女性2人がこう言い出せば拓郎に反論の余地はない。そのまま店に入ると出迎えた女性店員があ、名物の3人が来たという感情は一切表に出さずにいらっしゃいませと出迎えた。


「過度に目立たないシルバーのリングを探しているのだけれど、見せてもらう事は出来るかしら?」「もちろんでございます、デザインも含めて見本がございますのでどうぞこちらへ」


 案内された先には幾つものシルバーのリングが展示されていた。それらをクレアとジェシカは熱心に見てまわる。拓郎はどれが良いのかよく分からない為普段使いしてもよさそうな物はないかと見てみたが、流石に目利きは出来ないのでお値段がそれなりにする物とお安めの物ので普段使いに出来るか否かを判断していた。


 しばし後に一通り見て回ったクレアとジェシカであったが、ジェシカが案内してくれていた店員さんに質問を投げかけた。オーダーメイドは可能ですかと。


「もちろん承っております。ですがオーダーメイドの内容によってはそれなりにお高くなってしまいますし、完成までにお時間もいただきますが……」


 その店員の言葉にジェシカはクレアに小声で話しかけ、クレアは頷いた。そして指のサイズを測られることになる。要望を出し終えた後、クレアはカードで一括払いをしたようだと言う事が拓郎にわかった事の全てだ。お店を後にして、少し歩き始めてから拓郎はジェシカに問いかけた。


「ジェシカさん、一体どういう指輪を注文したんですか?」「そうですね、指輪としては宝石などを付けないベーシックな物ですよ。ただ、指輪にとある花を彫り込んでほしいと注文をしたんです。シザンサスという花ですね」


 シザンサス? と拓郎は首を傾げた。花に詳しい訳ではない拓郎にとっては、その花の外見などが全く想像できなかったからである。そんな拓郎にジェシカは微笑みかける。


「指輪が出来上がったらお見せしますから、それまでのお楽しみという事にしておいてください。決して悪いようにはなりませんから」


 それ以上の事をジェシカは拓郎に教えなかった。なお、ジェシカがクレアに同意を取って彫ってもらう事にしたこのシザンサスという花はその見た目だけでなく花言葉も理由である。その意味を伝えるのは指輪が完成してからにしようとジェシカは決めていた。もちろん拓郎が興味を持って調べるのであれば、それはそれで構わないという感じである。


 それから幾つもの店を3人は見て回った。特に服装関連の店はお互いに似合うと思う服を選びあって購入したり(買った服は配達してもらう形にした)、ちょっとした小物や文房具の補充なども行った。そして徐々に日は傾き……


「じゃ、ディナーに行きましょうか。あ、たっくん心配しないでね。元からその予定だってご両親にはちゃんと事前に伝えてあるから」


 クレアの言葉に驚いた拓郎であったが、ちゃんと両親に伝えてあるのならまあいいかと考えた。3人はタクシーに乗り、とあるホテル前へと移動した。


「ここのホテルは一階が誰でも使えるレストランになっているのよ。予約はしてあるから……あと、レンタルで礼服を借りるからね」


 明らかに高級な店を前にした拓郎は少々おじけづくが、このような場所に連れてきた理由をジェシカが語る。


「久しぶりのデートですから、普段とは違う場所でという理由もあるのですが──拓郎さんの将来を考えるとこういった場に慣れておくことも大事になるからという理由がありますね。回復魔法使いはどうしても、こういった場所での食事会に出席して欲しいと頼まれることがありますから」


 ジェシカの言う通り、回復魔法使いを労う為に良い店で食事をしてもらうという歓迎方法が存在する。歓迎であるため迂闊に断れないし、食事会で粗相をするわけにもいかない為ある程度離れておかないといけない。それを歓迎と言っていいのか? という疑問をお持ちになられるだろうが、郷に入っては郷に従えという言葉もある。つまり、慣れるしかない。


「つまり、その練習も兼ねているという事かぁ……」「拓郎さんは確実に、こういった場に呼ばれるだけの力を身に着けていますからね。ですから今後は慣れるためにもちょくちょくこういった場所に来ていただきます。その代わり、料理は間違いなく素晴らしいですから」


 拓郎は少々うんざり気味な言葉を吐いたが、ジェシカの言葉に頷き表情を引き締めてから入店する。予約を入れていたこともあり、スムーズに入店し、手早く身支度を整えて礼服に着替えて席に向かう……嘘である。拓郎はかなり苦戦し、お店の人のサポートを多々受ける事となった。だがお店の人曰く。


「分からないのではっきりと分からないので手助けをお願いしますと言って頂ける方がこちらとしてもありがたいです。分からないのに意地などを張られて、間違った格好のままで外に出られますとお客様に大きな恥をかかせてしまう事にに繋がってしまいます──それはこちらとしては望む所ではございません」


 その言葉から拓郎は店員さんも大変なんだなぁと、いろいろな事を察した。まあ、話をした店員さんの目のハイライトが結構消えているのを見れば、察する能力があまり高くない方でも無理やり察せられるレベルであるのだが。


「その、なんといいますか……お疲れ様です」「ありがとうございます。本来はお客様にするお話ではないのですが、こうも素直に話を聞いて着付けを行って下さる方を久しぶりにお迎えいたしましたのでついお漏らしてしまいました、どうかお忘れ頂けると幸いでございます」


 拓郎からしてみれば、知らない事は悪い事じゃないがその専門家の言葉を意地を張って聞かないってのはアホじゃないか? というのが正直な所である。意地を張るべき場所を大いに間違えているだろうと。


「これで完成でございます」「流石ですね、あんまりパッとしない自分がここまでよくなるとは、プロの方の仕事は素晴らしいですね」


 少し前の自分とは全く違う、整った自分が姿見に映っている事を確認し拓郎は正直に店員さんの事を褒めた。店員側も、素直に賛辞を送られて悪い気はしない。穏やかな笑顔を浮かべる店員さんに先導されて、拓郎は予約してある席へと向かった。

久しぶりにバトル要素が一切ない文章を書いた気がする……

ジャンル的にこれが普通じゃないといけないんだけどなぁ。


あ、ガンプラ壊して俺ガンプラ作ってます。

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