表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/112

その6

更新が非常に遅くてごめんなさい!

今回はジェシカさんの過去をある程度紹介です。

「──という訳でして、わざわざ私を頼って遠くから訪ねてきてくれたジェシカちゃんを、義理とはいえお姉ちゃんである私はなんとしてでも見捨てたくないのが本音でして……もちろん人一人増える分お金はこちらから入れますし、万が一ジェシカちゃんが不義理を働いた場合は、私の全財産とこの首を差し出しますから!」


 ただいまの時間は夜の9時。帰宅した拓郎の両親をクレアが全力で説得なのだか脅迫なのだか分からない内容で、ジェシカの宿泊を認めてもらおうと奮戦している。当のジェシカの方は本当に急に押しかける事になってしまい、まことに申し訳ありませんと拓郎の両親に対して深く深く頭を下げている。そんな二人に拓郎の両親は防戦一方で押されっぱなしである。


「とりあえず純粋に一月当たり5万円、そしてさらに生活費も追加しますので、ジェシカちゃんをどうかこの家に置いてあげてください。彼女に一時の安らぎを与える機会を、どうか与えてあげて欲しいのです!」


 さらにクレアの説得はお金に泣き落としが追加された。比較的日本人の弱点である泣き落としに、多額のお金も支払うという内容に、拓郎の両親は最終的に折れた。仕事の後ゆえに疲れていたというのもあるだろうが……。


(そういえば論破するには、相手が疲れているところを狙えって歴史上の誰かが言ってたんだっけか?)


 両親を論破して嬉しそうなクレアを見ている拓郎はそんな事を考えていた。ジェシカの方はずうずうしいお願いを聞いていただき……と何度も何度も拓郎の両親に大して、申し訳なさそうに頭を下げていた。



「これでジェシカちゃんも堂々とここに泊まれるようになったわけで、いやあめでたいめでたい」


「お前どこの人間だよヲイ」


 いやあめでたいめでたいとか、日本人でもあまり言わないフレーズを持ち出したクレアにつっこむ拓郎。ジェシカは今頃自分に割り振られた部屋に入り、荷物を降ろしていることだろう。


「良いじゃないそんな事。郷に入れば郷に従えって日本のことわざにもあるでしょ~? だから日本式の表現を使ったんだよ~」


「学があるというのも、状況によっては突っ込みたくなる状況を生み出すって痛感したよ」


 拓郎の部屋で漫才のような会話が繰り広げられている。ジェシカもとりあえずの荷物整理が終わり次第、この部屋にやってくる事になっている。


「で、ジェシカちゃんをじーっくりと見れたと思うけど……たっくんはどう見たかな?」


「魔女とか能力とか関係なしに苦労してるように見えた」


 主にクレアを姉と慕ってしまった時点で、との本音がたっぷり詰まった言葉を拓郎は口に出していない。だが幸い、その本音がクレアに伝わる事はなかったようである。


「まあねー、私も聞いた話限定な部分もあるんだけどね……あんまりにも暗い話が長くなっちゃうから全ては言わないけど、一言で言うと両親からの暴行、それに加えて幸い未遂にすんだらしいけど父親からの性的な暴行をジェシカちゃんは受けかかったらしいのよね……」


「──それは……本当か?」


 いきなりの重い話の内容に、拓郎も無意識のうちに顔をしかめる。残念な事にこういった種類の問題は、いまだ多数存在するのが悲しい所である。両親が優しく、しっかりと子育てをしてもらえるという事は非常に類まれな幸運である。子供は生まれてくる親を選べないのだから。


「父親の性的暴行が本格化する前に、ジェシカちゃんが隠れ魔女だったってことをつかんだ政府の人間が、両親からジェシカちゃんを引き離したらしいわ。せめて生まれた時に魔女だって分かっていれば、そこまでの暴行を受けなかったかもしれないけど、ifの話をしてもしょうがないから……ね」


 ジェシカは本当のレア中のレア、隠している自覚が一切ないのに魔女という事を隠し続けていたパターンに入るらしい。が、親からの暴行が続くにつれて、その痛み、苦しみ、憎しみが原因で魔力の隠蔽が徐々に切れた上に大暴走しかけたらしい。突如大きな魔法反応を国内でキャッチしたジェシカの国は大慌てで特殊部隊を急行させて、ジェシカの身柄を何とか暴走前に確保したらしい。


「ちなみに、確保のタイミングはギリギリだったらしいわ。後1分ぐらい遅れていたら、父親のレイ○行為によって精神を攻撃されたジェシカの魔法が本能的に発動して大暴走を引き起こしていたこと、もしその大暴走が発動していたら辺り一帯の人間、動物を無差別に巻き込む歴史上まれに見る大虐殺が発生していた、と当時の専門家は震えながら話したって聞いてる」


 ジェシカの両親は当然御用。自分の子供へ行ってきた重い虐待に加え、間接的ではあるものの大量の殺人を犯す所だったなどの指摘が多く提出され、裁判の結果死刑にこそならなかったが、永久に高い塀の中で労働に従事する判決が下された。だがこの労働はかなりきついものらしく、若いうちは良いがある程度の歳をとってくると仕事のノルマの達成が難しくなる。ノルマが達成されないと食事の量などを大きく削られて、結果的に早死にする事が多いので死刑労働などと刑の内容を知っている人の間では言われるのだとか。


「幼い時からそんなめちゃくちゃひどいスタートだったジェシカちゃんなんだけどね……魔女特性が空気と判明したから余計ややこしくなったのよ。気がついた時にはもう狙われたターゲットが手遅れに出来る強力すぎる能力だけに、めちゃくちゃ厳重に警戒されて……当然そんな状況に置かれたから友達も出来なかったわ、魔人、魔女の間ですらね。普通は魔人、魔女といえど人間なんだから、ある程度の友好関係は自然と出来るんだけどね……その機会すらジェシカちゃんには与えられないまま……彼女の能力を悪用しようとした人間が近づいた……そこから先はもう聞いたわよね?」


 なるほど、と拓郎はうなずく。その先がクレアとジェシカの出会いにつながり、ジェシカの能力を悪用しようとしたヤツの逮捕、牢獄送りにつながるのか。ジェシカが話した話を思い出しながら拓郎はクレアに質問をする。


「ジェシカさんがいろいろ多くの傷を心身ともに負ってきたことはわかった。だけど、何で俺にそれを話したんだ?」


 クレアはニコニコと笑いながら……


「たっくんみたいにね、暴れないなら近くにいても構わないなんて魔人や魔女に言ってくれる人は世界中を探してもほんっ~とうに少ないの。表にあまり出さなかったけど、ジェシカちゃんは泣きたくなるぐらいたっくんに感謝してると思うよ。だからこそ、たっくんにはジェシカちゃんのことを少しだけで良いから知っておいて欲しかったんだよ」


 うう~んと、拓郎は腕を組みながら目を閉じる。クレアが話をした理由を拓郎は理解したのだが……


「彼女に何かをしてあげて欲しい、という事か?」


 目を開けながらクレアに聞いてみると、クレアは首を左右に振った。


「ううん、特別な事は必要ないよ。ただ挨拶して、一緒に食事をして、時には笑ったり喧嘩をしたり……それだけでいいの。難しい事を考えなくていいの。なんなら、思いっきり甘えてもみてもいいんじゃないかな。ジェシカちゃんにまったく足りていないもの……それは"人の温もり"だから。言葉にすると陳腐に聞こえるかもしれないけど、本当にジェシカちゃんは温もりに飢えているの……だから」


 その時、ガチャリと拓郎の部屋のドアが開き、ジェシカが入ってきた。どうやら荷物の整理が終わったらしい。入ってきた時の表情にかげりがない事から、先ほどの会話は聞こえていなかったようだと予想できる……まあクレアがいる以上、音漏れがあるはずがないかと拓郎は考えた。


「だから、たっくんにはぜひ私とジェシカちゃんと一緒に今夜は添い寝をして欲しいの♪」


「「突然何を言ってるんだ(ですか)!?」」


 突然クレアが言い出した内容に対しての突っ込みをとっさに行った拓郎とジェシカの声が、これ以上ないほど綺麗にハモった。


「あれ? ジェシカちゃんはいっつも私に『添い寝してください』って頼んでくるじゃない?」


「そ、それは、それはそうですけど、なぜ拓郎さんまで巻き込むんですか!?」


「暖かいよ? とっても」


「そ、そうではなく、男の人と一緒に寝るってことは、そ、その……」


「ふ~ん? 一体なぁ~にを想像したのかのかな? カナ? こーのムッツリさんめ♪」


「ね、姉さんっ! 私はそんなにはしたなくないです!」


 そのままクレアと口げんかをするジェシカを見て拓郎はふと思う、普通の女の人じゃないかと。暗い過去を持っている事は今知ってしまったが、クレアとバタバタしながらギャーギャー言い合うその姿は恐ろしい魔女といった恐怖を煽る物ではない。そう思いつつも拓郎はそっと立ち上がり、部屋の隅においてあるピコハンを手に持つ。そして口げんかを続けている二人に対して振り下ろした。


 ピコッ!「ふにゃ!」


 ピコッ!「きゃん!」


 ピコハンの音と共に軽い衝撃を受けた二人は口げんかを中断する。そして自分達を叩いた拓郎に視線を向ける。


「口げんかは結構だが、ここは俺の部屋でもう夜もかなり遅い。続きは明日にしてくれよ」


 拓郎の台詞を聞いて、たっくんごめん~、 拓郎さんすみません、つい熱くなってしまってと謝る魔女の二人。その後やいのやいのと話し合いを続けた結果、拓郎がクレアの話術にやり込められて……左にクレア、右にジェシカ、そして中央に拓郎が寝るという添い寝をさせられる事になってしまったようである……。

ジェシカ・ノーランド


基本的には穏やかな女性。産まれはめりけん。

魔女特性が空気という凶悪性のため、とにかく友人がいない。

というより人があまり寄ってこない。

過去に性関連を含む虐待を受けていた。


クレアとちがってジェシカは指名手配を受けていない。

だがその能力から、触らぬ神にたたりなしという状況はクレアと

似たりよったりであったりする。

旅行と評してちょくちょくクレアに会いに行っていた。

クレアは喜んだが周りからしてみれば魔王の会談としか見えない。

事実そういう言い方をされたこともある。


スリーサイズは88:57:84。髪は栗毛のセミロング。

美人というよりは可愛いという表現が似合う。

クレアほどではないが、家事は十分なレベルでこなせる。

クレアとちがって服装はスカートを愛用する。

恋愛経験は0。拓郎に関しての感情は、現時点では可愛い弟的な感じ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ