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100話

ついにウエハースも100話達成。長くなっちゃいましたねぇ。

 訓練の時間はあっという間に過ぎ、終了を告げる鐘の音が鳴った。


「はい、今日はここまでです。それではお昼休みを取ってください」


 ジャックの声が響き渡り、学園の生徒は各教室へと引き上げていく。だが他校の生徒は動かない。なぜなら、少しでも多くの事を教師から聞き出したいからだ。そして教師側もこの反応は想定内。


「皆さんはまだ聞きたいことがあるようですし、お昼休み中ならば受け付けましょう。もっとも食事をとりながらにはなりますが、それでもよろしければ」


 反対意見など、出ようはずもなかった。



「で、正直どう思った?」「殺気はさすがに飛ばしては来なかったけど、結構圧は感じるよな」「まあ、気持ちは分からんでもないけど。もっと早く知りたかったって感情が湧き出てるのはさすがに感じたし」「でも流石に中盤からは先生たちの授業に夢中になっていたから、こっちに構う暇もなくなったって感じたかな」


 拓郎のクラスメイト達が、先ほどの訓練時間に感じたことを話し合いながら昼食を取っている。


「やっぱりこっちに来るだけあって熱意はすごいな」「それぐらい熱意があるのは大前提でしょ、魔法の訓練に力を入れられない人間を入れたら全体に悪影響だし」「ま、そんな人が他校にわざわざやってくる面子の枠を希望するとは思わないけどさ」「今の時代、魔法ありきだもんなぁ。科学と魔法の両立が出来なきゃ話にならんってのはもう大前提になってるから口にも出されないし」


 話はより活発になって行く。そして不意に拓郎に話が振られることになる。


「拓郎はどうだった? 他校のメンツから何か感じた?」「そうだな……最初は驚き、そして次が観察かな。先生の授業が始まってからはかなり薄れたけど、横目で見られている感じだけはずっとあった。少しでも何かを掴んで帰ろうという執念を常に感じたというのが正直な話かな」


 拓郎の返答を聞いて、クラスメイト達からは「執念、確かに執念かも」「何が何でも情報と知識を持ち帰ろうとするのは執念と表現するのが一番しっくりくるかも」「確かに、執念って言い方がふさわしいかもしれないな」と同意する言葉がいくつも飛び出した。


「でもよ、執念の一つや二つ、出てくるのが当然だろ。魔法の才能がないって診断が出てた俺がレベル3になっているんだぜ? クレア先生を始めとした魔人、魔女の先生と出会えなかったらさ、俺は絶対レベル1で一生を終えていただろうさ。それがレベル3になった上にまだ上がる可能性がある……こんな情報はもう世間に流れてるだろうさ。だったらここに来た連中はそれこそ執念を燃やして俺も、私もってなってるのが当然だろ」


 と、雄一の発言が行われた後に次々とそうだよな、俺もクレア先生が居なかったら、ジェシカ先生が居なかったら私もよくてレベル2だったはずなんて会話もされ始める。


「し・か・も。私達って普通のレベル3じゃないもんね。魔人、魔女の先生が仕込んでくれた魔法の発動に関わる基礎からしっかり鍛えて貰ってるから、魔法の強度、威力はレベル3のレベルに収まってないよね。私達だけじゃなく先生たちもそっちを学んでいるから、去年と比べて滅茶苦茶強くなったし」


 続く珠美の言葉にもクラスメイト達は頷いて同意。生徒も教師も全体的に実力が増した。卒業して言った先輩たちがあと1年居たかったと零すのも無理はない話である。


「手加減も覚えないと大事故起こしかねんよな」「だね、レベル1でも絞って撃たないと危険だし」「明かりを出す魔法だってそう、うっかり調整忘れたらとんでもないまぶしい光が出てきたから慌てて消したぜ」「おいおい、しっかりしろよ……全力を出していいのは拓郎にぶつける時だけだろ」


 拓郎は最後の言葉を聞いてなんとも言えない表情を浮かべた。そりゃ対処はできるし、全力で撃ってもらわないと双方の訓練にはならない訳だが──それはそれ、これはこれ。なんとも言えない感情が過ぎ去るのは仕方がないだろう。


「まあ、拓郎君はねぇ……才能って言葉で片づけるのは失礼だよね」「クレア先生たちと始めからドぎつい訓練やってたもんなぁ。最初は殺し合いにしか見えなかったぞ」「あんなズタボロにされてもなお立ち上がってやりぬく努力と根性は、才能って言葉で片づけたら失礼以外の何物でもないよな。まあ他校の連中は絶対知ることは無いわけだが」


 ずっと拓郎の訓練を見てきたクラスメイト達が話す内容が、そんな過去の話に代わってきていた。拓郎も思い返すと、確かに滅茶苦茶やってたなと苦笑いが浮かぶ。


「実際よ、レベルが上がるからってあれができるか? って問いかけられたらどう答えるよ?」「無理! 俺は無理!」「私もちょっとやりぬく自信はないかな、心がぽっきり折れそう」「心だけじゃなく体の骨がぽっきり逝きそうだわ。ほんと、拓郎はすげえよなぁ。だからレベル8ってレベルに到達しても納得しかない」


 と、ここまで話が進むと拓郎の方向にクラスメイト達の視線が向いた。そして一人が代表する形で拓郎へ問いかけた。


「拓郎、レベル10はいけそうなのか? まずます最近の訓練は追い込む感じになっているし、俺達も拓郎を大けがさせるぐらいの覚悟でやれってクレア先生やジェシカ先生に言われてるけどさ……俺達も拓郎のレベル10到達に協力できてるのか?」


 質問をぶつけられた拓郎は食後の片づけを行い、一息ついてから口を開く。


「1つづつ答えるぞ。まず一つ目、レベル10になるための道筋はできているよ。二つ目、皆との訓練は間違いなくこちらにとってもいい訓練になっているから感謝しているよ。そして三つ目、大けがさせるぐらいの覚悟でやれっていう点は気にしなくていい、それぐらいの覚悟が籠った魔法を受けないと、経験にならないんだ」


 拓郎の返答を聞いて、クラスメイト達からは感嘆したかのような声が漏れる。特に一番注目されたのは、やはりレベル10になるための道筋はできているという宣言だろう。レベル10は存在はするがたどり着けない頂のようなものなのだが、拓郎はそこにたどり着くまでの道はすでにあると言ってのけたのだ。


「レベル10になる秘策はありって事か」「クレア先生とジェシカ先生がついているからだろうけど、それでもすごい」「しかも普通のレベル10じゃないぞ? 基礎をしっかりと練ったレベル10だ、もし到達したら過去のレベル10を絶対上回るだろ」「クラスメイトからレベル10が出るか持って時点で、すげえワクワクする」


 などの会話が飛び交う。すでに教室の熱気はものすごい事になっており、窓を開けるクラスメイト。暑くてたまらないのである。


「レベル10って、確か死者蘇生ができるレベルだよな? 条件はいくつもあるけど、死亡してから時間が経過していなければ──」「正直夢物語レベルだけどね。レベル10で勝つ回復魔法に長けていることが最低条件っていう滅茶苦茶狭い門」「世界中から引っ張りだこだろそんなもん……人間国宝待ったなし」「「人間国宝ですら軽く感じるレベルだぞ」


 そんなとんでもない人間になる可能性を秘めた人間が、すぐ傍にいる。この熱狂は収まらず……この熱に突き動かされるクラスメイトが出てくるのは、ある意味必然だったのかもしれない。

どこまで続くか分かりませんが、気が向いたらお付き合いください。

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