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大学教授 吉田さん シリーズ

【三題噺】 留学生、歯科に連れてかれる。

作者: 井鷹 冬樹

《登場人物》

吉田 慎太郎 大学教授

ポンチョ   メキシコ人留学生

ジョン    アメリカ人留学生

前沢     歯科医

 大学教授の吉田は、講義を終えて、研究室でメキシコ人留学生のポンチョとアメリカ人留学生のジョンの三人で秋の味覚を楽しもうとスイートポテトを食っていた。

「オウ、オホホホホウ」

 いきなり、ポンチョが声を上げた。吉田はいきなりの声に何が起きたのか分からなかった。吉田はポンチョに何が起きたのかを教えてもらった。

「ワッツ、ハップン? ポンチョ?」

「奥歯が痛い(注:英語で話しています)」

「奥歯が? それは虫歯だな」

 ジョンはポンチョを心配した。

「大ジョーブかよ。オマエ? ちゃんと歯ブラシした方がイイぞ!」

「それ歯磨きな」

「オオ、ソレソレ。オマエはハミガキをチャントしてるカヨ?」

「勿論してたよ。やばい。すっごい痛いわ。これどうしよう?(注:英語で話してます) オウフッ!」

「こりゃ、駄目だな。ポンチョ、僕がいつもお世話になっている歯科医院があるからそこに行こう!」

 これを聞いたポンチョは、いきなりびっくりする。

「歯医者!? 勘弁してくれ~ 歯医者なんて行きたくないぜ!」

 講義での元気な表情とは違い、屈強な体型の男が子供みたいに怯えている表情のポンチョに、吉田は半笑いになりながらもポンチョを歯医者に連れて行く事にした。

「離してくれ! 俺は行きたくな~~い」

「はいはい。行くぞ! ポンチョ! ジョン、手伝ってくれ」

 ジョンもそれに応えて吉田に協力する。

「ハイハイ、ワカったね。ホラ行くよ! ポンチョ」

 吉田の車に乗せられて連れられた所は、前沢歯科医院という看板のついた建物。ポンチョと吉田、それについてきたジョンは歯科医院の中へ入っていく。

 院内は綺麗な内装で子供も安心できるぐらい落ち着いている雰囲気を醸し出していた。待合室には子供達が遊んで親の治療を待っていた。

 吉田はポンチョに受付で診察手続きをさせた。ポンチョも覚悟したのか吉田に言った。

「分かった。もう逃げる事も出来ないよな。治療してくるよ」

「そうだな。大丈夫だって、そんな諦めるような事ではないから安心しろ。痛くない。痛くない」

 ジョンもポンチョを心配させないようにエールを送った。

「気をつけてな! 大丈夫だって奥歯がドリルで削られる簡単な作業で終わりだから」

「その作業が怖いんだよ! ジョン!」

 ポンチョは、そうジョンに叫びながら苦笑いの歯科助手に連れられて奥治療室に消えていった。

 治療室は、何台ものユニット(歯科医院でよく見る歯科診療用の椅子)があり、ポンチョは助手の案内によりユニットに座った。簡易ナプキンをつけられて何が起きるのか分からないまま待っていた。

歯科助手がやってきてポンチョに質問する。

「今日は、どうされたんですかね?」

「???」

「あ、え~っと、どうしよ~ちょっとお待ちくださいね」

 奥の治療室から助手が出てきて吉田に近づく。

「すいません。英語使えますか?」

「ええ、まぁ・・・」

「ちょっと来てもらって宜しいですか?」

「はい。 ジョンちょっと待っといてくれ!」

「あっ、ワカッタよ。じゃあ、ココでマッテルね」

 助手は、吉田を連れて治療室に案内される。ジョンは、その間、待合室で時間を潰す事にした。すると6歳ぐらいの少年に声をかけられた。

「ねぇ、お兄ちゃん。ゲームできる?」

「ゲーム? モチろんね!」


 吉田が、治療室に入った時、ポンチョはユニットに座って待っていたが、ポンチョの顔はずっと青ざめていた。

「吉~田、ヘルプ!」

 そこにはポンチョがユニットに若干、涙目で座っていた。吉田は涙目のポンチョに訊いた。

「何処が悪いのか言ってみ?」

「奥歯が痛いけど! 早く何とかしてくれ! ここから早く帰りたい」

「分かった」

 吉田は助手にポンチョの歯について言った。

「奥の歯が痛いって言ってるみたいなんで、虫歯だろうと思います」

「分かりました。今から治療しますので少々お待ちください」

 歯科助手は治療の準備を始める。助手はポンチョに言った。

「じゃ、今から奥の歯がどんなか見ますね。口を開けてください」

 吉田は続けて英語でポンチョに言った。

「奥の歯を見るから、口を大きく開けろ」

 ポンチョは、吉田に言われるがままに、口を大きく開けた。

「ああ、これはひどいですね。 じゃ、治療行いますから、口を開けたままにしてください。麻酔を打ちます」

助手は、部分麻酔薬の入った注射を取り出し、ポンチョの口に向けて打とうとした。ポンチョはびっくりする。

「あ~~~~あ~~~~」

「うるさいぞ! ポンチョ、少しの我慢だ!」

助手の手により、麻酔を打たれ、ポンチョの奥歯はなんとも言えない感覚のしびれが起きていた。

「大丈夫か? ポンチョ? はっはっは」

「あ~~~~~~(吉田、覚えておけよ!)」

「じゃあ、少々、お待ちください」

 助手は、麻酔を打った後、奥の医療事務室へと向かって行った。するとすぐさま、筋肉隆々のゴツ目体型の男の歯科医がポンチョのところに座った。歯科医はポンチョを見て笑顔で言った。

「あら~~~可愛い外国人じゃない。あたしタイプよ」

「あっ?」

 ポンチョは、この歯科医がどういう人間かわからない状態だった。

「どうも前沢先生。お世話になってます」

 吉田は前沢に挨拶した。

「あら~~吉田ちゃんじゃない。元気ぃ? この患者さんの知り合いかしら?」

「ええ、うちの大学のゼミ生です。奥歯が痛いそうなんでやっちゃってください」

「虫歯ですって!? その響きを待ってたのよ! 腕がなるわね! 大丈夫よ~外人さん! あたしの素敵なテクニックで虫歯を抹殺してあげるから!!」

 前沢は、腕をポキポキと鳴らして仕事に取り掛かった。ポンチョは、吉田に向かって何か声を発したような唸り声を上げた。

「あ~あ~あ、あああ~~~(もういっその事、楽にしてくれ~)」

 前沢は、右手にタービン(虫歯を削るドリル)、左手にバキューム(よだれを吸い取ったり、タービンから舌を守ったりするもの)を構え、ポンチョの口に向かってタービンを奥歯に当てた。

 ポンチョの口内からドリルのような掘削音が、ポンチョ顔周りを通過して吉田の耳へと伝わってきた。

「アギャアグアガウギャギャギャウガウギャ」

「もう少しよ! もう少しの辛抱だからね!」

 前沢は、手を緩めなかった。そして、10分後に治療は終了した。

「はい。おしまいよ。よく頑張ったわね!」

 吉田もポンチョに声をかける。

「おい、終わったぞ! 大丈夫か? あっ!」

 吉田がポンチョに目を向けた時、ポンチョは白目で気絶していた。

「あららら、あたしの治療が少々荒かったのね。アハハハハ、まぁ、いいわ」

「でも、まだ限りなく直ったとは言えないんでしょう?」

「そうね。もう少し時間はかかるわね~来週も来るようにしてもらえるかしら?」

 吉田と前沢が話しているとポンチョがいきなり目覚めた。

「ブハァ、ワッ、ワッツ、ハプン!? なんで俺はここにいるんだ?」

「おお、起きたな! 治療終わったぞ」

 ポンチョは、この歯科医院にいた記憶が無かった。

「はっ? 治療? 何の?」

「えっ? ポンチョ、覚えてないのか?」

「何だよ? 何があったんだ? 吉田、教えてくれよ」

 前沢は一つの答えを出した。

「アハハハハ、あたしの治療のおかげでさっきまでの記憶が飛んでたのね。まぁ、思い出したくないわね。でもまだ他の歯も虫歯みたいだからこのポンチョちゃんは、治療には来させなさいよ! 吉田ちゃん!」

「はい。分かってます。ありがとうございました」

「えっ? 何、言ってるのよ。まだ終わってないわよ! 次はア・ナ・タ」

「えっ?」

吉田の背筋はいきなり凍りついた。ポンチョは簡易用のよだれよけを外して吉田に渡した。

「次はお前だ!」

「えっ? ちょっと、あ、あっ、やめっ、うわぁああああ」

 

 この後、吉田もポンチョと同じ目にあうのは言うまでもなかった。

 

 その頃、治療室で断末魔が聞こえる中、ジョンは、子供達と一緒に待合室でテレビゲームをしていた。

「オオ、ュー強イネー。マタ、マケチャッタよ」

「お兄ちゃんが弱いだけだよ!」

ジョンは、ポンチョの治療に時間がかかっている事でちょっと心配になっていたが、気にせず子供達とテレビゲームを続けていた。

「吉田、オソイな~~でも、マァ、イイや」


                      END


三題噺 大学教授吉田さんシリーズ三作目です。


まさかの三作目です。正直後悔はしてません。

今回のお題は、この三つ!! 「歯ブラシ」、「秋」、「メキシコ」の三題でございます。


この三つの単語を必ず用いて話を作るという事です。


難しかったのは、「秋」です。

これをどう利用するかに迷いが出ました。正直、秋が利用しやすいのでしょうけど僕にとっては難しかったです。



読んで、いただけたら嬉しいです!

できたら、感想や「もう少し、ここはこうすれば良かったのでは?」 の意見も頂けたら嬉しい限りです。


宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 三題噺にしては長くなりましたね。 歯ブラシの別の使い方は、機械部品を洗うブラシ 秋はスポーツ、モーターレース となると、メキシコグランプリ カーレースのメカニックの物語。 まったく違う話に…
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