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彦星こかぎの文章術  作者: 彦星こかぎ
一部:彦星こかぎの思う事
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5.脱「最強主人公」宣言

 どうもこんにちは、彦星こかぎです。前回、いくつか誤字があって申し訳ないです。

 最近、大学の文芸部の先輩(私よりもずっと格上。大師匠。最長老。)が「文章読本」を書き始めたそうです。やっぱり書きたくなるものでしょうか……

 構成論を主にやりたいそうです。


 さて。ここからは少し回数を使って、私の得意分野でもある「キャラクター論」を展開していこうと思います。

 キャラクターを上手く作ると、放っておいても話を作ってシーンを繋げてくれるのでかなり楽です。反面、キャラクターに愛を注ぎ込むのに慣れると(つまり今の私)ある程度話がパターンになってしまったりもするのですが……


 ところで、小説を書き始めるときに最初に考えることって何ですか?

 というのは、私にとっては非常に困った質問なんですが……というのも、常にリアルタイムで何か考えつつ、思いついたら字にするというような生活を続けているため、最初のきっかけが何処にあったか覚えていないことが結構あるわけです。

 人によっては多分、「こういう世界で起こるファンタジーが書きたい」とか「こういう関係の男女が恋愛する話が書きたい」というような明確な意思がある人もいるかもしれません。これはジャンルから入る人ですが、他にキャラクターを描いてから世界を作っていく人もライト系には多そうですし、キャラクターへの設定を思いつく場合もあるし、要するに色々なパターンが考えられていくんですね。

 私の場合は、強いて言うとあるワンシーンを思いつくことが多いです。冒頭かクライマックスか、または雑談しているところだったりするんですが、なにしろ「ある世界(未確定)」と「ある人物・人物達(正体不明)」が作っている「雰囲気」がまずイメージされるんですね。ま、私が世界観を最重視しているのもこの辺に理由があるわけですが……作品で「表現したいこと」が「雰囲気」とイコールになることが多いです。


 そろそろ本題に入りましょう。

 なぜ、「最強の主人公」がいけないのか。

 まぁ小説にタブーはありませんから、別にいいんです。主人公が何をやっても完璧で、敵なんか三国無双よろしく1対100でも余裕で勝てるような人でも。実際、小説なら菊池秀行の魔都シリーズ、漫画では「HELLSING」なんてその類です。

 が……

 とりあえず、お勧めはしません。

 何故か。


 「出来る」としてフィーチャーしたい要素を仮に「必殺技」ということにしましょう。これはアクション的な技のほかに、「超美形」「勉強が得意」「野球部のエース」というような、要するに分かりやすい長所を含みます。

 こういった特徴をキャラクターに与えた場合、二通りの使い方があります。

 まずは「前提条件」として与える場合。この場合は、主人公がその長所をうまく発揮している状態から始まるわけで、その「必殺技」はキャラクター設定の一つに含まれてしまいます。つまり、その「必殺技」だけではエピソードを作るのが難しくなってしまうわけですね、どんな話でも常にそうなんですから。

 他に、「クライマックスの要素」として、例えば強敵と戦ううちに新しい技を習得したりする可能性があります。もちろん上手くいけばそれだけで物語を収束に向かわせる強大なエピソードになりますが、私は苦手です……長編小説になってくると、必殺技を使わずにそこまで引っ張るのがだんだん難しくなってくるので。


 同様に「出来ない」ことを強調したい要素を「弱点」とします。別に「スペシウム光線に弱い」とかではなくて、「トマトが食べられない」とか「女の子を見ると緊張する」とか、「女子高生なのに演歌好き」なんていうのも含むことにしましょう。

 これは「前置きとして使う」か「途中で明らかになる」かが選択できますが、どちらにしてもクライマックスにはならない設定です。

 では、必殺技と比べてどこがよいのか、というと。

「繰り返し話題を蒸し返せる」点にあります。

 つまり、「弱点を突かれて、主人公が困惑→対象を追い払う/克服を図る/開き直る/そのまま戸惑っているところをオチにする」というような流れは、主人公が弱点を完全に克服するまで何度使っても大丈夫なのです。

 必殺技は主人公の見せ場で使うものなので、何度も使うと飽きてしまいますが、弱点はうまくやると非戦闘シーンの「お約束」になっていき、最低限のエピソードで話をつないでいくことが出来るわけです。


 もう一つの理由としては、キャラクターが作者のイメージとは正反対の性格を一つ持っていると、キャラクターに深みが出て面白い、というのがあります。

 話の中に小学生が出てきたとして、皆で楽しそうに走り回っているだけでは脇役に過ぎないでしょう。ところがその中に一人、妙におっさんくさい外見の小学生がいたら、どう考えても他から目立ってきてしまいます。これは極端なインパクトを与えた例ですが、主要キャラクターが他とは一味違うことを示すのに、「らしくない」性格というのはかなり使えます。

 もちろん、それがその世界観では特殊な性格なのだとはっきり分かるような工夫が必要で、それも結構大変だったりするのですが。


 そこで。

 私はキャラクターを設定するとき、設定段階で他人に見せなければならないとき(挿絵さんが別にいる場合や、人からの注文で書いている場合)に、絵付きのキャラ解説書を作るようにしています。そのときに文章でかなりの説明をするのですが、最後の一文で「蛇足」をすることにしています。そこで、キャラクターの意外な趣味だとか、日常的な性癖だとか、少し「弱点」か「弱点を演出する」要素をプラスすることにしています。

 弱点を演出する要素、というのは……例えばキャラにAとBがいるとします。そしてAの蛇足が「一番怖いものは毛虫」だったときに、Bの蛇足にその弱点を演出する要素として「人を驚かせるのは面白いので好き」としておくと、「Bが持ってきた毛虫を本気で怖がるA」という図が出来上がるんですね。日頃はAの方が頼りがいのある人物だったりすると、さらに効果絶大です。


 では、主人公を最強、弱点なしにしたい場合、どういう手法が考えられるでしょうか。

 ライトノベルの場合は、「キャラクターが読者全員に惚れられるようにする」というのが一手です。その最強キャラが体を動かすだけでキャーキャー言われるようなアイドルになれば、似たような必殺技を繰り返し使っても許されます。水戸黄門的な主人公ですね。

 他に、「新しい必殺技をどんどん登場させる」という少年漫画っぽい技もありますが、少年漫画の場合は主人公の性格をあまり完璧にはしておかないですよね。やたらよく食べるとか、熱血過ぎて失敗が多いとか、そういう部分に共感要素を作っています。

 他に、「必殺技」について、前後の事情にバリエーションをつけられるものを設定しておくことも出来ます。菊池秀行の「暗黒街戦士」という小説は、主人公が何をされても死なないのが特徴なのですが、毎回殺され方が派手なために飽きないようになっています。


 なんにせよ……

 キャラクターの設定を作る場合、「ストーリー中で何度も使える要素」をたくさん用意するに限ります。例えば「出生の秘密」では明らかにされた後は前提になってしまいますが、「大の甘党」という設定なら端々に利用することが出来ます。ストーリーを構成する大切な設定のほかに、いくつか蛇足があると視覚的な効果がよりプラスされ、作品世界も深くなるのではないかと思います。

 もちろん小説家にも読者にも、そういう馴れ合い的な蛇足や本編に関係ないエピソードを毛嫌いする人もいるので、その辺はケースバイケースでしょう。ただ、蛇足が多くなると悪乗りしすぎて本題になかなか入れなくなったりもするので、そこだけは要注意です。


 次回は更に細かくキャラクター設定をしてみます。

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