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彦星こかぎの文章術  作者: 彦星こかぎ
一部:彦星こかぎの思う事
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3.「起承転結」の使い方

 こんにちは。

 最近、作曲ソフトを導入しました。ちまちま遊んでます。


 さてさて。

 「起承転結」という言葉そのものはご存知ですか? これは元々、古代中国で四行の詩を書くときに使う手法でしたが、現在ではストーリー構成そのものをさす言葉になっているわけですね。詳しくは中学校などで教わった覚えがありますが、「起」で始まり、「承」で膨らませ、「転」で盛り上げて「結」でまとめる、という一連の流れです。

 正直な話、私自身はこんな構成で話を書いた事がありません。

 また、中国の詩か四コマ漫画でもない限り、各要素が同じくらいの分量で作中に配分される事もありません。


 ところで、「起承転結」が仮に小説構成の一種だとすると、これとは違う小説構成って何があるでしょう。

 例えば……「山なし、落ちなし、意味なし」と呼ばれるものがあります。……ええと、略すると「やおい」ですが、これは元々ファンフィクションを書くときによく用いられる構成であるため、一般的には「やおい小説」という言葉は、同人誌やアンソロジー、特にファンフィクションの中でもボーイズラブものを指すときに使われています。要するに、あまり(それが好きな人にも嫌いな人にも)嬉しくない言葉のようです。

 そういうひょっとすると禁忌に近い単語ですが、立派なストーリー構成の一種であるので、言葉そのものの意味から見直してみましょう。

 まずは「山なし」、つまりクライマックス、転の部分がない。

 そして「落ちなし」、エンディングがない。

 最後に「意味なし」、これは……テーマ性がない、としておきます。

 それでどうやって話を作るのか、と思いたくなるような要素のなさっぷりですが、ストーリー性を排除することによって見えてくる「起承転結」以外のディティールがあるわけです。


 というのも、「やおい」は本来ファンフィクションに多く使われる構成です。で、ファンフィクションの根底にあるのはもちろん「(既存の)ストーリーや世界観を愛する心」だと思うのです。

 それさえあれば、ストーリーにはなんのクライマックスもないとしても、十分物語世界を楽しむことが出来るのです。前回書いた「世界観」がここで大きく関わってくるわけですが、舞台の世界観とキャラクターのあり方がそれだけで快いものであれば、イベントを無闇に起こす必要もないのですね。

 私もファンフィクションを作ってもらえるような小説家になれれば……あ、関係ないか。


 「やおい」という言葉には抵抗があっても、「世界観を堪能することを主たる目的にした小説」という事にすれば、いくつか例が見つかると思います。このタイプは読者を飽きさせないために新しい小道具を随時プラスしていくことが必要ですので、連載ものの漫画や連作短編小説に多く見い出すことができます。

 最近有名になったもので言えば「蟲師」がそうですね。主人公は各話ごとに新しい場所と人物に出会い、「起こるべくして起こる」イベントが発生するわけですが、ストーリーのメインとなるのは生物と環境描写による独特の世界観そのものであると言えると思います。小説の例では、「キノの旅」なんかその類でしょうか。

 こういう物語はとにかく環境そのものが美しいので、映像化されることが多いようですね(前述二作ともアニメ化されています)。しかし、「蟲師」を映画化するのはちょっと無謀な試みだったのでは……というのも、映画というのは二時間しかないため、その時間内でのまとまりが重視されるわけです。実写映像は非常に美しいわけですが、二時間でまとめるにはそれなりに大きなクライマックスと後味のよい結末、つまり「やおい」に含まれていない要素をプラスしなければならないわけです。これをしっかり入れると、物語の持ち味である「ゆるい」世界観が台無しになります。しかし、だからといって結末にインパクトがないと、映画を観ても面白みが足りないように感じてしまうんですね。毎週三十分ずつじっくり楽しむならともかく……とほほ。

 昔の映画で「恐怖の報酬」というのがありますが、それは独特の世界観を作り出すために、何もイベントが起こらず主人公がダラダラ過ごしているシーンというのが冒頭から二十分くらい続きます。(このシーン、テレビで放送されるときにはかなりの確率でカットされるそうです。そりゃそうでしょう……)それは極端な例ですが、環境のイメージを作り上げつつ結末にスピード感を持っていくための苦肉の策だったのでしょう。もちろん、ある程度インパクトのあるイベントが起こりうる世界観だったから可能な技ですが。


 ちょっと脇道にそれた感じですが、無理矢理戻しましょう。

 ひとまず……旧知の事実ですが、単純な「起承転結」だけで作られる構成には限界があります。また、無理に世界観を作り出そうとして冗長になってしまったり、クライマックスを作ろうとして無茶なイベントを連発させては元も子もありません。

 設定の魅力はもちろん必要ですが、自分がどういったものを書きたくて、それを実現するためには何を重視すべきなのか常に考えておくとかなり違うみたいです。

 私の場合はどうかと言いますと、書くとき特に「テーマ」というかメインとなるものを考えないので、基本的にはあまりオチがありません。ただ、ドタバタする話が好きなのでクライマックスになるイベントはそれなりに考えますね。で、全体的にはしっかり起承転結にはせずにゆるくまとめます。無理矢理言葉を作ると「起転承転結」とか「起承転転結」なんていうのが好きですね。起はそんなに長くなく、転にがっつり分量を使います。

 で、各場面ごとの描写はしっかり起承転結にする事が多いです。新しい場所に来て、何かしていたらイベントが発生してそれをクリアする、という流れはかなり使えます。


 文章構成では他に「序破急」という、起承転結の発展のようなものもあったりしますが、どちらにしても型にはめるというよりは上手く利用していくことが大切だと思います。


 次回は、もう少し内容的な話を書きます。

 ではまた。

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