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彦星こかぎの文章術  作者: 彦星こかぎ
一部:彦星こかぎの思う事
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2.最強の技術「世界観」

 こんにちは、彦星こかぎです。

 最近オフラインで脚本の仕事を頼まれたのですが、これがかなり難題です……明確なクライマックスとはっきりしたテーマ性、などという、私が最も苦手とする内容が盛りだくさんです。


 さてさて。

 今日のお話は「世界観」について、ですね。

 サブタイトルの通り、これさえきちんと考えてあればまず大失敗はしない、という最強のテーマです。とはいえ、「俺ファンタジー書かないから関係ないんじゃね?」と思う人もいるかもしれませんが、全然そんな事はありません。


 世界観、というのは、ファンタジーを書く時に必須の要件である「世界設定」とは微妙に意味の違う単語です。しかしこの二つが密接に関わっていることは確かで、面白い世界設定はそのままよい世界観を作り出すことが出来ます。しかし世界観そのものは、ファンタジー要素の全くない物語……例えば「公立高校サッカー部の恋物語」というような小説においても重要になってきます。


 それでは、早速世界観に関する知識を深めるために、とりあえず最高度に完成された世界設定である、「指輪物語」の舞台「中つ国」を考えてみましょう(読んでなくても大丈夫です)。

 まず「中つ国」の世界設定ですが、これは単純に言うと、「広大な、やや内陸の土地の中で、エルフ、ドワーフ、人間、ホビットなどがそれぞれ別の土地に住んでいる(おそらく有史以前の)ヨーロッパ世界」という風になると思います。あらゆるファンタジーやRPGゲームの元となった世界であり、指輪物語を読んだことがなくともどことなくイメージしやすい設定なのではないかと思います。

 指輪物語の第一の功績がこの世界設定を生み出したことにあるというのは、ファンタジー大好きな私の意見ですが、第二の功績というのが、その世界設定を生かした世界観、ということになるわけです。

 例えば作中には、「エルフが住む家」や「悪い魔法使いの住む塔」といった印象的な建物が多く出てきます。また森もいくつか通り抜けることになりますが、それぞれの森の管理者によってその印象は大きく変わり、まったく違うイベントが起こります。

 その風景や空間が世界設定とその場所に住む人の性格設定に似合っているな、と感じたり、そこで起こったイベントがその空間であれば起こるに違いない、起こってもおかしくないと感じられて、更にそのイベントに対する登場人物の対応がいかにも登場人物らしいものであった場合に、はじめて「世界観が確立されている」という状況が作れるわけです。


 別の例を考えてみましょう。

 学園ものというのは、一度は書きたくなるような典型的なテーマ(そのために私はこれまで敢えて避け続けてきましたが)ですが、全ての学園ものをひとまとめにして考えることは出来ません。

 例えば……自分の実際に体験したことをベースに学園小説を書くとしましょう。そこで、あなたが最初に思い出す「場所」はどこですか?

 運動部出身者ならグラウンドだったり、薄暗い部室だったりするかもしれません。あるいは図書室や美術室だったり、教室だったり学食だったり、あるいは屋上だったり通学路だったりゲームセンターだったりするのでしょうか。とまあ、こんな風に、考える人の数だけ答えがあるわけですが、それでは次に、そうやって思い出したリアルな学園の風景を作中に生かしていく方法を考えましょう。

 つまり、あなたの物語を読んだ人が、あなたが学園として思い出す要素……暑いグラウンドがどれくらい暑かったのか、学食にはどんな空気が漂っていたのか、屋上の風はどんなに気持ちよかったのかを理解できるようにしなければならないのです。

 それが、いわゆる「世界観を作る」作業になるわけです。


 特に人気の高いアクションファンタジーのような作品を作ろうとすると、ついキャラクターの設定や主要人物間のみの関係に気をとられて、全体的な世界観を見失ってしまうことがあります。

 同じように主人公が裏町で敵と戦う物語であっても、その裏町がそれなりに景気のよい港町なのか、裏町とは言ってもそこそこ大都会に面した「治安の悪い下町」なのか、それとも本当に犯罪者しかいないようなゴーストタウンなのか……そしてどのくらいの格好がちょうどいい気温なのか、雨は多いのか、日没は早いのか遅いのか……そういう細かい部分がちゃんと決まっていて、それが小説の端々から伝わってくると、物語の世界観が確立されていくのです。


 もちろん作中で世界観を作り出すには、物語を書く前にある程度のイメージがなければいけません。それも、そんなに細かく設定すると逆にくどくなってくるので、街(または校舎など、舞台となる場所)の様子がきちんとイメージできて、空気の匂いだとかよどみ具合だとかが想像できる程度がよいでしょう。

 特に、視覚的なイメージ以外で風景描写があると、一気に世界観がつくことがあります。これは私が映画に関わって初めて分かったことですが、ごく普通のシーンでもかなり周辺にはノイズがあったり、場所ならではの物音がしたりするわけです。例えば森の中なら野鳥の声とか、学校の中ならランニングする野球部の掛け声とか、そういう「環境音」があると雰囲気がつきやすいそうです。もちろん同じ森の中でも、主人公が気味悪く感じているなら野鳥も「グエッグエッ」とか気色悪く鳴くといいですし、綺麗な森なら「ピーチチチッ」と軽い感じでさえずるとイメージが出てきます。更に文章なので、匂いや感触など視聴覚以外の描写も簡単にプラスできます。


 ある程度イメージをつけておく、というのは登場人物に対しても必要な作業です。詳しくは今後書いていこうと思いますが、基本的な設定以外に、その人が空間にいるとどういう雰囲気が流れるのか、という事を頭に入れておくと面白くなるかもしれません。


 次回はストーリー構成について書こうと思います。

 では!

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