11.R指定小説のすゝめ
今回はいきなり扇情的なタイトルでの登場ですが、彦星こかぎです。
実際に読者の皆さんの年齢層というのがいまひとつよく分からないのですが、「R指定」という単語から説明する必要はないですよね。
いわゆる「暴力的描写」がある作品は「R15」、そして「性的描写」のある作品は「R18」とされ、それぞれの年齢以下で観ることは許されていません。
私が小説を書き始めたのは13歳だったので、このエッセイの読者にもまだR15の小説も読めないという方も結構いるかもしれません。それでも、どういう内容かの想像がまったくつかないという事はないと思います(興味の有無はまた別の問題としましょう)。
で、今日のタイトルは「R指定小説のすゝめ」。すなわち、その年齢に達している人は、是非一度R指定小説を書いてみましょう、というお話です。
何故そんな過激な発言をするのか、というような反応もあると思いますが、少し考えてみてください。
どんなに「暴力的描写」があったとしても、児童虐待を実録した本がR15になることはありませんよね。また、巷のラブストーリーには性愛的な描写がどうしても含まれてくるものですが、だからといってそれらが即R18に指定されているわけではありません。
どうやらR指定と言うのは、描写される行為(暴力や性愛)そのものが持つショッキングな要素を規制しているわけではないようです。
そこで今度は、「18禁」という単語の持つイメージを考えて見ましょう。なにやらいかがわしい、怪しい雰囲気が漂ってくるように思います。
また、私がちょうど中学生だった頃、「バトルロワイヤル」という15禁の小説(と映画)が話題になりました。これも、ドロドロとした暴力表現が特徴の、暗い雰囲気を持つ作品です。
それでは、R指定小説に共通した特徴とは何なのか。
私はそれを、「快楽性の追求」ではないかと考えています。
ある意味嘆かわしいことではありますが、人間は暴力的な表現を見てスカッとしたり、流血沙汰のスリリングさに快感を覚えたりするわけです。また、性愛に関する物語に快楽を求める事も、人間と言う動物のありふれた活動なのです。
その中でも特に、その行為に対しての快楽に関する描写を中心とした小説が、いわゆる「R指定小説」になるわけですね。まだ経験が浅く道徳もしっかりしていない(分かりやすい指標として一定年齢に達していない)人間が、その快楽にすっかり酔ってしまったり、それが進んで実践に移してしまったりすると大変ですから。
逆に言うとどういうことでしょう。
R指定小説を書くならば、酔うほどの快楽性がなければどうしようもない、という事です。そしてこれは、初心者小説家にとって残酷すぎるほどの基準です。
書いてみて、読み返して、あまり気持ちよく感じなかったら、それはもう小説として失敗しているのです。どうしようもありません。
しかし……
じゃあ自分が気持ちよければそれでよいのか、という事になりますが、決してそうではありません。独りよがりではやっぱり面白くありません。
「暴力」にしても「性愛」にしても、たった一人の登場人物がその快楽性を表現することは出来ません。常に「行為する人」と「行為される人」がいるわけで、そこに二つの人格があるはずですよね。
作者の快楽だけを追及した暴力表現というのは「一人でリストカット」するのと同じで、決して一般的な快感には繋がりません(性愛についても同様の例えが出来ますが、二十歳の女子大生がここに書く内容ではないので省きます)。
あらゆる性格の人が気持ちよく読める小説、というのが、R指定の有無に関わらず一番大切だと思うのですね。
ただ、どうしても好みの方向が(特に男女で顕著に)違うので、経験を重ねていく必要があるのではないかと思います。
私は、個人的には自分の事を「男っぽい女性」であると認識しているのですが(ラブストーリーが苦手でSFアクションが大好きな辺りとか)、やっぱり書いた作品について女性的だと言われたり、女友達にだけ好評だったりするわけです。そこから出発して、誰もが面白いと思える小説を書けるように考えていくことが出来るのではないかと思います。