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9.文章を改良しよう(前編

 お久しぶりです、彦星こかぎです。

 学園祭の準備に手一杯な毎日でした。


 今回は具体的なレトリックに関するお話。

 レトリック=技法というのは、「執筆中に意図的に使うもの」ではありません。本当は、書いていると自然に技法的に優れた、つまり読みやすく面白いものになるだけの経験値があればそれが一番よいのです。しかしそうも出来ない場合、技法を知っていて、「このようにしている場合」と「していない場合」の違いが分かっていれば、修正の手だてが生まれます。

 では、簡単な例を挙げて考えてみましょう。


状況: 

 主人公Aのクラスでは学園祭での催し物について相談していた。

「やっぱり今年は食べ物屋だよな」と、(気配り上手の男子)B。

 議長のCは、「何か決まったムードがあるといいね」と言う。それに対してAは、

「じゃ、メイド喫茶か?」と提案した。

 するとそこで、(天然少女の)Dが言った。

「じゃあA君にメイドの格好してもらおうよ」

 クラス全員が大笑いした。


……はい。私が高校時代に書いたショートストーリーのあらすじです。

 これを、もっと面白く感じられるように書き直してみましょう。


 まずは「掴み」です。

 最初の一行には、状況が一目で予想できるような、かつインパクトのある内容を持ってくるのが基本です。なんといっても掴みですから。

 そこで、クラスの雰囲気を象徴している「B君の台詞」を文頭に移動させましょう。


改良1:

「やっぱり今年は食べ物屋だよな」

 主人公Aのクラスでは、学園祭での催し物について相談していた。そのBの言葉に議長のCも頷いて、

「何か決まったムードがあるといいね」と言う。それに対してAは、

「じゃ、メイド喫茶か?」と提案した。

 するとそこで、Dが言った。

「じゃあA君にメイドの格好してもらおうよ」

 クラス全員が大笑いした。


 どうでしょう? かなりそれらしくなったのではないでしょうか。ちなみに今、台詞の位置を変えた事で他の文も変化していますが、これについては今は適当でよいでしょう。

 次の修正ポイントはラストの文、「落ち」です。「クラス全員が大笑いした」では、欠片も面白くありません。

 どうするか。

 「大笑い」をもっと具体的に表現してみましょう。

 小学校の国語なら「どっと笑い声が上がった。」くらいが妥当かもしれません。クラスの中に特に重要な人物が他にいないなら、このくらいで十分でしょう。

 ただそこで私ならどうするか、と言えば……おそらく「誰か一人の言動に描写をしぼる」というのが無難な処理でしょう。

 たとえば議長のCちゃんは実はとても笑いの沸点が低く、すぐに息が苦しくなるほど笑ってしまう。とすると、最後の文を


・その言葉にCは勢いよく仰け反ったかと思うと、

「ぐはははははっ!」

 これでもかとばかりに奇声を発しながら、教卓に平手をバシバシと打ち付けた。


 というような具体的な表現にすることができます。これだけ笑っているなら尋常じゃないでしょう。また、笑い声を「奇声」と表現するようなオーバーさも必要です。


 もう一つの解決策は、これとは逆に「間」をとるという表現です。

 クラス全員が何に笑っているかと言えば、Dの「Aにメイド服を着せよう」という発言なわけで、これが非常にインパクトのある台詞であるはずなのです。

 そこで、最後の分よりもこのインパクトのある台詞を強調させ、最後の文はもっと端的にあっさりさせて、読者に雰囲気を類推させるようにしてみましょう。


改良2:

「やっぱり今年は食べ物屋だよな」

 主人公Aのクラスでは、学園祭での催し物について相談していた。そのBの言葉に議長のCも頷いて、

「何か決まったムードがあるといいね」と言う。それに対してAは、

「じゃ、メイド喫茶か?」と提案した。

 するとそこで、Dが言った。


「じゃあA君にメイドの格好してもらおうよ」


 クラス全員、大爆笑。



 どうでしょう? こういう表現もあります。

 ここまでが基礎編です。応用は後編で考えましょう。

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