Page-12 日和の悔恨
時は少し遡る。
是洞日和は悔やんでいた。
――マズったわ。どうしましょう?
大金を握らされて浮かれてたとはいえ(あの後三百万ぼったくった)、まさかアドリアンが〝曝露〟の魔導書を持ち出してくるとは思いもしなかった。
日和が上級魔術師だったことが災いし、その抵抗力から『どこにあるか』の質問に対して所持している真夜ではなく、持ち主である月葉のことを喋ってしまった。
真夜だったら日和がここまで悩むことはなかった。しかし、月葉だと話は別だ。
彼が物理的に一般人を傷つけるとは考えたくないが、あの手の魔術師はどんなことをしても目的の物を手に入れようとするだろう。
アドリアンの魔書閲覧ライセンスは二級だ。そして〝曝露〟の魔導書も二級。人を意のままに操るような力を持った魔導書はまず持っていないと考えられる。だが、まだ魔術師見習いですらない月葉に対してだと〝曝露〟だけでも強力過ぎる。
月葉に連絡を取りたいところだが、生憎と彼女は携帯電話を持っていないらしい。
大丈夫だとは思いたいけれど、念のため対策は打っておかなければ安心できない。
日和は会計台に放置していた携帯電話を手に取り、登録していた番号にかける。
「もしもし、真夜? うん、ちょっとめんどくさいことになっちゃって」
簡単に状況説明をし、通話を終える。
日和は会計台上のノートパソコンを見る。
――書いてる場合じゃないわよねぇ。
パソコンをスリープ状態にし、一応店の防犯術式も稼働させ、日和はアドリアンを探して外へ飛び出した。
短いので昼ごろにもう一話更新します。