ネットストーカーの唄
『ネットストーカーの唄』
愛染屋 東絹
私は好きな人の顔を知らない。本名も、ラインのIDも住んでいる場所も知らない。知っているのは声とアイコンの狐のイラスト。
それなのに、私は彼に恋をした。
彼は、ユーチューブで活躍するアーティスト。その姿は公開されていない。ただ、アカウントのアイコンの部分にトレードマークとなる白い狐のイラストがあるだけだ。お稲荷様にいるような狐。
初めて彼の歌声を聞いた時のことは今でも覚えている。透き通るようなバリトンボイス。
張り裂けそうなシャウト。優しいメロディに乗る切ない声。その全てが狐のアイコンを通じて私の心にダイレクトに刺さってくる。こんな感覚は初めてだ。
衝撃を受けたその日から、彼のことを検索する日々が始まった。彼の名前は『ぺけ』という。ユーチューブのほかに、インスタグラムとエックスもやっていた。インスタグラムでは彼が行ったご飯屋さんの写真が主に載せられていた。どうやら、東京に住んでいるらしい。
――東京に行けば会えるかもしれない――
埼玉人の私は、小さな可能性に胸が躍った。
エックスの方では、思わぬ収穫があった。彼はSNS内で実際にファンの子たちと交流していたのだ。まだ彼のフォロワーは三千人程度。可愛いアイコンの女の子たちは彼のアカウントにあの手この手で話しかけ、彼もまたその一つ一つに丁寧に返信をしていた。
――こうしちゃいられない――
私はすぐにエックスのアカウントを作り直し始めた。生成AIで可愛い女の子のイラストを作成する。栗色の髪でお目目がきゅるきゅるとした、今風の女の子のイラストが吐き出される。
――よし、このイラストをアイコンにしよう――
次はプロフィールだ。できるだけ可愛らしく。
『都内の大学に通う十九歳。音楽と美味しいものと動物が好きです』
嘘。本当は二十八歳のうだつのあがらない会社員だ。彼はいくつなんだろう。好きなタイプは、年齢差はどこまで大丈夫なんだろう。
震える手で確定ボタンを押す。十九歳の女子大生、まりちゃすのアカウントが完成した。
――これで、戦える――
早速、彼のアカウントに話しかけに行く。
『こんにちは、まりちゃすと申します。ユーチューブの曲を聴いてファンになりました。エックスのアカウントを見つけられて嬉しいです』
恐る恐る送信ボタンを押す。
――見てくれるよね……――
何度もスマホを開くが、彼からの返信は来ない。
――明日の朝になればきっと――
諦めて布団に潜り込む。
――朝になったら彼から返信が来ていますように――
祈るような手の中にスマホを閉じ込めて、私はきつく目を閉じた。
「う……ん……」
アパートの窓から差し込む日の光が、カーテンの隙間を通って瞼に刺さる。
「返信……」
スマホの表示を見る。通知は、ない。
胸の奥にズキリとした鈍い痛みが走る。
「このアカウントじゃ、ダメなの……?」
一人暮らしの散らかった部屋に暗い声が落ちる。ため息をつきながら、私は会社に行く支度をした。
『通知あり』その表示が出たのは昼休み。震える手でエックスを開く。
『こんにちは、まりちゃすさん。リプありがとうございます。僕の曲を聴いてくれてるなんて嬉しいです。今夜七時からスペース開くので良かったら遊びに来てくださいね』
スペース?何のことだろう。意味は分からないが、彼と意思疎通ができたという事実だけで体温が上がり、胸がどきどきした。こんな高揚感、感じたことない。
「鈴木先輩、嬉しそうにスマホ見つめてどうしたんですか?彼からのラインですか?」
新卒の金田さんにニヤニヤと話しかけられる。そうだ、彼女なら。
「ううん、そういうのじゃないんだけど……ねぇ金田さん。スペースって意味わかる?エックスの」
「スペースですか?音声チャットみたいなやつですよね?オンライン上でみんなでお喋りするやつ」
――みんなでお喋り――
実際に彼と直接話すことができるかもしれない、そんな可能性に全身の血液が沸き立ってくるのを感じた。
「スペースが、どうしたんですか先輩」
「ううん、何でもないの」
怪訝そうな金田さんに、なるべく嬉しさを押し殺して答える。今夜七時に彼と話せるかもしれない、そう思うと午後は仕事になりそうにない。
午後の仕事を気もそぞろに終わらせた私は、
飛ぶようにして定時に帰る。折り畳みテーブルの上にスマホを置き、正座で七時になるのを待った。
ふっと、タイムラインの上の方に文字が現れる。
『ぺけさんのスペース』
震える手でその文字をタップする。画面が開かれると、あの優しいバリトンボイスが流れてきた。
「いまからぺけのスペースはじまりますよー。良かったらみんな聞いていって下さい。話したい人はスピーカーボタン遠慮なく押してね。順番に承認していくから」
スピーカーボタン?どれだろう。左下にマイクみたいなマークがあるのに気が付き、タップしてみる。
『スピーカーが承認されました』
画面上に表示が出た。
「まりちゃすさん、初めましてだね、承認しました。スピーカー上がっておいでー」
心臓が喉までせりあがる。鼻血を噴き出しそうだ。
「は……はじめまして」
自分の声が震えているのが分かる。
「来てくれてありがとうね。可愛い声。昨日もリプくれてましたよね」
身長百五十五センチ六十五キロで一重瞼、お世辞にも美人とは言えない私だが、声だけはいつも褒められるのだ。ああ、神様。この声にしてくれてありがとうございます。
「はい、曲が好きでいつもユーチューブ聞いてます。『メリーゴーランド』とか」
私のアイコンと彼のアイコンが並んで表示されている。これは、二人で並んで座っていることと何が違うんだろう。
「まりちゃすさん。『メリーゴーランド』の他にも今日新曲『一番星』アップしたからまた聞いてくださいね」
「はい!」
「スピーカー初めてなのに上がってくれてありがとうね、じゃあ次、れいらさんスピーカー承認しましたので上がってきてください」
あっという間の会話だった。まだ心臓がどきどきしている。でも。
――このれいらってアカウント、ずいぶん親しそうじゃない……?――
ぺけさんは、私には敬語だったのにれいらにはタメ口交じりで冗談をいう。二人の笑い声が、アパートの部屋に響く。れいらのアカウントの画像を拡大して見る。横顔の自撮り。
白い肌に整ったフェイスライン、長い黒髪。はっきり顔は見えなくてもいわゆる『爆美女』
だということが分かる。
――こんな美女がぺけさんの隣に――
冷たい汗が首から滴り落ちる。
次の日から『れいら』のアカウントを探る日々が始まった。『れいら』は、どうもぺけさんの古くからのファンらしい。遡る限り、三年前から二人の交流が始まっていた。交流しているのはあのスペースだけじゃない。ときにはおはようからおやすみまで、他愛のない話が続いている履歴がある。体中の血が沸き立つ感情、胃がねじ曲がり、苦いものがこみ上げてくる感覚。嫉妬で、気が狂いそうだ。もう一つ分かったことがある。彼女も東京に住んでいる大学生。アカウントを辿って見つけた彼女のインスタグラムの中には、華やかなアフタヌーンティーやブランド物、ナイトプールの写真が華々しく飾られていた。生成AIで作った私とは違う、本物の匂い。
――なんでも持っているのに、ぺけさんまで持って行くなんてずるい――
現実で華やかに生きられる女は、同世代の大学生とでも勝手に青春してればいいんだ。私の世界には、ぺけさんしかいないのに。
ふと、彼が昨日言っていた台詞を思い出す。
「今日新曲『一番星』アップしたからまた聞いてくださいね」
ひょっとしたら、この曲の中に何かヒントがあるかもしれない。彼の思考に潜り込めるようなヒントが。
ユーチューブを起動し、検索をかける。
――あった、『一番星』――
再生ボタンを押すと、切なさと激しさを抑え込んだような彼の歌声が流れてきた。
沢山の人の中で
一番星のような君をみつけた
この気持ちはきっと必然の未来
僕の気持ちが、言葉が
いつか君に届きますように
「ああ……」
涙が零れ落ちる。これは私のこと。私の為の歌。彼は、初めから大勢のアカウントの中で私を見つけてくれていたんだ。交際確率は九十パーセント以上。勝ち確の恋。将来のぺけさんの奥さんは、この私。
「彼にも、早く伝えてあげないと。両想いだって」
部屋に独り言が響く。もっと知りたい、彼のこと。もっと知ってほしい、私のこと。その為にはもっともっと彼に接触しなければいけない。
「あの邪魔なれいらにもわからせてあげないと」
私は、この恋愛が新しいステージに移行していくことを肌で感じていた。
次の日から始まるSNS検索の日々。ぺけさんのアカウントには朝晩おはようおやすみのコメントを。そして、大学ノートに彼の行動を少しずつ書き連ねていった。彼の起きる時間。リプをくれる頻度、感覚。行ったご飯屋さんの名前、交友関係のあるアーティストの名前。よく絡むアカウント。れいら用にも別で一冊ノートを作った。彼女の交友範囲、好きそうなもの、行った場所。親しそうなアカウント。
一つ一つ掬い上げた情報をノートに書き連ねると、それをワードでまとめて生成AIに投げる。だんだんと、ぺけさんとれいらの輪郭が浮かび上がってきた。
まずぺけさん、彼はおそらく杉並区に住んでいる。使っている路線は西武新宿線で駅前のコンビニエンスストアにはかなりの頻度で立ち寄り、コーヒーを買っている。好物は中本の激辛ラーメン。仲のいいアカウントは、Vチューバ―の『魁・男梅』このアカウントの人物とはよく食事に行ったりするらしい。
次にれいらだ。彼女は横浜近辺に住んでいる可能性が高い。おそらく横浜線のどこか。
アフタヌーンティーの他に、エスニック料理も好きらしい。女友達が写真に写っていることもあるが、大抵は一人だ。おひとりさまが好きなわけではなく、あまり写真には残したくない人種の男性と行動しているのだろう。また、高い店やブランド物を頻繁に上げているのに働いている気配がまるで見えない。きっと、人には言えないいかがわしいことをして稼いでいるに違いない。
「教えてあげなきゃね、ぺけさんに」
だがどうやって教える?私が直接言うのは無しだ。例え事実だったとしても、そうしてしまうと私が『ファン仲間の悪口を言う痛い女』
になってしまう。また、れいらが自分の非を簡単に認めるとは思えない。
「そうだ、この方法なら」
とびっきりの考えが頭に浮かぶ。すべては、私と彼の幸せな未来の為なんだ。その為には少しでも障害となりそうなものは排除するに限る。
「待ってて、うふふ……」
六畳のワンルームに、私の笑い声が反響した。
翌日から私はさらに忙しくなる。エックスのアカウントを複数作り、一つ一つに生成AIで作ったアイコンを貼り付ける。一つ一つに違ったプロフィールを書く。
「ふぅ……」
私は出来上がったアカウントを眺めて一息ついた。ここまで作りこめば、これらのアカウントが私だとはバレないだろう。
「さて」
作ったアカウントにログインし、メッセージボックスを開く。
『れいらさん、パパ活やってますよ。気を付けてください。こんな人と仲よくしていると、ぺけさんの品格まで疑われそうで心配です』
「よし、送信っと」
他人のふりをしたアカウントで作ったメッセージを、ぺけさんに送信する。
「これで、大丈夫」
きっと、彼は気づいてくれるはず。幸せな未来を思い浮かべて、私はえもいえぬ幸福感に包まれた。
それから数日間経っても返信はこない。れいらはいつものようにぺけさんに絡み、ぺけさんが強く拒絶するそぶりもない。私はひどくやきもきした。
――人気者のあなただから……仕方ないけど……――
大好きな彼が、知らない女の子にちやほやされるのはつらい。
「ちょっと早いけど、もう少し私も積極的にならなきゃいけないのかな」
『想いは言わなきゃ伝わらない』彼の歌う曲の歌詞を思い出す。彼は、私の愛情に確信が持てないだけなのかもしれない。そういえばエックスでもスペースでも、私は緊張して無難な会話しかしていなかった。
「想いは言わなきゃ伝わらないよね、わかったよ」
彼のアイコン、狐のイラストを撫でながらそっと呟く。彼は私の想像以上にシャイで、想いを実際に口にするのがへたくそなのかもしれない。もっと早く、気づいてあげられれば良かった。
私は迷いに迷いながら、ぺけさんに送るダイレクトメールを打ち込んだ。
『まりちゃすです。初めてのダイレクトメールで緊張してますが……正直、ぺけさんのことが大好きすぎて気が狂いそうです。今度、ご飯とか一緒に行ってくれませんか?』
ごくりとつばを飲み込み、送信ボタンを押す。
すぐに既読が付いた。
――読まれた!――
ついに私の気持ちが、ダイレクトに届いてしまったのだ。不安と後悔と期待が気持ちの中で入り混じる。待つこと一時間。彼からの返信が、ついに来た。
『まりちゃすちゃんいつもコメントくれてありがとう。ダイレクトメールも嬉しいよ。そんなに想ってくれるなんて。ご飯は忙しいからなかなか行けそうにないけど、またスペースに話に来てな。まりちゃすちゃんの声、可愛くて大好きだよ』
「ああ……」
私はスマホを握りしめ、膝をついた。
彼は食事に行く暇がないほど多忙なのに、スペース上だけでも私の声を聴きたいと言ってくれているのだ。私のことが大好きだからと。これが、彼の想いでなくて何なのだろうか。彼はついに、私の想いに応えてくれたのだ。
思えば私は、人に愛されたことがなかった。
シングルマザーだった母親は働きづめで、私のことはほとんど放置。貧乏で流行り物は何一つ買って貰えなかったせいでクラスメイトの輪に入れなかった。小太りの体型のせいで陰で悪口を言われ仲間外れにされ、そんな私だから、恋人なんてこの歳になっても当然できたことがない。そんな私に、神様は彼からの愛情という人生最大の贈り物をくれたのだ。
「ご飯を食べにいく暇がないほど忙しいなんて……じゃあ、ご飯を作ってあげないと」
人に合わせてもらうことを望んではいけない、自分から合わせていかなきゃ。決意を新たに私は彼の行動を記録したノートをめくった。
次の日曜日、私は買い物袋を抱えて西武新宿線の井荻駅に降り立った。あれから、何度も彼のエックスを遡り行動と写真を抽出し、生成AIに投げ続けた。気が遠くなるほど演算を繰り返し、彼と仲の良いアカウントも徹底的に洗い出しをする。そして、この結果がこれだ。彼は西武新宿線の井荻駅を最寄り駅としている。
そして日曜日は、大体このくらいの時間に帰ってきて駅前のコンビニでコーヒーを買うのがここ半年の彼のルーティーン。幾度も生成AIと協議を重ね、今日この時間に彼がここに来る確率は八十五パーセントという結論に達した。
――ここだ――
彼のポストに出てくるコンビニが、実際に目の前にある。それだけで胸がいっぱいだ。
――今私、彼と同じ匂いを吸ってる――
嬉しくて思わず深呼吸をした。彼の顔は知らない。でも、私は彼を見分ける自信があった。
私と彼が出会ったのはきっと運命だからこのコンビニに来た瞬間きっと惹かれ合う。
ふと、目の前を黒髪の細長い男が通りかかった。細身のデニムに黒いTシャツ、黒いマスクで顔は見えない。
「……!?」
私は目を見開いた。彼の背負っているリュックに狐のキーホルダーが付いていたから。あのアイコンと同じ、お稲荷様の白い狐。
――見つけた!!――
「ぺ……」
私が声をかけようとしたその時だ。
「ぺけー!」
ぺけさんに、鳥ガラみたいな茶髪女がまとわりつく。誰、その女。
「その名前で呼ぶなよ、男梅って呼ぶぞ」
あの声は、間違いない。やっと会えた嬉しさに涙が出そうだ。
「えー」
男梅と呼ばれた鳥ガラ女が膨れる。かわいくない。
二人はいちゃいちゃと手を繋ぎ、歩いていく。慌てて私は後をつけると、二人は近所のアパートに消えていった。急いで私は、表札と部屋番号を確認する。
男梅、という名前には覚えがある。多分Vチューバ―の『魁・男梅』だ。アカウント名で男だと思い込んでいた私の失態。声をちゃんと確認すべきだった。
買い物袋がばさりと下に落ち、中からトマトがころころと転がり出た。今日サラダに使うはずだったトマト。本当は今頃、彼の部屋で手料理をふるまうのはあの鳥ガラ女じゃなく私のはずだったんだ。転がったトマトは、アパートのすぐそばのゴミ置き場にぶつかり止まる。ゴミ置き場にまだ回収されないゴミ袋が山積みになっていた。
「ゴミ袋……」
私はゆっくりとゴミ置き場に近づく。ゴミ袋の一つを手に取り、中身を開けた。今日は燃えるゴミの日らしい。開けた袋から、生ごみのツンとした匂いが漂う。でもそんなこと言っていられない。
「違う……これじゃない……」
次の袋を開ける、これでもない。その隣の袋はどうだ。
「あった、これだ……」
ゴミの中には、区役所からの封筒が捨てられていた。表書きの住所は、彼が消えていった部屋の番号。つまりここに書いてある名前は、彼の本名。
「石田春樹くんっていうんだ……」
また一つ彼のことを知り、生ごみまみれになりながら思わず笑顔がこぼれてしまう。
「結婚したら石田まり、だね……」
幸せな将来を思い浮かべて、私はうっとりとしてしまう。ゴミの中には、まだまだ彼が捨てた書類が入っていた。それを片っ端から鞄に詰め込む。
よく考えたら、焦ることなどなにもない。彼の住んでいる部屋を知った。本名も。それだけじゃない、彼にはれいらの他にも付きまとっている女がいることも。
「私だけを見てほしいの。どこの誰にも渡したくない」
彼と手を繋ぎ、目が合って笑い合う相手は私だけでいい。将来的にそうなるのはきっと決まっている。だから、いまは大勢の中の一人で我慢してあげる。これは叶わない恋なんかじゃない。彼は、私のことを確かに好きだと言ってくれた。その言葉だけで、どんなに辛いことも我慢できる。自分の手を汚すことだって。家に帰ったら、あの鳥ガラ女のことをもう一度調べ直そう。きっと、何か弱点があるはずだ。可哀相に、彼は騙されているのだ。あの女に。私があの女の正体を調べ上げて、彼に突き付ければきっと目を覚ましてくれるはずだ。最初はびっくりするかもしれないけど、でもじきに私に感謝することになるだろう。そして、彼は私のことをきっときつく抱きしめてくれるのだ。その時にやっと彼は気が付くだろう。本当に彼のことを思っているのは誰なのか、自分の運命は、誰と結ばれているのかを。
ぐしゃり、と足元に嫌な感触がする。転がったトマトを踏んで靴が赤く染まってしまった。だが、幸せな未来への期待に不思議なほどの高揚感に包まれてそんなことは気にならない。
私は、この愛も彼のことも決して――
「ノガシハシナイ」




