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7/11

虚星王 アーテマ

24:40


残り 4:20






森が戦場になっていた。




そこらじゅうで、有象無象が“ぶつかり合って”いる。


山全体が揺れている、強烈なビームや強大な属性魔法が飛び交っている





「……っ、進めるのかこれ」




俺が息はを吐く


喉が乾いて、舌が紙みたいに張り付く。




「あんたら、さすがにその状態で戦いに行くの無謀やで」




リリリルルドはそう言うと、しっぺみたいな指を両手でクロスさせ




「万象今必現出拳!!!」




とふざけたように叫び、空中に2リットルの水二本とパンを二つ出現させた




「これ、のみーなたべーな」




俺とルルリサは顔を見合わせ、それを受け取る。急な優しさに困惑してしまう




「あ.....ありがとう」


ルルリサが言う




「なんでもできるんだな」


俺は言う





「あんたらちょっと誤解してるやろ?あたし別の世界では優しい神様みたいに尊敬されてんねんで?」





「なんか、ただのコスプレJKと思ってる?」





三人は顔を見合わせクスクスと笑う




「そんでな、思っててんけど.......あんたらカップルなるの早くない? そういうのって段階とかあるんちゃう.......大きなお世話?.....めんごめんご」




リリリルルドが笑っていた。




確かにそうだ。俺も思う




ルルリサが真剣な目でリリリルルドに言う





「私をギガドロが命がけで守ってくれて、私がギガドロを命がけで守る。お互いの心が通じ合った。だから時間なんて必要ない」





「こっちが顔赤くなるからやめて」




リリリルルドは楽しそうにじたばたする。




ルルリサはそんなにおかしい事言ったかなと俺を見る




実は俺もすごく恥ずかしい







その時




リリリルルドは急に表情を変え、空を見る




「あんたらの、その愛が本物ならあたしに見せて、でなければ終わり覚悟した方がいいよ。今から出てくるの、格が違う」




直後だった。




右手の木々が、いきなり“消失”した。




というより――世界が一枚、剥がれた。


木々の色が消え影だけが残っている。


そこに、夜空みたいな穴が開いた。





穴の中心に、“影”が立っていた。




その影は――紳士服だけだった。




黒いジャケット。きっちり締めたベスト。白い手袋。


帽子と、杖。それらが“誰か”を形作っているのに、肝心の肉体が存在しない。


中身は透明ですらない。襟元の内側には、ただ――空洞がある。




輪郭に沿って、景色がわずかに歪む。


まるでそこだけ、目に見えない天体が浮かび、空間を引き寄せているみたいに。


音が遅れ、距離感が狂う




“空っぽ”なのに、圧だけがある。


小さな惑星みたいな、うつろな重力。




俺の膝が、理由もなく沈みかけた。


地面が軋む。





リリリルルドが、笑いを消した声で呟く。





「……虚星王アーテマ」





影は、ゆっくりと帽子でも取るみたいに頭を下げた。





「ご無沙汰しています、リリリルルド」





声が頭の内側に直接落ちてくる。





「久しぶりやな。アーテマ。あたし苦手やねん、あんた本間食えへん奴やから」





リリリルルドが吐き捨てる。





アーテマは、笑った。たしかに“笑った”のに、なにもない。





「そう言われるのは光栄です。相変わらずその意味不明な雰囲気、お美しい」




「きっしょ」





そして、その視線が――俺とルルリサに滑った。




「初めまして」





丁寧だ。礼儀正しい。


けれど、その丁寧さが、獣の牙より鋭い。





「あなた方を、最初から見ていました」





アーテマは、さらりと言う。まるで、劇を観ていた観客みたいに。俺らすごい見られてんじゃんか






「ファンです。あなた方の“逃げ方”は、とても美しい」





ルルリサが一歩、前に出ようとした。


俺は反射で腕を掴み止める





「……何の用だ、俺らを終わらせに来たのか?」


俺が言う。





アーテマは首を傾げた。





「用、ですか。そうですね......」





「ギガドロ君の言う通り、終わらせに来たとして、もし私が本気で戦えば――」




言葉が、刃になった。




「あなた方は一瞬で、この山と共に消えます」






静かに言い切る。


誇張じゃないのが、分かってしまう。


“消える”という単語が、現実の物理法則みたいに響く。





「ほらな」




リリリルルドが、俺の横で小さく笑い俺に真っ白な瞼でウインクする。




「終わり覚悟、って言うたやろ」






アーテマは、手を広げた。


その所作は、どこまでも紳士だった。




「ですが、私はフェアが好きです」





「力で潰すのは簡単すぎる。あなた方の物語が、そこで途切れるのは惜しい、まだ序章だ」





「この儀式すらオープニングかもしれない」





「――だから、知能ゲームをしましょう」




言った瞬間。




地面が、盤になった。




黒と白。


巨大な正方形が、無限に広がる。


森も岩も、戦場も、全部それに変わる。




周囲で戦っていた有象無象の叫びが、遠ざかる。


いや、遠ざかるんじゃない。


この盤面だけが、別の層に沈む。




四人はチェス盤とそれ以外は真っ黒な異空間に立つ





「賭けるのは?」




リリリルルドが問い返す。




「己自身です」


アーテマが答える。





「敗北した者は――このゲームから追放される」




ルルリサが唇を噛む。


追放。


それは“死”とは違う。けれど、この山で“仲間が消える”のは、終わりを意味する。





「ただし」


アーテマの視線が、俺に刺さった。




「あなた――主人公だけは、例外にしましょう」


「あなたは、命を賭ける」






盤面の白が、眩しくなった。


黒が、深くなった。


世界のコントラストが、心臓の鼓動みたいに脈を打つ。





「……なんで、ギガドロだけ」


ルルリサが絞り出す。






アーテマは、楽しそうに笑う。





「ギガドロ君が“物語の核”だからです」


「核は、賭けなければ成立しない、面白くない」





「確かにそうじゃ、面白くない」





リリリルルドも何故か納得する。一体どっちの味方だ


いや........面白い方の味方だ



俺は言う


「ルルリサ大丈夫だよ。結局のところ、この儀式自体のルールと何ら変わりはない

異形達は負ければ強制送還だが、俺はやられればきっと命をとられるんだ。だからこの賭けに特別怯える必要は無い」


「そんな......」


ルルリサは悲しそうな瞳で俺を見つめる。いつだってこの子は優しい


虚星王アーテマが俺を覚悟を受け取ったように喋る


「理解が早い人は好きですよ」



リリリルルドが、俺の耳元で囁く。





「期待してんで、主人公君」





ルルリサが、俺に懇願する





「お願い生きて。勝って」





その声だけが、妙に現実だった。





アーテマが、盤面の中心を指す。




「さあ」




「席につきましょう。あなた方を、見せてください」




「ゲームはそうですね......私の質問に全て納得した答えを出す事」





「一つでも曖昧な答えを出すとあなた方の負けです」




「質問は私が納得するまで続けます」




「では、始め」




意外とせっかちで、勝手に話してゲームを始めた






アーテマの合図と共に、全員の背中に強制ギプスみたいなものが装着され、それに鎌が固定されている


恐らく、答えを間違えると、この鎌が振り下ろされる。逃げるのは不可能なんだろう


そういう制約の魔法だと思う、それはリリリルルドさえ逃げられないんだろう


ホントに厄介な相手だ、リリリルルドが苦手と言うのも分かる




「では、第一の質問です」




「あなたは今、生きていますか。理由は一文で」




リリリルルドが言う




「いや死んでたら返事できんやろ」




「正解です」




え、こんなんでいいの?俺とルルリサは神々の遊戯に混ぜられただけな事を実感する




「あぁそうか、正解と言うが、それは真でなくとも、あんたにとって納得いけばそれでいいのか」




俺が言う




「鋭いですねギガドロ君」




「私こういうのすごく苦手」


ルルリサが言う




「あたし得意」




俺とルルリサはリリリルルドの得意発言に違和感を抱くが、正解した手前何も言えない





「第二問、あなたの“名前”はあなたですか」




「誰が答える....?」




「私に答えさせて」




ルルリサが言う




「任せるよ、ルルリサ」




「頑張れ恋する乙女」




間違えれば終わる緊張感を持ちながら、つたない言葉を紡ぎ合わせて答え始めるルルリサ




「名前だけがあたしじゃない、でも大切なあたしの要素。あたしは名に押しつぶされぬように名に恥じぬように生き続けたい」




「ブラボー、感動しました。少し怪しいですが正解でいいです」




ルルリサは安堵の息を吐き出す




「すごいよルルリサ!!!」




「やるな乙女ちゃん」




「でーは、第三問。私は今朝何食べたでしょう?」




全員が知るか!!!と心で叫んだ




「だれが答える?」




リリリルルドが言う?




「俺が.....答える」




「ギガドロ大丈夫か?ヒントやろうか?あたしも知らんけど?」




リリリルルドが言う




「あぁ頼む」




この問題は地味にすごく難しい。いやらしくアーテマが笑ってる感じもする。


ん.....笑う?そうかこいつもリリリルルドと同じく楽しみたい奴だ


楽しんで納得すれば文句は言わない。つまりこの問題の答えは笑かす事




「こいつには口が無いぞ」




「なによそのヒント!誰が見ても分かるわよ!」




ルルリサが叫ぶ




やはりだ、アーテマは笑っている、あの紳士の服が大きく揺れた




「じゃあ答えるよ」




「どうぞ」




「宇宙茶漬け......服に米がついてるよアーテマさん」




「正解!!!!!」




「なーーーーーんで!!!???」




ルルリサは信じられないという風に絶叫する。この問題もヒントも俺がこの緊迫で放った言葉




「ギガドロよ......それは何処で売ってるんだ?」




リリリルルドは意味をあまり分かっていない。まぁいい




「では、ラスト二問にしましょう」




「あと二問ね」




ルルリサは安心した様に微笑み、クールな顔を崩す。ほんとこの子すごく可愛い




「よし!!!ささっと1000万手にしてドロップアウトじゃ」




こいつやっぱりなんかふざけてるよな。普通の感性で相手しちゃ駄目だ






「ではいきます。あなたは、大切な人のために死ねますか?」




いきなり重い問題だ。




これはルルリサに任せると、アーテマに納得させる答えはきっと得れない。


リリリルルドに任せても、アーテマとは価値観が銀河分違うからきっと不正解だ


俺が答えるしかない




「俺が答えるよ。」




「そうね」




「そうやな」




俺は宝剣を握り心を静め、文明を感じる。そのうえで結晶呪の目でアーテマを見た


奴の過去が少し見える


それは、意外だった。何度も何度も何度も仲間を助けようとしてその度に自分だけが生き残り


果ての無い孤独を背負っていた。こいつが笑いたいのも無理は無い。恐らく悪い奴じゃない




「駄目だ死ねない。それは大切な人を泣かせるからだ。相手の為を思うなら生きて笑わしてあげるんだ」




場が静まり返る




「...................」




「ギガドロ君........私の心見ましたね?」




「あぁすまない.....ずるか?」




「そうですねーーー.....見て気持ちの良い物では無かったでしょう」




「.......そうだな。でもあんたの孤独俺もちょっとは理解できたよ。だからそれを背負ってんのはあんただけじゃねーよって言ってあげてーな。上からですまない」




「よく頑張ったよ、アーテマさん」




「...........」




アーテマは沈黙する




「何の話じゃ?」




リリリルルドは?を頭に浮かべる




その後




「正解です」




「すごいわ!!!ギガドロ!!!大好きよ」




ルルリサが心底嬉しそうに俺の肩に抱き着く




それをリリリルルドはふッと笑ってみてる。




アーテマはかつての自らに重ねてるのか、固まって動かない




「では、最後です。ギガドロ君に質問です。」




俺指名か




「頑張ってギガドロ」




「思い切ってやれ坊主」




「ギガドロ君、君に世界を救う意思はありますか?家族だけでなく、世の中だけでなく、ルルリサ君の世界だけでなく、数多の世界だけでなく


それわそれわ広い世界を救う意思がありますか。苦しいですよ?」




俺は少し沈黙し答える、肩にはルルリサ、目の前のにはアーテマ、リリリルルド、頭の中には母さん、妹の花、そしてまだ出会ってない誰か





「やってみなきゃわかんねーよ、今日だけで色んな存在に出会って俺の心は変わった、これから沢山の存在に出会ってさらに変わるだろう


無限の存在に出会って変わり続ければ、世界だって救える可能性がある気もする」




そこにいた、ルルリサ、リリリルルド、アーテマはやっぱりと言う感じで納得した顔をする




「正解です!!!」




アーテマは嬉しそうな声で正解と言う。




その瞬間、アーテマの鎌が振り下ろされ心臓部を貫く




「痛てててて.......久しぶりに楽しめましたよ。もし機会があればまたお会いしましょう、皆さん。ギガドロ君の意志が真実ならきっとお会いするご縁があるでしょう.....その時はよろしくお願いします。」




「ありがとう、アーテマ」




俺はなんだかこの得体の知れない相手にいつの間にか好意を抱いていたらしい。アーテマが痛がる姿が辛かった




「では.......」




「じゃーな変人」




リリリルルドは口ではそういうが、少し切ない顔をしてる




そして虚星王アーテマはホログラムとなって消えた




俺は何か重力に似た能力を獲得したらしい。使わないとどんなものか分からないが。宝剣が少しざわめいた気がした






現在 01:40


残り 3:20


-------------------------つづく------------------------------



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