表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/11

ラスボス 生成魔族王 ジネーレ


04:10


日の出まで残り50分。






焦りがつのる




「頂上まで……あと6km」




俺の前を歩く、ルルリサの汗で濡れた金髪が、月光を受けて淡く揺れた。




リリリルルドは遠くを見て、舌打ちひとつ。




「……連戦やけど来るで。時間的に相手できる最後や」




「最後……」




ルルリサが息を呑む。


俺は宝剣を握り直す。刃の深紅の線が煌めく





その瞬間。


風が逆向きに吹いた。


目の前の空が、急に暗くなる


月光が、そこで一度だけ屈折する。


次の瞬間――





“何か”が飛んできて、俺たちの眼前で止まった。





止まった、というより――


そこに「誕生」したに近い。




落下でも、着地でもない。


飛来と同時に存在が誕生した





なんだこの禍々しい空気は?




「あーーー変な奴と出くわしてもうたな、イレギュラーや」




リリリルルドが言う




「変な奴?あいつの事か?」




俺が聞き返す




「うん目の前に現れたやつ.....変としか言われへん」




そしてルルリサが気持ち悪そうな顔をする




「なに、この気配」




そこにいたのは、生き物の形をした“寄せ集め”だった。




胴体の表皮はぬめるように黒く、ところどころに透明な結晶が刺さっている。


脇腹には巨大な触手の痕跡が“縫い付けられた傷”みたいに走り、背中には折れた羽の骨が何本も突き出ている。


首は一本なのに、鎖みたいな骨が途中で三つに分岐している


爪は異様に鋭い


10メートル弱の真っ黒なプテラノドンの様なフォルムで機動力は高そうだ


何より異様なのは、顔。


顔の輪郭はのっぺらぼうに似てるそこに幾何学模様がコロコロ変化してる


胸の中央に、縦に裂けた“紋”があり、そこが口のように開閉する。




その“口”が、音を出した。




声は低い。


異常に響く。




「――我は、今誕生した王」




胸の裂け目が、ゆっくり開く。


中に、淡い光が見えた。


それは内臓の光じゃない。儀式で異形が出現する時に見た光だ――門の光だ。




「生成魔族王。ジネーレ」




名乗った瞬間、空気が一段冷える。




ルルリサが一歩下がり、翼を半分だけ広げた。




「……物凄く不気味」




リリリルルドは笑う




「見た目に似合わず、日本語がお上手な事」





「リリリルルド……あれ、なんだ?」




リリリルルドは短く言った。




「多分な――この儀式で散っていった異形が生贄になって、新しい儀式が完成しよった」




「生贄……?」




「せや。散ったやつら、ホログラムになって消えたやろ。


あれの残りカスが集まって意志持ってもうたんや」




ジネーレが、胸の裂け目を少し開いたまま言う。




「敗者の残響。王獣の欠片。侵略者の爪。狩人の歯。


散った異形の“終わり”は束ねられた。今、世界が我を生成した」




「……お前は俺らと戦う気だよな?」




俺が問うと、ジネーレは答える。




「我王になる。ただそれだけ」




胸の裂け目が歪む。




ルルリサが構える




「やるしかないみたいね」




俺も宝剣を構える。




「そうみたいだな」




「あんたらの集大成、こいつにぶつけてみーな、あたしはこの後用事あるから、体力温存するわ」




リリリルルドはフッと消え一瞬で離れた大木の上に移動する





ジネーレの体が微かに揺れた。


揺れたというより、形が“次の形”へ選び直された。


背中の骨が伸び、羽の名残が扇状に広がる。


触手の痕跡が、筋肉になって腕へ回る。


結晶片が、鎧のように表皮を覆う。




「他の王を――試す」




ジネーレが言う。




言った瞬間。




ジネーレが“飛んだ”。




飛んだ、というより、


消えた。




目の前が黒く埋まり、圧力が来る。




「――っ!!」




俺は重力操作で速度を落とそうとする。


しかし、ジネーレの周りで空気がひしゃげ、操作点が定まらない。




ルルリサが反射で結界を張る




「守護光輪――」




言い終わる前に、ジネーレの背中の骨が“刀”になり、振り下ろされる。




斬撃じゃない。


暴風と衝撃の塊。そこに様々な属性がぐちゃぐちゃに混ざり合ってる




俺はルルリサを抱えて横へ跳んだ。


地面が抉れ、岩が粉になって舞う。




リリリルルドが叫ぶ。




「ギガドロ!!!そいつの攻撃直接当たんなよ?毒とかのレベル違うで」




「ああ!!!なんとなく察しはついてるよ」




「ギガドロ、私はあなたの守りに徹するわ」




ルルリサが俺の胸の中で手を組み祈り出す




「ありがとうルルリサ」




そうすると、幾重にも重なるクリスタルの鎖が俺とルルリサの周りを高速で旋回し防御壁になった





ジネーレの胸の裂け目が開く。




「我こそが新しき世界に君臨するにふさわしい」




次の瞬間。


ジネーレの腕が“増えた”。




腕の関節が裂け、肋骨の間から別の腕が生える。


気づけば無数の腕が生え、翼も幾重にも重なり、体が巨大になってる


あらゆる腕から別の属性術を放っている


ルルリサの守護が無いとかなり危なかったろう





「……近寄れないな」





俺は言う




ルルリサが空中で浮遊する俺に抱きかかえられながら言う。




「ギガドロ……あの胸の光の辺り……魔力核みたいなのがある」




俺も見た。


胸の裂け目の奥に、小さな輪が脈打っている。


そこから、強大な魔力が捻出されている


ミニ門。コア。





「……あれを狙うか」




俺は低く言った。




「どうやって近くまで行く?」




ルルリサが俺に聞く。




「........」




「きっと私が幻影を出しても、奴の属性魔法で簡単に消し去られるし、遠隔魔法も同じく駄目」


「ギガドロが超速で突っ込んでもきっとあのぐちゃぐちゃの中じゃ全ては避けきれない」




俺は迷う




でもそうこうしてるうち、ルルリサの守護クリスタル防御壁をジネーレは徐々に削ってくる





ジネーレが“笑う”どうやら感情を獲得した様だ、こいつは時間ごとに進化してる。早くケリをつけないとやばい





そして、ジネーレが地面に手を突き。何か唱えだした




地面の土が、ホログラムみたいに浮き上がる。


それが直径100メートル程の魔法陣になる





「ギガドロ!あの魔法陣、禁忌の魔法よ!」





禁忌の魔法......その名前だけで十分すぎる程に危険なのが理解できる





考えろ考えろ考えろ




「おーい!!!ばかっぷる。その詠唱止めないと山も街も吹き飛ぶで?」




他人事で言ってくれる




わかってるんだ、俺もルルリサも。どうにか作戦は無いか....?




そうこうしてるうちに奴の体がおかしい


魔法陣の中心で真っ赤なエネルギーに包まれ笑いながら燃えてる


尋常じゃなく危険な絵面だ





「おーい!!!!!あと1分ぐらいやぞ、あたしもちょっと焦るやんけ」




俺とルルリサは声を合わせてリリリルルドに叫んだ




「わかってる!!!」




そしてルルリサが少し考えた後に言った




「私達もする?禁断魔法?ギガドロが魔力供給してくれて、小範囲のみの攻撃なら、20秒で詠唱できるわ。それとその宝剣無くなるけど?」




彼女が早口で言う。




俺は悩む間もなく即答する




「やろう。ルルリサ」




ルルリサが呪文を唱える


俺は全神経をルルリサの魔力核に集中する


俺達の周囲に様々な色や形の魔法陣が色んな角度で重なり合う


宝剣が光に包まれる




「やっとやりだしたか、冷や冷やさせるなーあの二人」


リリリルルドがこっそり呟く





ジネーレは自分の力に夢中だ


しかし、やつもヒートアップして巨大な魔法その物になりかけている




宝剣が変形し、俺とルルリサの前に様々な秘宝が散りばめられた巨大な光の弓が出来上がる




一種の召喚の様だ。古の神器の召喚




俺とルルリサはワルツの様に手を取り合い一緒に弓を引く、同じ目標めがけて。寸分もずれない同じ力で。




20秒経った。




「ギガドロ」


「ルルリサ」




「愛してる」


「愛してる」




「いっけーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」





愛の超光速一閃。





巨大な光の矢がジネーレの裂け目を貫き、ミニ門の中心へ届いた瞬間――


ジネーレの体中の“混ざり物”が、悲鳴みたいに震えた。




散った異形の声が、同時に鳴る。




「グワァァッァァァァァ!!!!!!!!」




奴の体が溶けていく





「……王……維持……不能」




ミニ門が、砕ける。




砕けた瞬間、ジネーレが崩壊する




背中の骨がほどけ、


触手の痕跡が砂になり、


結晶片が粉になり、


羽が消える。


最後に残ったジネーレの顔もホログラムみたいに薄くなっていく。





ジネーレが、最後に言った。




「……王……なりたかった」




そして、消えた。




静寂。




俺は腰が抜けそうになって、ルルリサに支えられる。


リリリルルドは近寄ってきて大きく笑った。




「はー……やっと終わったわ。ほんま冷や冷やさせられたわ」




「あんたらの愛本物やな、いつまでも貫け」




リリリルルドは心底嬉しそうににぃーと口角を上げて笑う




ルルリサが言う。




「……すごくかっこよかったよ」




「ルルリサこそかっこよかった」




見つめ合って俺達はほほ笑む







その後




俺はスマホを見る。


04:45


残り 15分




「行こう時間が無い」





俺はルルリサの手を取って浮遊する


もう空と飛んでも邪魔される程、敵は多くないはず。


避けれる自信もある




そのとき、背後の森が“ざわついた”。




来る。


今までの比じゃない。




気配が、重い。




「……十五体くらい。超大物や」




リリリルルドが言う。いつもの軽さがない。




まだ十五体もいたのか.......




「間に合わない……!三人で飛んで頂上に行ってもきっと邪魔される」




ルルリサが言う





その瞬間、突如後方から別の気配が接近して舞い降りた。


冷たい赤。鉄の香り。金色の粒子。


棺が空に滲み、そこから“深紅”が降りる。




深紅のアンドロイド——リリス・パンクライヴ。




「こんな時に........」




三人は一気に厳戒態勢で構える




しかし.......




口角は裂けていない。女神の目だ。


そして彼女は、何も言わずに、後ろへ向き直った。




「............」




「どういうことだ?」




俺は言う




なにかを察したようにリリリルルドは同じく後ろへ向き直る




リリリルルドは、笑って言った。




「こーなるとおもとったわ。二人ともよくやった」




「ここまで上手くやるとは思わんかったけど、予想外や、あっぱれ」




ん....終わりみたいに言うじゃないか




「だから、どういうことなんだ?」




「察せよギガドロ、にぶちんやとルルリサに愛想つかされるで?」




そういうとリリリルルドは準備運動を始める




リリス・パンクライヴも無表情で迫りくる異形達の方を向く




内心わかっていたかもしれない、認めたくなかった。俺はこの夜どれだけリリリルルドに助けられたか、どれだけ救いだったか




ルルリサも察する




「ねぇ、リリリルルド、私イヤ。一緒に行きましょ?チームでしょ?」




「あざと!!!ルルリサ。 笑える でも、本間に大切なもん考え、自分の故郷守るんやろ?」




「.........」




「行こうルルリサ」




「でも.......」




「大丈夫、リリリルルドはきっと大丈夫だ俺は信じてる」





「ようわかってるやんギガドロ」




「あんたらあたしの事舐めすぎ、後から追いかけるっちゅーに。こんなおもろいフィナーレ見んで終われるか あほ」





リリリルルドが異形の群れの方に全速力で移動して叫ぶ





「行け!!日ぃ昇る前に!!」




リリリルルドは同じく隣で飛行するリリス・パンクライヴに言う




「あんたもいいとこあるやんか、こんどお茶でもどう?」




リリス・パンクライヴは無表情のままだが少し瞳が揺らいだ




そして二人はこのゲームで勝ち残り続けた、あらゆる世界を統べる超級の異形の群れに同時に突撃した...........





俺はリリリルルドの声に叫び返す。




「任せろ!!!」




「ありがとう」




ルルリサは泣いてる




俺はルルリサの手を引いて超特急で浮遊した。


もう後ろは見ない。




空の闇が薄くなる。





山頂が——見えた。




開けた場所。逃げ場のない場所。敵はいない





04:49





残り1分





俺とルルリサは手を繋ぎ、日の昇る方角を見る




そして——




光が、山の縁から滲んだ。




夜明け。




山の向こうから、太陽が少しづつ顔を出す。


世界が一瞬で色を取り戻しだす。




山全体の異形の気配がすっと消え始める。


殺気も、ルールも無いみたいに普通の山に戻る。




先程、俺達がいた辺りからホログラムが“ほどけて”消えていく。




空に、微かな粒子が舞う。




ルルリサが、号泣して日を見る。


俺も、号泣して日を見る。


分からない。怖かったのか、嬉しかったのか、全部か。




そして——遠くで.....とても遠くで




リリリルルドの声がした気がした。




「……ほなな」




ルルリサが叫ぶ。




「リリリルルド!!」




彼女も聞こえたのだろう。





頂上に残ったのは——俺とルルリサ





彼女は見事目的を達成したのだ、能力を獲得し故郷へ帰れる





しかし彼女が、俺の袖を掴む。





「……帰りたくない」





「あなたといたい、あなたと離れたくない、あなたが愛しい」




言い切って、彼女は俺の胸に飛び込んできた。


俺は強く抱きしめる。





「俺もだよルルリサ」





朝日が、二人の影を伸ばした。





もう彼女は消えるかもしれないから、強く強く抱きしめた。


でも永遠の別れじゃない。きっと何があっても彼女に会いに行くつもりだ


俺はもう逃げない、これからは自分から追いかけるんだ





その時、スマホが震えた。




電波が戻っている。




メール。




依頼者からだ。






-------------------




件名:勝利おめでとうございます!!!




この度は奇想天外なゲームの攻略、大変お見事でございました


私達は魔王ギガドロの誕生を心から祝福申し上げます。




結果につきましては、




・第一勝利:ギガドロ


・第二勝利:ギガドロの心を奪った者





・ギガドロへの特別報酬


** 消えた異形達の能力:最大10個、選択して付与**


** ※譲渡可能**





第二勝利者


** 景品:この世界へ入る権利/他の世界、元の世界との往来権**





俺は、ルルリサを見る


彼女も俺を見る




この信じられないような内容をお互いに確かめるように


まだ一緒に居れる喜びをどう表現していいか相手に委ねるように





「まだ一緒に居れるのね?」




「まだじゃない!!!ずっとずっとだ!!!約束したろ?」




「ええ!!!ギガドロ大好き!!!」




俺達はメールそっちのけで散々いちゃついた。その内容はプライバシーに触れるからここには書かない


しかし世界一幸せな瞬間だった





そして、少し落ち着き




「……10個」




俺が言う




ルルリサが小さく頷く。




「魔王ギガドロ、私も世界も導いて、あなたのそばでずっと見守ってるから」




「うん、ずっとそばにいてくれ。俺が世界を救うまで」





--------------------------------------





後日談




玄関の扉を開けると、懐かしい匂いがした。




「お帰りー!」




母さんの声。




妹が顔を出して、目を丸くする。




「お兄ちゃん、どこ行ってたの!?……心配してたんだよ?」




「ごめん、ごめん。ちょっと用事があって はは」




俺は笑って、二人に紙袋を差し出した。




「母さん。誕生日プレゼント」




「え……」




母さんは紙袋と俺の顔をみて何かを察したように見つめる




「花(妹)。これ、欲しがってたやつ」




妹も同じく俺を見つめた後、袋を開けて固まる。




「……お兄ちゃん」




その横で、ルルリサが立っていた。


家の廊下が一瞬だけ明るくなるみたいに、彼女の存在が綺麗だった。




母さんと妹の花が目を瞬く。




「……まぁ。綺麗な子……」




「すごく綺麗な人.......」




妹が見惚れながらニヤつく。




「お兄ちゃん、やるじゃん」




ルルリサは少し照れて、頭を下げた。




「はじめまして。ルルリサです」




「……うん、うん。座りなさい。ご飯にしよ、ご飯!」




その瞬間。




家の奥——トイレの扉が、ガチャ、と開いた。




「人ん家のトイレ、落ち着くわー」




見慣れたチャイナゾンビJKが、平然と出てくる。




「……リリリルルド!!!?」




俺とルルリサが驚愕し固まる




母さんと妹は笑う




「お兄ちゃんのお友達、さっき訪ねてきたんだ。すごく面白い人ね」


「あんたに友達がいたなんて、こんな可愛いくて優しそうな子達、母さん嬉しいわ」




リリリルルドはニヤッと笑って、ピースした。




「あたしぐらいなら結構どこでも行き来できるねん。安心しな」




俺は呆れて笑う。




「お前……ほんとに自由だな」




「当たり前や。ほな、次の作戦会議しよか」




「作戦会議?」




リリリルルドは俺とルルリサを見て、楽しそうに言った。




「もっと大きな戦いが来る。


その時、泣いて逃げるか、笑って勝つか——今から決めとこや」




母さんが割り込む。




「作戦会議はいいから、先にご飯!!」




妹も頷く。




「うん、まず飯!」




俺は笑って、ルルリサの手を握った。




「……そうだな。まずは飯だ」




テーブルに並ぶ湯気。


家の明かり。


大切な人たちの声。




俺は思った。




——帰ってきた。




確かに生き抜いて帰ってきた




-----------------エンド-----------------------





----------------(第一部エンド)-----------------------

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ