未知への接触
----------------------ギガドロ-----------------------------
走る。
逃げる。
走る。
肺が焼ける。
息が、追いつかない。
靴底が濡れた落ち葉を噛み、
体がわずかに滑る。
転ぶな。転べば終わる。
——止まるな。
——逃げろ。
頭の中で誰かが言う。
俺自身の声だ。
後ろから、音がする。
獣の足音じゃない。
硬い。重い。規則的で、聞いたこともない音、この世の奴らの足音じゃない。
そう、何体も色んなのがいる。
怖くて直視できない
それらは、確実に距離を詰めてくる。
振り返るな。
振り返ったら終わる。
首の後ろが、冷えていく。手はガタガタ震えてる
心臓が鳴り狂ってる
頭はパニックで、それでも生存本能だけで巨大な森を疾走する
どうして、こうなった。
考えるな。
今は走れ......
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数時間前。
スマホの画面は、相変わらず白っぽくて、冷たかった。
単発バイトアプリ。
即日現金。
山中・肝試しチャレンジ。
報酬、十万円。
「……うそだろ、10万円って」
声に出して言ったが、部屋には誰もいない。
母はパート、妹は仕事。
昼過ぎの家は、いつも静かだ。
いつも.......
いつも家にいる............
そうだ、俺は駄目な人間なんだ。
いつも俺の味方になってくれる女手一つで育ててくれた母と
どこに出しても恥ずかしくない、可愛い妹。
二人が働いてるのに
俺はほぼ毎日ダラダラしてる
罪悪感でおかしくなりそうなときもある
こんなこと言うと自分の駄目さが増すが
俺は真面目なんだと思う。
あぁ......真面目だ、いい意味じゃない。
とんでもなく要領が悪いし、心も弱い
それでも、少なくとも、悪いことはしたことがない。
人に怒鳴ったり、踏みつけたり、嘘をついて金を取ったりもしない。
ただ——逃げてきただけだ。
学校。
就職。
責任。
失敗。
全部、少しずつ、横に避けてきた。
最低限の単発バイトはする。
アプリを消さない程度に。
生活が完全に崩れない程度に。
気づけば、ほぼニートだった。
スマホ残高は、ほぼゼロ。
支払いばっかりに追い回されてる
誰のせいだ?間違いなく自分だ。
でも、世の中も悪いだろ?普通に頑張りたいだけだったんだよ俺は
しかし、そんな恨み言なんになる?
そんな事より
母さんの誕生日が、もうすぐだ。
妹は、働きながら夢を追っている。
道具がいると言っていた。安くはない。
二人にプレゼントしてやりたい........
二人とも、こんなクズの俺を慕ってくれている。
褒めてくれさえする。
それが救いでもあり、いちばん苦しい。
母さんは「○○は、頭がいいから絶対大丈夫だよ、自信持ちなさい。」
妹は「お兄ちゃんさ、なんでもできるんだから本当すごいよね」
苦しい......
この二人の為ならなんだってやってあげたい気にもなる
スマホのバイトアプリをみながら呟く
「今回だけ……」
誰に言うでもなく、伽藍とした部屋でつぶやいた。
このバイト、断ったら、
このアプリは二度と使えなくなる。
規約にそう書いてあった。
逃げ道が、塞がれていた。
俺はこのバイトに応募した。その時迷いが無かった
そしてすぐさま淡々とリュックに必要なモノを詰め込み
今日中に依頼をこなそうと考えてた
はやく金が要る。明日が母さんの誕生日だし
俺はいつの間にか山に着いていた。夕方だった。
行動は早い方だ。
将来の事や家族の事を考えてぼんやり用意したり、電車とバス乗り継いでるうちに
いつの間にか山に着いていた
その後、例の肝試しチャレンジの鬱蒼とした巨大な森の中腹までは徒歩で三時間かかった。
人っ子一人いない。
やけに、平らに開けている。その場所だけはステージみたいに地面は土で直径100メートルぐらい整えられてる
そこに何かが並んでいる
鳥居じゃない。
でも、似ている。
円形に並んだ、門のようなもの。
石か、木か、よく分からない素材。
古いのに、崩れていない。
一つ一つの門に、文字が刻まれている。
漢字の様なモノがある。
俺は、声に出して読んだ。
「……ギ........ガ..........ドロ?」
全くの当て字だが、そんな感じだ
意味は分からない。
しかし、その文字は直感的に不気味な感じだった。
文字の形をしてるが、文字では無く。
もっと別の意志を伝えるような概念に感じた。
この場所で絶対にやってはいけないおまじないがある。
バイトアプリの依頼者からのメッセージで説明はされた
そもそもここに来るだけでダメとの噂もあるとの事だ。
本人もあまり分かって無いらしく、噂で聞いただけらしい。
半ば、どっかの金持ちが通う大学のサークル連中が、皆で金出し合って
面白半分にこの仕事の依頼を立てたのだろう。
俺はそういうノリは嫌いなんだが、今はプライドなんか必要ない
金が必要なんだ.........
そして......
俺は——
やってしまった。
そして今、俺は走っている。
夜は深く、
森は終わらない。
後ろから、
それらが、追ってくる。
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あの奇妙な大量の門の前でおまじないをした
事前に持って来た(モノ)をリュックから取り出し
呪文を書いた紙も取り出し
儀式の仕方を書いている依頼者のメッセージをスマホで見る
これらは、詳しくは書かない。
いや、ここには書いてはいけないと思う。
なんとなくそんな感じがする。
その後、依頼者に報告するため動画や写真を撮ったりした。
なんだか電波の繋がりが悪い
それに、日が落ちてきてだいぶ暗くなってきた。
ただでさえ、鬱蒼とした森がより不気味に見える
それに、この門だ。
暗くなってから、さらに雰囲気が変わってる
異界にでも繋がってるんじゃないかって思うぐらいに
正直、すごく怖い。でも母さんと妹の為だ弱音は吐いてはいけない
俺は電車やバスの中で、
依頼者の話を手がかりに、この山と門について調べていた。
検索結果は、ばらばらだった。
掲示板。個人ブログ。消えかけの古いページ。
スクリーンショットだけ残された、出所不明の文章。
だが、完全に無関係とも思えなかった。
どれも、微妙に重なっている。
それが.......
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【某掲示板・過去ログ】
あそこは門じゃない
門の「代わり」
境目を作る場所
入るためじゃなく
出すためのもの
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【地方史研究サークルのブログ】
山中に円形配置された木造構造物について
明確な用途は不明
ただし、高度な文明を感じる。
それと同時に太古の文明に似た雰囲気もある
UFOの目撃多数
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【この土地の市のサイトより。手書きの古文書】
疑加土呂 (俺の見た門の漢字みたいなやつとは字が違う)
汝、決して
唱えるな
置くな
舞うな
振り返るな
異の果てのモノ共や様君
出でたるは
日輪、昇るまで
名を持つ者よ
名を捨てよ
だだ獣の如く走り放て
決して捕まるな
異に行かぬように
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【匿名の書き込み】
あそこは試す場所だよ
何を?って?
「戻る価値がある場所かを」
まっ普通の人間じゃ超えられないけどね (笑)
普通の人はこの場所ですら超えられない......久流鎖のやつとか論外
どうしてもやっちゃったんなら
夜が明けるまで
逃げ切れたら
まだ人間
立ち止まれたら
そっち側
そんな感じ キュートなセリカちゃんより
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正直よくわからないし、ふざけた様な書き込みばっかで為にならないと思った
というか、俺は現実主義でこういうの信じないからここにいるんだ
そして俺は一連のおまじないというか、もはや儀式?
をすべてこなした
円の中心に立ち、すっかり暗くなった空を見上げてため息をつく
「金稼ぐのって大変だなー.......」
その時だった。
それが始まりだった
悪夢の始まり、一夜の絶望の始まり。
今までの俺の概念がすっかり変わってしまう分岐点
何と表現したらいいか、んーーー...........世界は物凄く沢山あるのかもしれない......
意味が分からないだろうが、そう表現するしかない
「ピロロロロロロロロロロロロロロロビロビロ!!!!!!!ギュイ――――!!!ギュイギュイギュイ―!!!!」
いきなりの衝撃に、すぐさま耳を抑えてうずくまる
「なにこれ.............」
俺はその笛みたいな音質の爆発音程の音量の何かに耳をやられた。
「笛じゃないな」
ちょっと動物的な鳴き声の様だ
すごい不気味で、でかい聞いたことのない音だ
うずくまった状態から目をあげた
そして.................
全身の鳥肌が立つ..........................
そこにいる。
沢山
超巨大なのや小さいの
飛んでるやつ
カラフルなうやつ
触手のあるやつ
妖怪???とかそんな感じではない。いや、そんなのもいるけど
海外の神話に出てくるような感じのもいるし
ハリウッドのクリーチャー映画のモンスターに近いのもいる
【でも、この世の物と全く近似しない分類もいる】
見えてないだけで、いるやつらもいるいかもしれないし
ああやばい、ほんとにやばい
見たことないぞ?こんなの
あぁやばい.......ホントホントホントやばい
ホントホントホントホントホントホント
ホントホントホントホントホントホント
ホントホントホントホントホントホント
.......................
喉が鳴らない。
声が出ない。
足が、地面に縫い止められたみたいだ。
「俺がなにしたんだ?」
呆気に取られて情けない声で呟いてしまった
やばい事たくさんあるけど世の中
これはホントにやばい.........
そして、その上空に飛んでる何体のうちの一つの存在が
俺に近寄る
そいつは、3メートルぐらいのでかさで、クリスタルの様な女性の様な形容しがた見た目でどうやって飛んでるかすら分からない
言うならば、鏡の女王。見た目だけで何かの王様って感じで全く根本的に人が歯が立たない存在とは分かる
それが、俺の周りをぐるぐる嘗め回すように、見まくってる。
俺は恐怖をこいつらに初めて教えてもらったらしい..........
母さんと妹の顔が浮かぶ。
一人で呟く、異形の有象無象の前で涙を流しながら
「ごめん、二人とも。俺おおちゃくして、下手こいちゃった........」
「でもさ、母さんと花(妹)の為にこうなったんなら........俺さ.....受け入れるよ.....」
............ホントにつくづく馬鹿だ、死ぬほど馬鹿だ。
いつも何しても空回りで、周りに迷惑かけてる
涙止まらないや......
リュックについたお守りを握りしめる。俺の誕生日に二人がくれた大切なものだ
その時だった、鏡の女王が異形達の方に振り返り。かん高い鳴き声というか高度な言語みたいな音波で後ろのやつらになにか言った
.....................................
解読不能な音波が散々鳴った後。
その瞬間が来た
衝撃だった。鏡の女王が喋った後、有象無象のそいつら全員が争い出した。
こんな激しい争いテレビでも見たことない。アニメに近い物はあるがリアルな分
よりやばい。
その瞬間俺の頭で何かはじけた。
俺は、俺は.......俺は。
生きたい。
おもむろに後ろに振り向き
走った。
走った。
走った。
超特急で逃げた。
森の中に逃げ込んだ
「お前、また逃げるのか?」どこからかそんな声が聴こえた。
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そしてここから始まる。
異形達と俺の一夜の鬼ごっこ
こうご期待。




