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最前列で始まる恋の誤解ショー

無理

最前列で始まる恋の誤解ショー

「よし……行くか」


 なぎとは照れをごまかすように立ち上がり、

しゅいはまだ顔を赤くしたまま、せなをチラチラ見ている。


「水族館……楽しみ……!」


 せなはさっきの恥ずかしさを引きずりつつも、

水族館の看板を見た瞬間、ぱぁっと表情が明るくなった。


「テンション切り替え早すぎだろ……」


 なぎとは呆れながらも、どこか安心したように微笑む。


「まぁ……元気ならいいけど……」


 しゅいはまだ赤い。


 水族館の中は青い光に包まれていて、

水槽の中をゆらゆら泳ぐ魚たちが影を落としていた。


「わぁ……! 見て見て! この魚、顔が変!」


「変って言うなよ……魚に失礼だろ……」


「いや、変だろこれ。なぎとに似てる」


「は? どこがだよ!!」


 なぎとは怒ったように言う。


「ほら、口がへの字で……」


「お前らまとめて水槽に沈めるぞ」


 なぎとは言いながらも、

せなが楽しそうに笑っているのを見て、

怒る気はまったくなさそうだった。


「クラゲ綺麗……」


 せながガラスに手を添えると、

淡い光が指先に反射して、まるで星みたいに揺れた。


「……せな、顔近い。ぶつかるぞ」


「え、あ、うん……」


 なぎとはそっとせなの肩を引いて距離を戻す。

その仕草が自然すぎて、しゅいが横でむすっとする。


(なぎと……自然に距離近いんだよな……)


 そして、水族館を見て回った後、3人はイルカショーへと向かった。


「席……空いてる!」


 せなが指差したのは、なんと最前列。


「最前列って……絶対濡れるやつじゃん……」


「でも見やすいし……行こ!」


 せなは迷わず座り、

しゅいは「まぁ……せながいいなら……」と座り、

なぎとは「……濡れたら知らねぇぞ」と言いながらも隣に座った。


 ショーが始まると、イルカが軽やかに跳ね、

水しぶきがキラキラ光る。


「すご……!」


 せなは目を輝かせていた。


 その時だった。イルカショーのスタッフさんが会う。


「前の席の方は、水がかかる可能性があります! ご注意くださーい!」


 スタッフの声が響いた瞬間――


 イルカが勢いよく跳ね上がり、


 バッシャァァァン!!


 巨大な水しぶきが、まっすぐせなの方へ飛んできた。


「えっ――」


 その瞬間。


「危ない!!」


 なぎとが反射的にせなを抱き寄せ、

自分の体で水を全部受け止めた。


 ドシャァァッ!!


 水がなぎとの背中に直撃し、

せなは驚きすぎて足がもつれ――


「きゃっ……!」


 そのまま、なぎとの胸に倒れ込む。


 床に押し倒される形になり、

なぎとはせなの頭を守るように手をついていた。


 ――完全に床ドン状態。


「っ……!!」


 せなは顔が真っ赤。

なぎとも耳まで真っ赤。


「だ、大丈夫か……?」


「だ、大丈夫……だけど……近……っ……!」


 しゅいは横で固まっていた。


(な、なぎと……反射神経良すぎでしょ……!

 てか……床ドンって……!)


「きゃー! 彼氏さんすごい!!」


「守ってあげるなんて……素敵……!」


「青春だわぁ……!」


 周りの観客がざわざわし始める。


「か、彼氏じゃねぇし!!」


 なぎとは即座に否定するが――


 顔が真っ赤すぎて説得力ゼロ。


「いやいや、あれは彼氏の動きだよね〜」


「絶対カップルでしょ!」


「お似合い〜!」


「ち、違うって言ってんだろ!!」


 なぎとは叫ぶが、

せなは恥ずかしすぎて顔を覆ってしまう。


「そうてす! こんなやつ、彼氏なわけ……!」


「そう、本当に違うから!」


 でも周りの観客は止まらない。


 しゅいは横で、


「……まぁ、あれは誤解されるわ……」


と小声で呟いていた。

 すると、せなが立ち上がる。


「もう無理……!」


 せなは立ち上がり、

顔を真っ赤にしたまま走り出した。


「お、おい! せな!!」


 なぎとも慌てて追いかける。


「ちょ、待てって!! 走るな危ねぇから!!」


「無理無理無理! 追いかけてこないで! 今、一人がいい! 一緒にいたら勘違いされる!」


 しゅいも慌てて立ち上がる。


「二人とも待てって!! 俺置いてくな!!」


 水族館の通路に、

三人の声が響き渡った。

 

 

 

 

無理

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