抱きしめたのは夢か寝相か恋心か
無理
抱きしめたのは夢か寝相か恋心か
――そして、夜の1時。
ホテルの部屋はすっかり静まり返り、
外の街灯がカーテンの隙間から細く差し込んでいた。
その淡い光が、ベッドに並ぶ三人の影をゆらりと揺らす。
その中で――なぎとだけが、まだ起きていた。
(やべ……せなが近すぎて……寝れねぇ……!)
胸の奥がずっとバクバクしている。
耳まで熱くて、布団の中なのに寒気すらしない。
(せな……起きてんのか……?)
なぎとはそっと横を向く。
暗がりの中、せなの寝顔が月明かりに照らされていた。
「zzzzz……」
せなは、無防備すぎるほど穏やかに眠っている。
(……俺だけかよ……)
なぎとは一度目を閉じるが、
心臓がうるさすぎて眠れる気配がない。
「可愛……」
気づけば、言葉が漏れていた。
なぎとは息を呑む。
せなの寝顔を見つめるほど、
胸の奥がじんわり熱くなる。
そして――
なぜか、無意識に顔が近づいていく。
「……体が勝手に……」
自分でも止められない。
吸い寄せられるように、距離が縮まる。
「待て待て待て……それは違うだろ……!」
必死に心でブレーキをかけるが、
体は言うことを聞かない。
唇と唇の距離――あと5センチ。
「やばいって……!」
なぎとは歯を食いしばり、
反対を向こうと踏ん張る。
だが、全然向けない。
「……っ!」
最後の力で、自分の口に手を当てた。
ぎゅっと押し当てて、目をぎゅっと閉じる。
しばらくして、恐る恐る目を開けると――
自分の手が、せなの唇に触れていた。
「っ……! 結局こうなるのかよ……!」
なぎとは慌てて体を反対に向け、
布団を頭までかぶる。
「くっそ……せな、起きてないよな……?
起きてたら……マジで終わる……」
顔は真っ赤。
心臓は壊れそう。
でも――なぜか、さっきより落ち着いていた。
そのまま、なぎとはようやく眠りについた。
---
そして朝7時、アラームの音が静かな部屋に響く。
「ん……」
せなは目をこすりながらアラームを止める。
起き上がろうとした――が。
「え……?」
動けない。
眠い目をこすりながら横を見ると――
なぎとが、しっかり抱きついていた。
「え、ちょ……!」
腕はしっかり回され、
まるで大事なものを抱えるようにぎゅっと。
(寝相……悪すぎでしょ……!)
「離してよ……!」
せなは抜け出そうとするが、
なぎとの腕は意外と強くて、全然抜けられない。
しかも――
「……っ!」
なぎとの手がかすかに動いて、
せなの腰に触れた。
くすぐったくて、声が漏れそうになる。
「はにゃして……!」
限界になったせなは、
なぎとの肩をぺちぺち叩いた。
「ん……?」
ようやく、なぎとが目を開ける。
「……せな……? あー……ホテルか……」
ぼんやりした声で言い、
また目を閉じようとする。
「ち、ちょっと!! なんでまた目瞑ってるの!?!?」
「あ……? 二度寝だよ……」
「そうじゃなくて! 今の状況把握して!!」
「いちいちうっせぇな……」
なぎとは渋々目を開け、
周りを見渡し――
沈黙。
「は、は!?!?
なんで俺がせな抱いて……!」
「いいから早く離して!!」
「当たり前だーっつの!!」
なぎとは跳ねるように手を離し、
せなから距離をとる。
「大体なんでこんな状況になってんだよ……!
俺絶対反対向いたのに……!」
「し、知らないよ!
私が起きたらこうだったんだもん!」
せなは勢いよくベッドから起き上がり、
髪を整え始める。
「前々から思ってたけどせなって髪、綺麗だよな……」
「髪は女の命だからね! 多分!」
「そう……?」
なぎともゆっくり起き上がる。
寝癖がぴょこんと立っている。
「ってか、なぎと寝癖ついてるじゃん」
「別にいいだろ……どうでも……」
なぎとは頭を掻きながらそっぽを向く。
耳はまだ赤い。
――そして数時間後。
「おはよ……。って、二人とも起きてたの!?!?」
しゅいが寝ぼけた声で起きてきた。
「そりゃね……。ってかもう10時だよ? ちょっと遅くない?」
「いや、そんなことはない……」
「そう? まぁ、とりあえず出かけるし、着替えて」
「おっけー……」
しゅいはのんびり準備を始める。
今日の三人の一日は、
きっとまた甘くて騒がしい。
無理




