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眠れないのは、君が近くにいるせい

無理

眠れないのは、君が近くにいるせい

「そろそろ寝よ〜」


 お風呂事件から約1時間。

夜の10時を過ぎ、ホテルの部屋は落ち着いた静けさに包まれていた。

窓の外には街の灯りがぽつぽつと浮かび、

室内の柔らかい照明が三人の影をゆらゆら揺らしている。


 せながふとベッドの方を見つめ、固まった。


「……ちょっと待って……」


 その声に、しゅいとなぎとも視線を向ける。


「……3人確かに寝れるけど……このベッド……一緒に寝るタイプだ……」


 大きなダブルベッドが一つ。

三人とも、てっきり別々だと思っていたため、

一気に顔が真っ赤になる。


「え、っと……せなと一緒に寝ないといけないって……事……? 隣同士で……?」


「……うん……」


「ぜ、絶対無理!」


 しゅいが思わず首を大きく横に振る。

声は強いのに、耳は真っ赤。


「と、とりあえず……入ってみる……?」


「う、……ん……」


 せなが右側にそっと潜り込むと、

しゅいとなぎとは同時に左側へ向かい――ぶつかりそうになる。


「お前がせなの方入れよ!」


「そっちこそ!」


 二人は小声で言い合い、

しばらくしてから同時にため息をついた。


「無理だろ……。せなと隣なんて……眠れねぇし……」


「……俺だって……寝れないよ……」


 顔を真っ赤にしながら、二人は目をそらす。

その様子を見て、せながぽつりと言った。


「じ、じゃあ! なぎと左端! しゅいは真ん中!」


「分かった……って、え!? なんでせなが決めんの!? 俺嫌なんだけど!」


 しゅいが慌てて声を上げる。

手がバタバタしている。


「……私と一緒に寝たくないの……?」


 せなが少し寂しそうに言うと、

しゅいは一瞬で固まった。


「い、いや……そういう訳じゃ……!

 ないんだけど……! なんて言うか……その……!」


 しゅいは真っ赤になりながら、言葉を探す。


「……じゃあ、なぎと真ん中ね」


「は……は!? マジ無理!」


 なぎとは叫び、顔を覆う。


「なぎとお兄ちゃん〜、おねが〜い♡」


「お兄ちゃんって……せなおま……! ふざけんのもいい加減にしろよ……! ……可愛すぎるんだよ……」


 なぎとはしばらく固まったまま動かず、

やがて観念したように小さく呟いた。


「……し、しょうがねぇなぁ……。き、今日だけ特別な……」


 顔を逸らしながら、耳まで真っ赤。


「やったー!」


 せなは嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。

その姿に、しゅいが呆れたように笑った。


「なぎと、せなに甘すぎだろ」


「うるせぇ……。だって……あんな可愛く言われたら……断れねぇだろ……」


「いつもは無愛想なのにせなだけに甘すぎ」


「別に良いだろ……」


 なぎとは小声で言い返すが、顔は真っ赤。


「何話してるの〜?」


「いや……別に……雑談だよ……雑談」


「いや〜ね。なぎと、せなだけに甘え過――」


「しゅい黙れ!」


「?」


 せなは不思議そうに首を傾げる。


――


 3人はベッドに入る。

シーツはふかふかで、ほのかに洗剤の香りがした。


 なぎとはできるだけしゅい側へ寄る。


「なぎと、近寄りすぎなんだけど。俺落ちるよ?」


「せなが落ちるのとどっちがいいんだよ」


「……せなは守りたい……」


 しゅいとなぎとが小声で言い合っている間、

せなは二人の方を向いていた。


「……私もなぎとと話したいな〜……」


「……あ、え、っと……ご、ごめ……?」


 なぎとは一瞬で固まり、

しゅいは「出たよ……」と小声で笑う。


「っ……! い、いや、なんでもない!」


 せなは自分の心の声が漏れたことに気づき、

布団に潜り込む。


「お、おやすみ!」


「「おやすみ」」


 部屋の照明が落とされ、

静かな夜の空気が流れ始めた――が。


 せながそっと、なぎとの方へ寄ってくる。


「っ……! せな、なんで……!」


「私……一人で……寂しい……。仲間外れみたいな……」


「あーもー! 勝手にしろよ!」


「よし!」


 せなは嬉しそうに、さらに近寄る。


「ちょ……せな近……すぎ……!」


 なぎとは布団の中で固まり、

しゅいは反対側で小さく笑っている。


(せなのやつ、近すぎだろ……!

 こんな近くて寝れるわけねぇだろ……!

 一体何考えてんだよ……!)


 なぎとの心臓の音だけが、

静かな部屋に響いていた。


 

無理

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