タオル一枚で恋の温度が上がる
無理。
タオル一枚で恋の温度が上がる
――そして30分後。
せなはゆっくりとまぶたを開けた。
ぼんやりとした視界に、白い天井が映る。
「ん……? ここ……」
湯気の残り香がほんのり漂う。
自分がどこにいるのか、頭がまだ追いつかない。
「たしか……私……お風呂で寝て……。……溺れた!?!」
せなはガバッと起き上がり、周りを見渡す。
そこはホテルのリビング。
柔らかい照明が部屋をあたたかく照らしていた。
「あれ? なんで……?」
立ち上がった瞬間、
自分がタオル姿のままだと気づく。
「っ……! 意味分かんないんだけど!!」
慌てて近くにあった自分のコートを体に巻きつける。
頬が一気に熱くなる。
「でも……誰がここまで運んだの……?
ここには、しゅいとなぎとしか……。
……も、もしかして……!」
せなはキョロキョロと部屋を見回す。
すると――
少し離れた場所で、
しゅいとなぎとが そろって真っ赤な顔でそっぽを向いている のが見えた。
「な、ななななな……!」
せなはコートをぎゅっと巻き直し、
二人の方へ早足で向かう。
「ち、ちょっと……!」
「……な、なに……?」
しゅいは耳まで真っ赤にしながら、
視線を床に落としたまま答える。
「も、もしかしてだけど……私をここに運んだのって……」
「……俺じゃないし……。
なぎとが考えたんだし……」
しゅいはそっぽを向いたまま、
声だけが小さく震えている。
「なぎと?(怒)」
「ち、違……! おま、しゅい!
俺に責任押し付けんな!
大体お前がせなの後ろの方持ったんだろ!」
「え!? み、見てないよね!?!?」
「見るわけないだろ!!」
しゅいはブンブン首を振る。
その動きが必死すぎて、逆に怪しい。
「あ、そいえばしゅい、寝顔が可愛いとかなんとか……」
「おま……! 本人の前でそれ言うなよ!!」
「っ……! しゅいのバカ!!」
せなは真っ赤になりながら、
しゅいの肩をぺちんと叩く。
「ごめんって……!
だって……ほんとに……可愛かったんだもん……」
「なっ……!」
せなはさらに赤くなる。
「ふん! しゅいなんてし〜らない!」
せながプイッとそっぽを向いた瞬間――
巻いていたコートがずるっと落ちかけた。
「っ……!」
せなは慌ててタオルを押さえる。
「み、見た!?!?」
「「み、みてない!!」」
しゅいとなぎとは同時に顔を覆う。
耳まで真っ赤。
「本当!? 絶対!?」
「ま、まぁ……少しは……」
なぎとがぽつりと漏らす。
「は、は!?!?!?
なぎとのバカ!! もう嫌い!! 消えて!!」
「き、消えて!?!?
消えては無理だろ!!」
なぎとは両手を上げて必死に否定する。
せなはタオルを押さえながら急いで服に着替え、
深呼吸してから二人の前に戻ってきた。
「さ、さっきの……絶対絶対記憶から消して!!」
「い、いや……無理だろ……」
なぎとが小声でつぶやく。
「いいから早く消して〜!!!」
せなは怒りながら、
でもどこか泣きそうで、
そして照れすぎて顔が真っ赤なまま、
二人の頭をぽんぽん叩く。
「ちょ……!」
「おい……!」
二人は逃げようとするが、
せなは追いかけてくる。
「待て〜!! 忘れろ〜!!」
「無理だって!!」
「しゅいにげろ!!」
気づけば三人は部屋の中を走り回り、
まるで鬼ごっこのように笑い合っていた。
――そして数分後。
「すみません、少し静かにしてくださいね」
スタッフさんに軽く叱られ、
三人はそろって「すみません……」と頭を下げた。
でもその顔は、
どれも少し照れて、
そして楽しそうだった。
無理。




