デートじゃないけどデートみたいな会議
無理。
デートじゃないけどデートみたいな会議
そして、その次の日。
「うーん……どうしよ……」
せなが机に頬を乗せながら考え込む。
しゅいは椅子を後ろに傾け、軽い調子で言った。
「普通に水族館とかどう?」
「あ、確かに! いいかもね!」
「で、でもそれって……なんてか……」
なぎとはペンを握ったまま、耳まで真っ赤にして呟く。
「「「……デートじゃ……」」」
3人の声がぴたりと揃った。
一瞬の沈黙。
そして、3人とも同時に顔を逸らし、頬を赤く染める。
「……でも……行きたい……」
せなが小さく呟くと、
なぎとは一瞬だけ目を見開き、そっぽを向いたまま言う。
「せなが行きたいなら……まぁ……俺はどっちでもいいけど……」
しゅいも、耳まで赤くしながら強がる。
「ま、まぁ? 行ってあげても……いいけど……?」
そんな空気の中、突然ドアがノックされ、あおばが勢いよく入ってきた。
「おーい! いいお知らせがあるぞ!」
「? 何?」
せなが首を傾げると、あおばは胸を張って言った。
「休みが長くもらえそう!」
「……え!? なんで!?」
「いや、なんかいけた。……俺がカッコ良すぎたかな?」
「「それはない」」
しゅいとなぎとは即答した。
「ちょ、酷くない!?」
「いや、本当のこと言ってるだけだから」
「うん」
「悲しい……」
しょんぼりしながらも、あおばは
「じゃ、デート楽しんで! あ、3人だからデートじゃないか!」
と笑って去っていった。
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「……どする?」
せなが視線を落としながら聞くと、
しゅいがスマホを見せながら言った。
「じゃあ、とりあえず水族館行って……あ、この近くにめっちゃいいホテルあるわ。ここ、泊まろ」
「え……。お金かかるんじゃ……」
「それなら大丈夫だよ」
しゅいは軽く笑って肩をすくめる。
「貯金あるから。人気YouTuberだからね。ざっくり……何百万ぐらいは……」
「すご!」
せなが素直に驚く。
「じゃあ……そこ泊まって……水族館行って……あ、カフェにも行きたい!」
「じゃあこうして……」
「ここも行った方がいいんじゃね?」
3人は地図を広げ、スマホを並べ、
気づけば3時間も話し込んでいた。
しおりまで作り終えた頃には、
部屋の光はすっかり夕焼け色に変わっていた。
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「んー……疲れた……」
せなが机に突っ伏すように横に倒れた瞬間、
ふわっと暖かい感触が頬に触れた。
「ん……?」
下を見ると、そこはなぎとの膝の上だった。
「……ご、ごめ! わざとじゃなくて……!」
慌てて起き上がろうとするが、
なぎととの距離が近すぎて、顔が触れそうになる。
「ちょ……なぎと! 顔近い……」
「っ……! わ、悪りぃ……!」
なぎとは反射的に顔を逸らし、耳まで真っ赤に染めた。
せながゆっくり体を起こすと、
隣ではしゅいが羨ましそうにこちらを見ていた。
その視線に気づかず、せなはなぎとの方へ向き直る。
すると、なぎとは机に突っ伏すようにうずくまっていた。
「大丈夫〜?」
肩を軽くトントンと叩くと、
なぎとはビクッと震え、小さく呟いた。
「触んな……」
「なんで?」
「……近くて……ドキドキすんだよ……バカ……。言わせんな……」
声は震え、
普段の無愛想さとはまるで違う、
弱くて、照れた音だった。
せなが横から覗き込むと、
なぎとは顔を真っ赤にして、耳まで熱そうにしている。
その姿があまりにも可愛くて、
思わず言葉が漏れた。
「……可愛すぎ……」
なぎとは一瞬だけ目を見開き、
すぐに顔を逸らして、さらに深くうずくまる。
「は……!? ……せなのバカ……」
その隣で、しゅいは小さく呟いていた。
「なんだよ……イチャイチャすんなよ……俺だって……せなのこと……好きなのに……。あー、なんでこんなにイライラすんだよ……。大体せなはなぎとのじゃなくて……」
しかし、その声は
せなにも、なぎとにも届いていなかった。
無理。




