せなを巡る独占欲が渋滞中
無理。
せなを巡る独占欲が渋滞中
そして、その次の日。
昼の光が廊下の窓から差し込み、
白い床に細長い影を落としていた。
なぎとはいつものように無表情で歩いていたが、
どこか考え事をしているように眉が寄っていた。
曲がり角を曲がったその瞬間――
「わ!」
「うわっ!」
みのが勢いよく飛び出してきた。
「ふふ、びっくりしたでしょ〜?」
みのは満面の笑み。
なぎとは心臓を押さえながら、必死に平静を装う。
「し、してないし!」
「え!? さっき『うわっ!』って言いましたよね?」
「言い間違いだから」
「も〜」
みのは頬を膨らませて抗議する。
「って事で、久しぶりの命令です!」
「……。……あ、そんな約束したっけな……」
「そうですよ! しかも、新しいなぎとさんの情報手に入ったんですよ!」
みのはスマホを取り出し、動画を再生する。
『好きだよ、バカ……気づけよ、そろそろ。
だから……心配させんなよ……』
寝ているせなに向かって、
なぎとが小声で言っている動画だった。
「キスシーン……最高でした!
寝てる間にキスとか……見てる方もドキドキしました〜!
まるでアニメのワンシーンのような……!!」
「いやいやいや……!
あれは……その……勢いっていうか……!
別に深い意味とか……ねぇし……!
てかなんで撮ってんだよ……ほんと……!
あんなのせなに見られたら……俺……マジで立ち直れねぇから……。
ってか、お前そのニヤニヤ顔やめろ……煽ってんのか……!」
「ふふ、じゃあ、命令ちゃんと聞いてもらいますよ!」
「くそ……」
なぎとは観念したように肩を落とす。
「『せなは俺のもんだ!』って、どのタイミングでもいいので言ってください!」
「は……は!? 絶対無理!」
「いいからいいから〜。アルバムに残しといてあげますから〜」
「更に嫌だわ!」
みのに押され、
なぎとはせなの部屋の前まで連れてこられた。
「ほらほら〜」
「急かすなよ……!」
なぎとは深呼吸して、扉をノックする。
「……。せ、せないる?」
「いるよ〜」
恐る恐る扉を開けると、
せなの部屋にはしゅいもいた。
「しゅいと何してたの……?」
「ゲームしてたんだ〜。なぎとも一緒にやる?」
「やらない……」
「え?」
せなは目をぱちぱちさせる。
「いつもゲームやってるよな?
体調悪い?」
しゅいも心配そうに覗き込む。
「いや……。その……
せ、せなが……しゅいと……二人でゲームやってるのが……
気に食わないだけ……」
「え、っと……? ありがと……?」
せなは頬を赤くしながら答える。
しかし、しゅいはむしろ怒っていた。
「は!?
俺だってなぎととせなが一緒になんかやってたらモヤモヤすんだけど!?」
「ちょ……しゅい……!」
「……」
なぎとは黙ったまま、視線を落とす。
「……ってか……せなはその……俺のだし!」
しゅいは真っ赤になりながら叫ぶ。
その言葉に、なぎとは一瞬だけ目を細め――
「いーや。せなは俺のだよ」
そう言って、せなをぐいっと引き寄せ抱きしめた。
「だろ? せな」
「へ……? っ……!!!
ちょ、え、あ、えっとその……」
せなは顔を真っ赤にして固まる。
瞬きが早くなり、耳まで赤い。
「おま……! せなに何して……!」
「ん? ただ引き寄せただけだけど?
なんか文句?」
「……せなは俺のなんだからなぎとのじゃないだろ!」
「いや、せなは俺のだからお前のではない」
なぎとは抱きしめる腕を離さない。
だが、その腕は震えていた。
照れと緊張で限界なのが丸わかりだ。
「あの〜。ちょっといいですか?」
せなが二人の間に割って入る。
そして、なぎとの腕をそっと外しながら言った。
「前もこんな感じのケンカあったよね?
その時、“しない”って約束しなかったっけ?」
「え、っと……」
「……」
二人とも気まずそうに黙る。
「あー、よく分かった。
……バット取ってくるから二人ともそこで待っときなさい」
「……ヤンキーめ……!」
「ん?
誰かな、私の事ヤンキーなんて言った人。
私はヤンキーじゃないよ?」
「ご、ごめん!」
しゅいは即座に土下座した。
「……許して欲しいんなら……
遊びに連れてって……。今度の休み……」
「「え?」」
なぎととしゅいが同時に変な声を出す。
「そ、その、ひ、暇だから!
……ダメ?」
せなが上目遣いでお願いしてくる。
その破壊力に、二人は同時に崩れ落ちそうになる。
「ま、まぁ……?
俺も暇だし……いいけど……」
「しょうがないなぁ……。行ってやるよ……」
3人とも顔が真っ赤だった。
その様子を、
扉の隙間から覗いていたみのは――
口元を押さえながら、嬉しそうにクスクス笑っていた。
無理。




