メイド服の魔法で恋が加速する
無理
メイド服の魔法で恋が加速する
そして、バレンタインの次の日。
昼下がりの柔らかな光が廊下に差し込み、
白い壁に淡い影を落としていた。
しゅいがぼんやり歩いていると――
「あ、せな!」
振り返った先に、せながいた。
昨日より少しだけ距離が近い気がする。
「昨日チョコありがと。めっちゃ美味しかった」
「あ、ありがと」
言葉は短いのに、
二人とも頬がほんのり赤い。
しゅいは、何か言いたそうに口を開いては閉じ、
勇気を振り絞るように視線を上げた。
「あの……よかったら、これから一緒になんかしない?」
「……! いいよ!」
せなはぱっと笑顔になり、
その笑顔にしゅいの心臓が跳ねた。
「何する?」
「ん……どうしよっか。
まぁ、しゅいの部屋着いたら決めよっか!」
せなは軽い足取りで歩き出し、
しゅいはその後ろ姿を見て、
胸の奥がじんわり熱くなるのを感じた。
---
「で、ゲームするの?」
「いや、今回は違うことしよっかなって思ってるんだけど……
二人でできる遊びみたいなの思い浮かばないんだよな……」
「……じゃあ、普通に話して英語禁止ゲームみたいなのは?
例えばバットとかカタカナとか英語喋ったらダメみたいなやつ」
「あー、あり! それしよ!」
しゅいは嬉しそうに頷く。
でも、どこか落ち着かない。
せなが近いからだ。
「じゃあ、はじめ!
……話の話題どする?」
「うーん……好きな人の特徴とか?」
「は……は!? 何言って……」
「い、いやならいいよ?」
「もう……それでいいよ」
しゅいは顔を逸らし、耳まで赤くなる。
「俺は……とりあえず……まぁ……たまに優しい……」
「私はそだな……たまに頼りになる所? いや、はず?」
「はず?笑 はずって何?」
「いや、今まで頼った事ない気がして」
しゅいは思わず吹き出し、
でもすぐに照れたように眉を寄せた。
「あの……話題やっぱり変えてもいい?」
「いいよー」
「じゃあ、好きな事とかどう?」
「私は……お菓子作ることとか結構好きだよ!」
「俺は……ゲームする事」
「なるほど……。
……え、待って! 今ゲームって言ったよね!?!? アウトー!」
「え、え!? 嘘だ!」
「はい、しゅい罰ゲーム」
せながニヤッと笑うと、
しゅいは肩を落とし、情けない声を出した。
「で、何すんの? 罰ゲーム」
「うーん、そだね。じゃあ……これ着て!」
せながスマホを見せる。
そこには――メイド服と猫耳。
「確か私のクローゼットにあるはず!
取ってくるから待っててね!」
「え……ってちょっと待っ……」
せなはもう走り去っていた。
「ちょ、ちょっと待って……
せなの前であんな恥ずかしい格好……絶対無理……
もう……最悪……」
しゅいは顔を覆い、
床に座り込みそうになっていた。
「しゅいー、あったよ!」
せなが満面の笑みで戻ってくる。
「私後ろ向いてるから着替えて!」
「こんな恥ずかしい格好絶対無理!」
「いけるいける!」
結局、せなの押しに負けて――
しゅいは震える手でメイド服に袖を通し、
最後に猫耳をそっと頭に乗せた。
「一応できたけど……」
「本当!」
「ちょ、待って!
まだ見せる心の準備が……」
言い終わる前に、せなが振り向いた。
「え……」
「あ……っと……」
「……」
「え、っと……せな……?」
しゅいは不安で胸がぎゅっと縮む。
似合ってないのかもしれない。
期待してなかったはずなのに、
なぜか心が痛い。
「あの……」
「め……」
「え?」
「めちゃくちゃ可愛い!」
「えぇ?」
せなの声は弾けるように明るかった。
「待って待って似合いすぎ! 可愛すぎ!」
せなはスマホを取り出し、
しゅいを連写し始める。
「やばい! かわいいー!」
「ちょ……せな……!? 離れ……」
せなは勢いよく抱きつき、
しゅいのほっぺにスリスリする。
「かーわーいーい!」
「ちょ……せなってば……!
マジで一回……離れて……
心臓もたないから……」
しゅいの声は震えていた。
顔は真っ赤で、耳まで熱い。
胸の鼓動は自分でもうるさいほど。
「……。……ご、ごめ!!!!」
せなは我に返り、
飛び退くように離れた。
「……」
「……つい……無意識で……
しゅい、可愛すぎて……」
「……ありがと……」
しゅいは俯きながらも、
口元が少し緩んでいた。
「あ、あの!
もうちょっとその格好で私と一緒にいない!?」
「……!?
え、っと……い、いいよ!」
しゅいは耳まで真っ赤にしながら答えた。
「わーい! しゅいー!」
せなは嬉しそうに飛び跳ねる。
「ねぇ、なんでそんなに似合ってるの!?
マジ可愛い!
毎日その服でいいかも!」
「それはその……俺が照れで死ぬから」
「……。じ、じゃあ!
その……たまには……してよね……。
で、でも!
他の人の前では絶対ダメ!
しゅいのメイド姿は……その……
私だけのものなんだから!」
「っ……!
じゃあ……たまになら……許す……」
しゅいが真っ赤になって言うと、
せなは幸せそうに笑った。
無理




