甘いチョコより甘い反応
無理
甘いチョコより甘い反応
そして、次の日。
今日はついにバレンタイン。
朝からそわそわしていたせなとみのは、
早めに仕事を片付けたものの、
気づけば夕方の柔らかな光が部屋を染めていた。
窓から差し込むオレンジ色の光が、
床に長い影を落としている。
その静けさが、逆に胸の鼓動を強く感じさせた。
「じゃあ、まずはみんなに配りに行きますか」
「うん!」
私とせなは、緊張しながらも順番にチョコを配っていった。
せなはしゅいの分、みのはあおばの分を最後に残し、
たゆとに渡し終えたところで――
あとは“本命”だけ。
「緊張します……」
「じゃあ、お互い部屋行こっか……」
「また後で色々聞かせてくださいね」
みのは深呼吸をして、あおばの部屋へ向かっていった。
私もしゅいの部屋へ向かう。
手が震えて、ノックするのが怖い。
でも、勇気を振り絞って――
「コンコン」
「し、しゅい、いる?」
「いるよ〜」
しゅいの明るい声が返ってきて、
胸の緊張が一気に跳ね上がる。
せなは恐る恐る部屋に入った。
「で、どしたの?」
「え、っと……今日バレンタインじゃん……?」
「そだね」
「だから……その……」
言葉が喉でつっかえる。
しゅいはそんな私を見て、ふっと優しく笑い、
チョコを持っていない方の私の手をそっと握った。
「ほら、早く言って」
「っ……! その……チョコ……しゅいに……あげる……」
震える手でチョコを差し出す。
「わ、おいしそ!」
しゅいは目をキラキラさせて喜んだ。
「あ、ハート……」
「そ、それはただ普通についてただけで……!
別に……深い意味とか……ないから……!」
「せな、ありがと!」
しゅいの笑顔が眩しくて、
胸がぎゅっと締め付けられた。
――その頃みのは。
「あおばさんー!」
みのは勢いよく、ノックもせずに部屋へ入った。
「あおばさ……って……え?」
「あ……」
みのが見たのは――
恋愛興味ないと言い張っていたあおばが、
バカ甘恋愛アニメを真剣に見ている姿だった。
画面の光に照らされた横顔は、
ほんのり赤く染まっている。
「……あおばさん?
いつも恋愛に興味ないって……。
いや、顔赤くしてる時めっちゃあるのでそれはないと思ってましたけど……
めっちゃ興味あるじゃないですか……」
「っ……みのにだけは見られたくなかったのに……もう……最悪……」
あおばは耳まで真っ赤にして、枕に顔を埋めた。
「……恋愛興味ないとか言って、今バカ甘なの見てましたよね〜?」
「ほ、他のやつには内緒にしといて!
恋愛興味ないって言ってるし……
まぁ男子は俺の好きな人知ってるからいいけど……」
「? なんか言いました?」
「な、なんでもない!
と、とにかく何用……?」
「あ、えっと……バレンタインだからチョコ作ってきたんですけど……」
「え、マジで言ってる!? よっしゃー!」
「じゃあ今回は前のお返しと言う事で」
「? どゆこと?」
みのがチョコを差し出すと――
あおばは一瞬で固まり、
次の瞬間、顔が真っ赤に染まった。
「ちょ、みの?
アイラブユーって書いてあるけど?
え、っと……?」
「前、あおばさんがくれたやつのお返しです……」
「……。
あ、うわ! 嫌な事思い出した……。
もう無理かも……」
「私もこのチョコのせいで変な事思い出しました!」
2人は同時にそっぽを向いた。
「ねぇ」
「な、なんですか?」
「目、瞑って」
「? は、はい?」
みのが戸惑いながら目を閉じると、
あおばは深呼吸を一つして――
「いくよ」
そのまま、みのをぎゅっと抱きしめた。
「……ちょ、あおばさん!?
ち、近い……。離れて……!」
「あ、え、っと、なんか無意識でごめん(棒)」
「いいから早く離してください!」
「……あ、甘えるけどさ……
もうちょっとこうしてても……いい?」
「っ……。
もう勝手にしてください!」
みのは怒ったように言ったが、
顔は真っ赤で、耳まで熱くなっていた。
夕方の光の中で、
二人の影が重なって揺れていた。
無理




