あおばの恋バナ尋問室
無理。
あおばの恋バナ尋問室
夕方5時、カーテンの隙間から差し込む夕陽が、じんわりと床を染めていた。
その光の中で、なぎとはベッドの上にうずくまっていた。
「……もう、最悪……。絶対聞かれたくなかったのに……。みののやつ……!」
枕に顔を押しつけながら、くぐもった声で呟く。
頬は火がついたように熱く、耳の先まで真っ赤だった。
自分がぶっきらぼうな性格なのは、わかってる。
素直になれないのも、昔からだ。
だからこそ、本音なんて、簡単に口にできるわけがない。
それなのに――
「……せな、かわいすぎて……つい、目で追っちまうだろ……。
キスシーンとか……ドキドキしすぎて、マジでヤバかったし……」
なぎとはベッドに仰向けになり、天井を見つめた。
夕陽が差す天井は、どこまでも静かで、
でも胸の中は、さっきからずっとざわついていた。
「でも、せななんて……ズルくて、性格悪くて……。
でも……可愛くて、笑顔が可愛くて……。
……あー、俺、多分……せなの全部が好きなんだ……」
ぽつりと漏れた言葉に、自分で驚いて、また顔を覆う。
そのとき――
「なぎといるー? あ、いた」
ドアが開いて、あおばがひょっこり顔を出した。
「……何用だよ」
「は? 何用って、そりゃあ……暇だから来たに決まってるじゃん」
「暇なら他のとこ行けよ」
「えー? なぎとと話したかったんだけど?」
「……は? なんで」
「いや……恋バナ……的な?」
あおばが、少しだけ頬を赤らめて言った瞬間、
なぎとの脳裏に、せなの顔がばちんと浮かんだ。
慌てて頭を振る。
「す、好きな人なんていねぇし!」
「本当?」
「ほ、本当だって!」
「えー? てっきり“せ”から始まるあの人のことが好きなんだと思ったんだけど?」
あおばは、じっとなぎとの顔を見つめる。
その視線が、妙に鋭くて、逃げ場がない。
「は、はぁ!? 俺がせなのこと好きなわけ――!」
「まだ“せな”って言ってないけど?」
「……っ、それは……!」
「やっぱりな。お前、せなのこと好きだろ」
「そ、そんなわけねぇだろ! あんな性格悪いやつ!」
なぎとは必死に否定するが、あおばの顔はニヤニヤが止まらない。
「自分の気持ちに正直になっちゃえよ〜」
「なってるし! あんな奴、なんとも思ってねぇし!」
「じゃあ、せなのこと嫌い?」
「き、嫌いってわけじゃ……! 普通だし! ただのメンバーってだけで!」
「ふーん……意地っ張りだね〜。
ま、俺はなぎとが答えるまで一生聞き続けるけど?」
あおばが、じわじわと顔を近づけてくる。
なぎとはベッドの端に追い詰められ、ついに――
「っ……! ミラクルサーチ、全員性格悪ぃ……! チッ……
ああもう……好きだよ……せなのこと……!」
「もう一回どうぞ〜!」
「だからっ!
せなのことが好きなんだよ……!
ちょっと怒りっぽいとこも、優しいとこも、笑ってるとこも……
……ぜんぶ、好きなんだよ……
なんか……可愛く見えて……な……
……あーもう、出てけ! 俺の好きな人聞いたなら! ……バカあおば!」
顔を真っ赤にして叫ぶなぎとに、
あおばは肩をすくめて笑った。
「な……リーダーに向かって“バカ”とは……なんて度胸だ。
……まぁ、いっか。はいはい、出ていきますよ〜」
あおばは軽く手を振って、部屋を出て行った。
残されたなぎとは、ベッドの上でうずくまる。
顔を伏せ、枕に突っ伏して、真っ赤なまま呻いた。
「……あいつら、性格悪すぎ……。
言わなきゃいけない空気になるだろ……。
……もう、最悪……。穴があったら入りてぇ……。終わってる……」
でも、心の奥では、少しだけ――
ほんの少しだけ、軽くなった気もしていた。
「……でも……一番のチクリ野郎、みおとには絶対知られねぇようにしねぇと……」
なぎとは、枕に顔を埋めたまま、固く決意した。
――これ以上、バレるわけにはいかない。
せなのことが好きだなんて、絶対に。
無理。




