不器用な優しさが、いちばん甘い
甘々展開!
不器用な優しさが、いちばん甘い
カメラが回り始めると、画面には
ゲーム内のリビングで並んで座るふたりのアバターが映し出された。
現実のふたりも、モニターの前で肩を並べて座っている。
少し緊張したような空気の中、せなが元気に口を開いた。
「はい、みなさんこんにちは〜! せなでーす!」
「……なぎとです」
なぎとは、少し低めの声でぶっきらぼうに挨拶する。
けれど、その声の端には、ほんのり照れがにじんでいた。
「ってことで、今回初の動画ということで、質問に答えていこうと思います!
えー、一個目。『2人の性格を教えてください』!」
「……まぁ、俺は……よく“口悪い”って言われるけど……
せなも……わりと怖ぇ感じだと思うけどな」
「ちょ、彼女に向かって失礼じゃない!? ……ま、いっか。次行くよー!」
せなが笑いながらツッコむと、なぎとは少しだけ口元を緩めた。
「えっと、次の質問……『どっちから告白しましたか?』……え……っと……」
その瞬間、ふたりの動きが止まる。
画面越しにも分かるほど、顔が一気に赤くなった。
「……えっと……俺から……告ったんだよ……。……あーもう、言わせんなよ……」
なぎとは、顔を手で覆いながら、低く唸るように言った。
「ふふっ、あの時は壁ドンされてびっくりしたな〜」
「……は? そんなのしたっけ……?」
「うん。してたよ。めっちゃ嬉しかった」
「……うるせぇな……」
なぎとは、そっぽを向きながらも、耳まで真っ赤だった。
「じゃあ次ー! 『キスしてくださ……い?』……って、え?」
せなが読み上げた瞬間、空気が一変する。
「ちょ、せな……これはさすがに……ゲームでも……無理だろ……」
なぎとは、声をひそめて焦ったように言う。
その目は泳ぎ、手元のコントローラーをぎゅっと握りしめていた。
「……ゲーム、だよね?」
せなは、少しだけ首をかしげて、なぎとの顔を見つめる。
そして——
チュッ。
ふたりの唇が、そっと重なった。
一瞬、時間が止まったように感じた。
「⁉︎ ……は? ……おい、せな……お前……何してんだよ……!?」
なぎとは、目を見開いたまま固まり、
一拍置いてから、低く、荒い声を吐き出す。
「……ふざけんなよ……いきなり……そういうの、すんなって……!
……っ、マジで……意味わかんねぇし……! ……お前、ほんと……」
言葉が続かない。
なぎとは顔を背け、拳をぎゅっと握りしめた。
「……調子乗んなよ……バカ……」
せなは、なぎとの横顔を見つめながら、
小さく笑って、そっと呟いた。
「……でも、嫌じゃなかったでしょ?」
「……知らねぇよ……」
なぎとは、そう言いながらも、
耳まで真っ赤に染まっていた。
その様子を見ていたしゅいは、ソファのクッションを握りしめながら叫んだ。
「なぎと……!!! マジで許さん。マジで許さんからなー!!!!!!」
「じ、じゃあ……次……『なぎとさんは、せなさんのことをどれくらい好きですか?』……って……」
「……はぁ!? なんでそんなこと言わなきゃなんねぇんだよ……!
……っ、マジで……めんどくせぇ……。
……でも……言えばいいんだろ、言えば……。
……好きだよ、……お前のこと。……ちゃんと、な。
……可愛いし、うるさいし、変に真面目だし……たまにアホみたいなこと言ってくるくせに、そういうとこが……なんか、気になんだよ……。
……っ、つーか、そういうの……いちいち言わせんなって……
……こっちは、こういうの慣れてねぇんだよ……ってか、言ったら絶対お前、ニヤニヤすんだろ……。
……うわ、もう……言ってから後悔してんだけど……。
……でも、まあ……言ったからな。……聞いたなら、もう黙れ……バカ……」
なぎとは、言い終えたあと、
顔を真っ赤にして、ソファの背にもたれかかる。
腕を組んでそっぽを向きながらも、
耳の先まで真っ赤なのは隠しきれなかった。
「なぎとさんが……なんか不器用で可愛い……おかしいですね……」
観戦していたみのが、ぽつりと呟いた。
「……あ、ありがと……。じ、じゃあ、次。『それぞれ、どんなところが好き?』」
「……は? ……チッ、めんどくせぇな……。
……別に……そういうの、改めて言うことかよ……。
……っ、……ま、優しいとこ……とか。……たまに、な。……たまに、な……」
「私は〜……んー……いじわるだけど、まあ……面白いし?
料理うまいし……なんか、色々弾けるし……うん、そんな感じ?」
ふたりは、目を合わせるでもなく、
それぞれ別の方向を見ながら、
でも、口元だけはゆるんでいた。
そして、質問コーナーは続き——
「……あ、もうこんな時間! じゃあ、今回は作っておいたハンバーグを夜に食べようと思います! いただきます!」
画面の中で、せながハンバーグを切ると、
中からとろりとチーズがあふれ出した。
「……なぁ、せな」
「ん?」
「……アーンしろ」
「えっ……?」
「……だから……アーン、だよ……聞こえてんだろ……。
……俺、もう……腹いっぱいで……食えねぇから……。ほら、残すのもったいねぇし……。
……お前が食えよ……。別に、そんだけだし……。
……っ、あーもう、いいから……黙って口開けろって……!」
せなは、ぽかんとした顔でなぎとを見つめ、
それから、ふっと笑って、フォークに刺さったハンバーグをそっと口に運んだ。
「……美味しいー! うん、やっぱりなぎとのハンバーグ、好きかも……
前から料理美味しいの知ってたけど……なんか、今日の、特に美味しい……」
せなは、フォークを口から外して、
ほっぺを軽く押さえながら、ふわっと笑った。
「……なんか、ちょっと幸せ……」
「……っ、は? ……そ、そんなん……
……別に、いつも通り作っただけだし……
……お前が勝手にテンション上がってるだけだろ……
……っ、てか……そんな顔すんな……こっちが変な気分になる……」
なぎとは、顔を真っ赤にして、フォークを置いたまま固まっていた。
目をそらしながらも、耳の先まで真っ赤で、
その手元は、ほんの少しだけ震えていた。
「ってことで! 今回は質問に答えてみましたー!
それでは、また次回の動画で会いましょう! みんな、バイバーイ!」
動画が終わると、リビングには沈黙が落ちた。
その中で、しゅいが低く、しかし確実に怒りをにじませて呟いた。
「なぎと……マジで……キスにそれに、アーンまで……マジで許さん……」
「マジごめんって……。ゲームだし、別にいいだろ?」
「よくないから。大体、せなは俺のなんですけど」
「……しゅい、それって……彼氏宣言……?」
「せ、せないたの!? い、いや……あれは冗談で……その……あの……違うくて……!」
「じゃあ、楽しみにしてるね」
「ちょ、せな……!!」
しゅいは、顔を真っ赤にしてクッションに顔を埋めた。
その横で、なぎとも同じように顔を真っ赤にして、
頭を抱えながら、心の中で叫んでいた。
(……せなのやつ……可愛すぎんだろ……)
番外編
録画が終わった瞬間、ピッという音とともに、部屋の空気がふっと緩んだ。
モニターの光だけがぼんやりと灯り、
その青白い明かりが、ふたりの顔を静かに照らしている。
せなは、ペットボトルの水を一口飲み、
そのまま何気ないふうを装って、隣に座るなぎとをちらりと見た。
なぎとは腕を組み、背もたれに深くもたれかかっている。
けれど、その視線はどこか落ち着かず、
モニターの隅をじっと見つめたまま、口を閉ざしていた。
「……ねぇ、なぎと」
「……ん」
「……さっきの動画でさ、“好きだよ、ちゃんと”って言ってたじゃん?」
「……ああ?」
「……あれって……ほんと?」
その瞬間、なぎとの肩がピクリと跳ねた。
わずかに強張った表情のまま、彼は鼻を鳴らし、
わざとらしくため息をつく。
「……は? あれは……その……
……動画だから、だろ……! 空気的に……言わなきゃ変な感じになるし……
……ああいうの、言っといた方が……まぁ、収まりいいっていうか……」
「ふーん……じゃあ、ほんとは違うんだ?」
「っ……ち、違うってわけじゃねぇけど……!」
「じゃあ、ほんとなんだ?」
「……いや、だから……その……
……あの時は、なんか……言わなきゃ終わんねぇ感じだったし……
……っ、てか、お前が変な顔してくるから……!」
「変な顔ってなに?」
「……いや、だから……そういう、なんか……
……“言ってほしいです”みたいな顔……してただろ……!」
「してないよ?」
「してたっつーの!! 絶対してた!! あの目、マジで……ずるいし……!」
なぎとは、言い終えたあと、
自分で言った言葉に気づいたのか、
一瞬で顔を真っ赤に染めた。
「……っ、ちげぇし……今のナシな……」
せなは、くすっと笑いながら、さらに追い打ちをかける。
「じゃあ、どのくらい好き?」
「は!? ……お前、マジで……」
「“ちゃんと”って言ってたけど、どのへんが“ちゃんと”?」
「……うるせぇ……」
「“可愛いし、うるさいし”って言ってたけど、どれが一番好き?」
「……知らねぇよ……!」
なぎとは、顔を真っ赤にしながら、ソファに沈み込んだ。
腕を組んで、そっぽを向いたまま、
口をへの字に結び、足先を落ち着きなく揺らしている。
「……お前さ……そういうの、いちいち掘り返すなって……
……マジで……恥ずかしいんだよ……」
「でも、気になるもん。
“ちゃんと好き”って言ってくれたの、嬉しかったし……
……だから、ちゃんと聞きたいの」
「……っ、……もういいだろ……
……お前、マジで……」
「しつこい?」
「……っ、あーもう!! そうだよ!! しつけぇんだよお前は!!」
なぎとは、ついに顔を両手で覆って崩れ落ちた。
耳の先どころか、首筋まで真っ赤に染まっている。
声も少し裏返って、呼吸が浅くなっているのがわかる。
「……なんでそんなに聞きたがんだよ……
……言っただろ、一回……動画で……
……あれで十分だろ……!」
「でも、動画のは“動画だから”って言ってたじゃん。
じゃあ、今ここで、ちゃんと聞きたいな〜って思って」
「……お前、ほんと性格悪ぃ……」
「うん、知ってる。で、どうなの?」
「……っ、……あーもう……」
なぎとは、ぐしゃぐしゃに頭をかきむしって、
せなを見ずに、低く唸るように言った。
「……じゃあ、好き……って言ってやるよ……」
「……え?」
「……あー、もう!! お前しつこい!!
……い、一回だけだかんな!? 一回だけ!!
……二回目はねぇからな!? マジで!!」
「……うん。聞いてる」
「……っ、……好きだよ……お前のこと……」
その声は、かすかに震えていた。
なぎとは、言い終えた瞬間、
クッションを抱えて顔を埋め、
全身を丸めるようにしてソファに沈み込んだ。
「……っ、……うるせぇ……もう喋んねぇ……」
せなは、ふわっと笑って、
なぎとの腕にそっと寄りかかった。
「……ありがと。わ、私も......好きだよ」
なぎとは、何も返さなかった。
けれど、クッションに埋もれたその耳は、
真っ赤に染まったまま、ぴくりと揺れていた。
——その背中は、照れと悔しさと、
そしてちょっとした嬉しさで、
ほんの少しだけ震えていた。
なぎととせなのペアもいいね!




