"演技"のはずが、照れが本物
無理です。
"演技"のはずが、照れが本物
そして……動画撮影、開始!
カメラの赤いランプが点灯し、リビングに緊張と高揚が走る。
冬の午後の光が、カーテン越しにやわらかく差し込み、
テーブルの上には、くじ引き用の箱と、メンバーのマグカップが並んでいた。
「はい、こんにちは〜! ミラクルサーチのあおばです!」
「みのです!」
「しゅいで〜す!」
「なぎとです!」
「みおとです!」
「せなだよ〜」
「ってことで! 今回の企画は……カップル対決〜〜!!」
あおばの声が響くと、メンバーから「うわ〜」と微妙な笑いが漏れる。
「今回はこのくじ引きでペアを決めて、
それぞれ“カップルになりきって”、
どのペアが一番“それっぽかったか”を競う対決になってます!」
あおばが、カップル対決のルールを説明して行く。
「なんでそんなことするのかって? 最近さ、カップル動画って流行ってるじゃん?
俺たちもやってみよう〜!ってことで、ノリと勢いで始まりました! 質問ある人〜?」
「はいはーい!」
手を挙げたのは、みおと。眉をひそめて、真顔で言う。
「女2人で男4人だけど、どうやってやるんですかー?」
「はい、それはですね〜、ご安心ください!」
あおばがドヤ顔で胸を張る。
「この日のために、さっき声かけてきました!
俺たち、ミラクルサーチのファンクラブの中から、
2人の協力者を召喚してきました〜〜!」
「お前……なんてことしてるんや……」
みおとが呆れたように言うと、
しゅいは「マジかよ……」と小声でつぶやいた。
「だって! しょうがないでしょ? ってことで、はい、自己紹介お願いしまーす!」
あおばの声に応えて、リビングの奥から2人の女の子が現れる。
緊張した面持ちで、少しぎこちない笑顔を浮かべていた。
「ど、どうも……りこです……。今回は、ミラクルサーチの皆さんと一緒に動画に出させてもらって、とても嬉しく思ってます」
「え、えっと……さやです。性格はよく、おだやかって言われてます。よろしくお願いします」
2人は、同時にぺこりと頭を下げた。
「ってことで、みんなOK?」
「……あ、うん」
しゅいは、少し戸惑っていた。
(これで……もし、この2人のどっちかと当たったら……絶対気まずい……)
(できれば……せな……せながいい……)
「じゃあ、くじ引いていこっか!」
「うん!」
「まずは俺から!」
あおばがくじ箱に手を入れ、1枚を引き抜く。
「俺は……えっと……さやさん! よろしく!」
「あ、よろしくお願いします」
2人は軽く会釈し合い、少し照れたように笑った。
(できたら、みのとがよかったけどな……)
あおばは、ちらりとみのの方を見て、心の中でため息をついた。
次は、しゅいの番。
(せな来い……せな……!)
祈るような気持ちで手を伸ばし、くじを引く。
「えっと……りこさん……!」
「あ、はい! よろしくお願いします」
「あ、こちらこそー……」
しゅいは、笑顔を作りながらも、どこかぎこちない。
(あああああ……せなじゃなかった……!)
心の中で崩れ落ちながらも、なんとか平静を装った。
続いて、みおと。
「えっと……俺は……みの!」
「あ、みおとさんか……」
「何、その悲しそうな反応!」
「だって……私、みおとさんにちゃんとついていけるかなって……」
「いや、俺そんな難しい人間ちゃうし!? むしろ俺がついていきたいくらいやし!」
「えっ……なにそれ……」
みのが思わず笑って、頬を赤らめる。
みおとは「やってもうた……」と小声でつぶやいた。
そして、最後に残ったのは、なぎととせな。
「よろしく〜」
「あ、えっと……よろしく……」
ふたりは、少し照れながらも目を合わせた。
その瞬間、なぎとの耳がほんのり赤く染まったのを、せなは見逃さなかった。
こうしてペアが決まり、8人はそれぞれ、
ゲーム内であらかじめ用意された“カップルの家”へと移動していった。
動画には映らない準備パート。
でも、そこには……カメラの外だからこそ見える、
ちょっとした“本音”があった。
なぎと × せな|準備中の裏シーン
「な、なぁ……せな……」
「ん? どうしたの?」
「ここの……食べるシーンでさ……○○入れたりしたら……その……カップルっぽくなるんじゃないかなって……」
「えっ……○○……!? それ、やるの……?」
せなが目を丸くして、思わず笑う。
でも、その笑顔の奥には、ほんのり赤みが差していた。
「べ、別にやれって言ってるわけじゃねーし!
ただ……その……動画的に……映えるかなって思っただけで……! ……でも……俺がしたいのもあるってか……いや……なんでもない……!」
「ふーん……“映える”ねぇ……」
「な、なんだよその言い方! ちげーし! 俺がやりたいとか、そんなんじゃねーし!」
「……でも、“俺がしたいのもあって”って、さっき言ってたよ?」
「っ……あ、あれは……その……言葉のアヤってやつで……!」
「ふふ……なぎと、今めっちゃ焦ってる〜」
「焦ってねぇし!! お前が勝手に深読みしてんだろ!」
「でも、顔……真っ赤だよ?」
「ち、ちがっ……これは……その……ライトのせいだって言ってんだろ!」
「ライト、そんなに赤くないけどな〜?」
「……くっそ……お前、ほんと性格悪い……」
「ひど〜い。でも、なぎとがそうやって照れるの、ちょっとだけ……可愛いかも」
「なっ……! か、可愛いとか言うなよバカ!!」
「え〜? でも、ほんとに……ちょっとだけ、嬉しかったんだよ?」
「……っ、さ、さっきの、録音してないよな!? マジで、してたら消せよ!? 絶対だかんな!!」
「さぁ〜、どうだろ〜?」
「お前、ほんと……ずるい……」
なぎとは、完全にそっぽを向いて、
耳まで真っ赤に染まっていた。
せなは、そんななぎとの横顔を見て、
こっそり笑みをこぼす。
せなは、そんななぎとの横顔を見て、
こっそり笑みをこぼす。
「……ねぇ、なぎと」
「……なんだよ」
「さっき、“俺がしたいのもある”って言ったの、
あれ、ほんとはちょっとだけ……本音だったりする?」
「っ……ち、ちげーし!! ……ちょっとだけとか、そういうのじゃねーし!!」
「じゃあ……“だいぶ本音”だった?」
「ちがうっつってんだろ!! ……だいたいお前が……そうやって……からかうから……」
「……ごめん。でも、嬉しかったのはほんとだよ?」
「……っ……」
なぎとは、しばらく黙っていた。
そして、ぽつりと、ぼそっと呟く。
「……お前が嫌じゃないなら……別に……やってもいいけど……」
「え?」
「……だから、○○とか……そういうの……
お前が嫌じゃないなら、やってもいいって言ってんだよ……!」
「えっとね……うん。私、嫌じゃないよ。多分」
「……っ、そ、そうかよ……なら……いいけど……」
「ふふ、じゃあ……本番、楽しみにしてるね」
「……あんま見んなよ。その……顔、赤いのバレるから……」
「もうバレてるけどね〜」
「うるせぇ……!」
ふたりの声は、ゲームの中の家の壁に、
くすぐったく、甘く、静かに反響していた。
まるで、まだ始まっていない恋の予感を、
そっと包み込むように。
(待って……やばいかもしれない……。なぎとま……意外と……かっこいいし……。照れちゃいそうだよ……)
ふたりの声は、ゲームの中の家の壁に、
ほんのり甘く、くすぐったく反響していた。
――次回、「カップル対決」本編、スタート。
ごめん。無理です。




