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観覧車のてっぺんで、恋は空ぶった

無理ー、

観覧車にてっぺんで、恋は空ぶった

「あの……前から、せなのことが……好――」


しゅいが、ついに言葉を紡ごうとしたその瞬間だった。


「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!」


ジェットコースターの方から、ものすごい叫び声が響いた。

どうやら、ちょうど落下のタイミングだったらしい。

観覧車の中にまで響くその声に、空気が一瞬でかき消される。


「……でした……」


しゅいは、なんとか言い切ったつもりだった。

でも、せなには――肝心の「好き」が、まったく聞こえていなかった。


 


(……つ、ついに言っちゃった……!)


しゅいは、心臓が爆発しそうなほどドキドキしながら、

隣のせなの表情をそっと盗み見る。


……が、せなはきょとんとした顔で、首をかしげていた。


「? 顔真っ赤にして、どしたの?」


「え……?」


「なんか、私の顔についてる?」


  せなは不思議そうに首を傾げる。

 それで、しゅいはやっと、告白が聞こえなかった事に気づく。


「い、いや……ついてない……!」


「ふーん……。ってかさ、今なんか言ってたよね?

叫び声で聞こえなかったけど……なに?」


「……ひ、秘密……」


「えー!? なにそれー! ずるい!」


「だから、ズルくないって!」


「絶対狙ってたでしょ! あのタイミング!」


「そんなわけあるか! 俺がそんな面倒なことすると思う!?」


「うーん……しゅいがそんな器用なことするわけないか〜」


「それはそれで失礼だな!?」


ふたりは顔を真っ赤にしながら、笑い合った。

告白は――失敗。

でも、しゅいの胸の中には、ほんの少しの達成感と、

次こそは、という決意が芽生えていた。


 


ゴンドラの窓の外には、夕焼けが広がっていた。

オレンジと紫が混ざり合う空が、まるでふたりを包み込むように優しく染めていた。


 


しばらくして、観覧車はゆっくりと地上へ戻ってきた。


「……もう、終わりか……」


せなが、名残惜しそうに遊園地の灯りを見つめる。


「じゃあ……帰ろっか」


「うん……」



ふたりは、バスに揺られてシェアハウスへと帰った。

車内ではほとんど言葉を交わさなかったけれど、

その沈黙は、どこか心地よくて、甘かった。


 


「じゃあ……部屋、戻るね」


「あ、うん。……バイバイ」


「バイバイ」


 


ふたりは、それぞれの部屋へと戻っていった。

しゅいが自室のドアを開けると――


「……なんでいるんだよ、あおば……」


「おかえり〜。いや、たまたま通りかかっただけ」


「絶対ウソだろ」


「バレたか。で、どうだった? 遊園地デート」


「は!? なんでお前知って……!」


「そりゃ知ってるわ。みのから聞いたし。

てか、今日ふたりで出かけたの、みんな知ってるよ?」


「……マジかよ……。いや、でも、デートじゃないし……!

せなから誘われたっていうか……その……」


「誘われたってことは、デートじゃん」


「ち、ちが……! ちがうし……!」


(……でも、デートだったのかも……?)

考え始めた瞬間、しゅいの頭はショート寸前だった。


 


「で、どうだったの?」


「ど、どうって……普通に……楽しかっただけだし……」


「嘘だ〜。その顔、絶対なんかあった顔だわ」


「……お化け屋敷で……ちょっと……」


「ん? なに?」


「お化け屋敷で……せなが……お化けに追いつかれそうになって……

無意識で……お、お姫様抱っこした……」


「は!? マジで!?」


しゅいはクッションに顔を埋めた。

耳まで真っ赤で、声がくぐもっている。


「おー! やるじゃん! で、せなは?」


「……わかんない……。嫌だったらどうしようって……」


「いやいや、絶対嬉しかったって。

むしろ、あれで落ちてなかったら逆に奇跡だよ」


「そ、そんなわけ……!」


「もし、せなが“嬉しかった”って思ってたら?」


「……顔赤すぎ病になる……。たぶん……気絶する……」


「やば……」


あおばは、ちょっとだけ心配そうに笑った。


 


「ってか、あおばは? みのとなんか進展あった?」


「俺は……いつも通りの日々だけど?」


「え〜、もうちょっと攻めてもいいんじゃね?」


「な、なに言ってんだよ……!」


あおばの顔が、みるみるうちに赤くなっていく。


「だってさ、みのとあおばって、なんか……お似合いっていうか……」


「そ、そんなこと言われても……嬉しくないし!」


「じゃあ、なんでそんな嬉しそうな顔してんの?」


「こ、これは……! ちょっと、嬉しいことがあっただけだし!」


「なにがあったの?」


「え、えっと……その……ピザを食べた……?」


「その喋り方、完全に嘘のやつだな」


「ピザ好きなのは本当だし!」


「知ってるわ!」


 


そんなやりとりをしている間、ふたりの顔はずっと真っ赤だった。


 


「てかさ、観覧車って、告白スポットじゃん? 乗ったんでしょ?」


「……なんだそれ……。……でも……観覧車で……せなに……告った……」


「えっ!? マジで!? で、返事は!?」


「……それがさ……。ジェットコースターの悲鳴で……聞こえなかったみたいで……」


「お前、タイミング考えろよ!!」


「そんなの予想できるかよ! まさかあんなタイミングで叫ばれるとは……!」


「一応、見とけよ!」


「そんなの、いちいち見ないって! 逆にお前、見るの!?」


「見ない」


「お前も見ねぇじゃねぇか!!」


 


そんなふたりのやりとりは、

しゅいの部屋の壁越しに、30分以上続いたらしい。

その夜、シェアハウスの廊下には、

笑い声と照れ声と、ちょっとした騒音が響き続けていた。


めでたし、めでたし(?)

 


無理です

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