お姫様抱っこで、心臓が幽体離脱
今回はホラー系です。
ちよっと怖いかもです。
ホラー苦手な人はあの...誠に申し訳ありません。
お姫様抱っこで、心臓が幽体離脱
やがて、メリーゴーランドがゆっくりと減速し始めた。
「ティーパーティは、そろそろおひらきの時間です。木もれびのティーサロンにまた遊びに来てくださいね。森の仲間たちが、いつでもお待ちしています」
スタッフの優しい声が響くと、回転が止まり、静寂が戻る。
俺たちはライドから降り、木漏れ日の中へと歩き出した。
「楽しかったね!」
せなが両手を広げて、くるっと一回転。
その笑顔があまりにも無邪気で、俺は思わず頷いた。
「うん」
その後も、ジェットコースターで絶叫し、コーヒーカップで目を回し、バイキングで浮遊感に悲鳴を上げ、スタンプラリーで園内を駆け回った。
そして――昼ごはんの前に、あのアトラクションへ向かう。
「……お化け屋敷……」
せながマップを見ながら、眉をひそめる。
「私、怖いのガチ無理なんだけど……」
「大丈夫だって。俺がいるから」
そう言いながらも、内心は俺もビビっていた。
でも、ここでかっこつけられたら……いや、なんでもない。
とにかく、気合を入れて、いざ突入。
入り口は、古びた病院を模した建物。
ひび割れた壁、錆びた看板、薄暗い照明。
中に入ると、スタッフが静かに語り始めた。
「ここは、かつて存在した病院の跡地です。
ある日、ひとりの少女が亡くなりました。
その日から、ナースコールが鳴り止まなくなったといいます。
看護記録には、こう記されていました――
『彼女は、まだ診察を待っている』」
スタッフの声が低く、ゆっくりと響く。
照明が一瞬だけ明滅し、背筋がぞくりとした。
「本日、その病室を特別に開放いたします。
中に入る際は、静かに。
彼女は、まだ……ここにいます」
せなが、俺の袖をぎゅっと掴んだ。
俺も喉がカラカラだった。
「じゃあ、お楽しみください」
ギィ……と音を立てて、ドアが閉まる。
中は薄暗く、冷たい空気が肌を撫でた。
「怖いよ……」
せなが、泣きそうな声で俺に寄り添う。
俺も正直、足がすくんでいた。
そのとき――
カタンッ!
どこかで扉が開く音がした。
上の階から、かすかに足音が響く。
「ぎゃっ!」
突然、上から叫び声が響いた。
俺たちは思わず身をすくめ、顔を見合わせる。
「な、何……?」
「やばい、これ……本気で怖いやつじゃん……」
恐る恐る階段を上がると、薄暗い廊下の先に、ぽつんと明かりの灯った病室が見えた。
扉の隙間から中を覗くと、ベッドに横たわる女性と、その傍らに立つ小さな女の子の姿があった。
「な、何してる……?」
俺が声をかけると、女の子がゆっくりと振り向いた。
「……お母さんが……お母さんが……!」
涙をぽろぽろとこぼすその子に、せなが思わず駆け寄って、そっと抱きしめた。
「大丈夫だよ……」
優しく声をかけたその瞬間――
女の子の目が、真っ赤に染まった。
「え……?」
バンッ!
背後で扉が閉まる音が響く。
振り返ると、出口だったはずの扉が、いつの間にか閉ざされていた。
「ふふ……」
女の子が、さっきまでの泣き顔とはまるで違う、冷たい笑みを浮かべていた。
そして、身体がぐにゃりと歪み、大人の姿へと変わっていく。
「だーまされた。私、この人の幽霊なんだ。あ、自己紹介がまだだったね。とりあえず、サイコパスな正確かな。名前は覚えてない。で、今日は遊びに来てくれてありがと。ねぇ、何して遊ぶ? ……あ、もちろん、天国でね?」
その声に、俺たちは一斉に飛び上がった。
せなの手を引いて、俺は扉に体当たりする。
ギィッと音を立てて開いた扉の向こうへ、ふたりで飛び出した。
「ねぇ、待ってよぉ……」
背後から、足音と不気味な声が追いかけてくる。
俺たちは必死で走った。
「せな……あそこ、出口っぽい!」
「うん……!」
「そこはダメ!」
女の声が、背後から響く。
振り返る余裕もなく、ただ前だけを見て走る。
でも、せなの足がもたついている。
このままじゃ、追いつかれる――
「せな! 俺の手、掴んで!」
「う、うん!」
せなが俺の手を握った瞬間、俺は全力で駆け出した。
だが、せなが振り落とされそうになる。
「わっ……!」
俺はとっさに彼女の身体を引き寄せ、
そのまま――抱き上げた。
「え、ちょ、しゅい!? ちょっと……! やめ……っ……!」
せなが顔を真っ赤にして何かを言っていたけど、
俺にはもう、聞こえていなかった。
ただ、彼女を抱いたまま、必死で走る。
そして――ようやく、出口の光が見えた。
外に出た瞬間、まぶしい光と、にぎやかな音が押し寄せてくる。
ジェットコースターの歓声。
チュロスの甘い香り。
現実の世界が、そこにあった。
「……助かった……」
俺はその場にへたり込み、ベンチに腰を下ろす。
心臓が、まだバクバクしていた。
「あれ、せな……?」
隣を見ると、せなが静かに座っていた。
でも、顔が真っ赤だ。
「せな、大丈夫? めっちゃ怖かったけど……」
「……」
返事がない。
ただ、うつむいたまま、頬がどんどん赤くなっていく。
「ほんとに……大丈夫?」
俺がもう一度聞くと、せなはぽつりと呟いた。
「……お姫様抱っこなんて……ズルい……」
「え?」
「だから……! お姫様抱っこ……したでしょ……?」
「え、してないしてない。俺が、せなを……お、お姫様抱っこなんて……!」
記憶が曖昧な俺は、慌てて首を振る。
すると、せなはふっと笑って、肩をすくめた。
「あ、えっと……そだね」
その笑顔は、どこか照れくさそうで、
でも、少しだけ嬉しそうだった。
(……俺、ほんとに抱っこしたのか……?)
(……てか、なんで覚えてないんだ俺……! ってか、バカか……!? せなの事抱いたなんて……マジでもう嫌われたかも……。でも、嬉しそうだよな? もしかして……好意ある? それだったら嬉し……。いや、これ以上考えるのはやめよう)
ちよっと、お姫様抱っこと、恋のテンポ(?)を早めてみました。
ホラー系でごめんなさい。
私も描いてる時怖くてやばかったです。
本当にごめんなさい。




